水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

疲れるユーモア短編集 (6)作為

2021年02月15日 00時00分00秒 | #小説

 海崎(うみざき)はその日、日曜大工[DIY]をしていた。
「ははは…犬小屋はあるが、さすがに猫小屋はなかろうっ!」
 海崎は、さも発明家のような偉(えら)そうな顔で独(ひと)りごちた。
 その後、作業は順調に推移し、ようやく完成を見たのは昼少し前だった。朝食後の八時前から始めたから、三時間以上は作っていたことになる。
「さて…あとはニスを塗(ぬ)って乾かすだけだな…」
 サンド・ペーパーで木地を滑(なめ)らかにしたあと、海崎は砥(と)の粉を擦(こす)り付けながら、また呟(つぶや)いた。猫小屋を作ろう…という作為をもって工作を始めたのだから、その作為を完成させないと…と海崎は意気込まなくてもいいのに意気込んでいた。あとあとになって考えれば、これがいけなかった…と海崎は回想で話していた。意気込んだ余り、ニスが十分に乾いていないままフロアーに置いてしまったのである。
「よし! これでいいだろう…」
 海崎は、またまた独りごちたが、少しもよかなかった。それは飼い猫のミケを近づけたときに発覚した。フロアーにニスがくっつき、少しも動かなくなったのである。海崎としては、どこにでも移動できる猫小屋のつもりでいたから、ひっ付いては困るのである。
「作為をもって妨害(ぼうがい)するつもりかっ! それは犯罪だぞっ!」
 海崎は、ついに叫んでいた。妨害でもなんでもない…とフツゥ~~の人なら感じることだろう。だが、それは甘い考えで、見えない甘い発想という作為が陰(かげ)に潜(ひそ)んでいたのである。^^
 まあ、こんな疲れるような分からない作為も人の世にあることはある。^^

                  完


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