水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

疲れるユーモア短編集 (17)+α(プラスアルファ)

2021年02月26日 00時00分00秒 | #小説

 足りないよりは少し多めの+α(プラスアルファ)を考えておいた方が無難(ぶなん)だろう。無難ということは、気分が疲れない・・ということにもなる。生活する上で疲れないのはいい方向だ。^^ 疲れると、ろくなことがない。^^
 網川(あみかわ)は、外出しようと準備し始めた。買い物程度の外出なら、取り分けて準備するほどではないが、その日は、近郊ながらも少し離れたとある町へ行こうと思っていたから、準備しよう…と思った訳だ。
『いや! いくらなんでも、そんなには、いらんだろ…』
 二、三枚、一万円札を財布に入れようとしたとき、網川は、ふと手を止めた。
『いやいや、不慮(ふりょ)の事故・・ということもある…。やはり、入れておこう』
 そう思い直した網川は、財布から出した一万円札を、ふたたび財布へ入れた。
『いやいやいや、たかが数時間のことだ。不慮の事故など起こらんか…』
 網川は、また思い直し、財布に入れた一万円札を取り出した。
『いやいやいやいや、アクシデント[不慮の出来事]は、そんなときに起こるもんだ。+αの方が安全だしな…』
 網川は、またまた一万円札を財布へ入れた。
『まてよっ! たかが数時間のことだ。やはり、そんな必要はないか…』
 網川が財布から、またまたまた、一万円札を取り出そうとしたとき、『またまたまたは、いいんですっ!』と、財布が怒って言った。いや、言ったように網川には聞こえた。
「はい…」
 網川は素直に頷(うなず)き、+αは考えないことにした。その後、網川は、とある街へ出かけ、財布を忘れたことに気づいた。すっかれ気疲れした網川は、そのまま自宅へUターンした。+αどころか、-α(マイナスアルファ)になってしまったのである。
 そんなことで…でもないが、+αの方がより安全で、疲れることもないようだ。^^

                   完


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