水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

愉快なユーモア短編集-85- とにかく、やるっ!

2018年11月15日 00時00分00秒 | #小説

 結果がどうであれ、とにかく、やるっ! という心意気がこの世では肝心だ。やれば、成功、不成功は別として、自(みずか)らが納得できる。納得できれば、心残りなく次の行動へと移れる・・という上向きのスパイラルで、いっそう活力が出るというものだ。やらねば何の変化もなく、物事は良い悪いの関係なく収束(しゅうそく)の方向へと進むのが常だ。収束する方向がよければ問題はないが、悪い…と見込める場合は、とにかく、やるっ! のがいい。
 とある病院である。大げさな一人の力士が負傷し、喚きながら担(かつ)ぎ込まれた。担ぎ込まれた・・というほどの負傷でもなかったのだが、力士に言わせれば担ぎこまれた・・となる。担ぎ込まれた病院の医者と力士は、古くからの付き合いだった。
「先生、大丈夫ですかっ!」
「関取も大げさですなぁ~! たかが肩の打身(うちみ)くらいでっ!」
「打身くらいって、先生。万が一、折れでもしていたら、どうすんですっ!?」
「どうもしませんよっ! あなたも力士なら、とにかく、やるっ! この心意気でなくっちゃ!」
「人ごとだと思って…」
「なにか言った?」
「いや、べつに…」
「まあ、とにかく、やるっ! か…」
「ええ、是非(ぜひ)っ!」
 一時間後、力士は特大のシップ薬の袋を片手に下げ、愉快な笑顔で病院を出て行った。
 とにかく、やるっ! と、周囲を得心させることが出来るのである。^^

                                 


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