水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

疲れるユーモア短編集 (12)無意識

2021年02月21日 00時00分00秒 | #小説

 いつやらの短編集で意識を題材にした話を掲載したと思うが、今日はその逆の無意識を題材に取り上げたい。
 意識すれば疲れるのに、無意識だと疲れることは、まずない。無意識にする行為として癖(くせ)があるが、すぐ鼻糞(はなくそ)を穿(ほじ)る・・という汚(きたな)いのから、周囲にいる人を不快にする貧乏ゆすり・・とかだが、本人はいっこう疲れることなく、気分を発散することで逆に寛(くつろ)げるのだから勝手なものだ。^^
 とある高校の授業風景である。
「おい! 蛸崎(たこざき)っ! その訳はっ!」
 早弁[昼食の弁当を午前中に食べ、昼食にまた食べるという高校生男子が得意とする技(わざ)。ただし、オリンピック競技の正式種目には認定されていない。^^]を済ませたあとの授業で眠気を感じた蛸崎は、教科書を開いて立て、机に突(つ)っ伏(ぷ)して爆睡(ばくすい)していた。その姿を教壇の上から見ていた教師の酢味(すみ)は、鋭い声で一括(いっかつ)した。
「… 〇#”▽%’●”…」
「おいっ! 蛸崎っ!!」
 爆睡する蛸崎を隣の席の生姜(しょうが)が揺り起こした。
「… んっ!」
「訳だよ、訳っ!」
「んっ!? …訳?」
 蛸崎は、何事だ? と言わんばかりに両手を広げ、大欠伸(おおあくび)を一つ打った。教師の酢味が赤ら顔で怒ったように見つめている。
「あっ! 僕、部活が続いて疲れるんです。で、今日は腹も減って、さっき食べましたっ! それが訳ですっ!」
 その途端、教室内は爆笑の渦(うず)と化した。教師の酢味も、釣られていつの間にか笑っていた。
 若者が疲れると、まあ、いろいろな珍事が起こる・・というお話である。^^

 
                  完


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