そのときすでに、城水家の様子を玄関外の植え込みから窺(うかが)うクローン[2]の姿があった。クローン[2]は城水家の室内音声を傍受(ぼうじゅ)する超高感度受信機を耳に装着していた。むろん、街へ散らばった他のクローン達も同じ受信機を着けていたのである。彼等の目的が何なのか? は、誰にも分かる訳がなかった。城水家の様子は逐一、UFO内で映し出され、解析されていた。彼等の行動目的は、まず城水の情報を得ることから始められたのだった。
[彼は、まだ自分が我々と同じ異星人だということを認識していないようだな]
[はい! そのように思えます…]
編隊の指令船内での会話である。彼等は地球上のあらゆる言葉を使いこなせた。彼等自身の惑星後はあったが、日本に降り立った瞬間から、日本語で話し始めた。彼等がどの惑星からやってきたのか? は不明としか言いようがなかった。まだ地球の科学では解き明かせていない天体からの飛来だったからだ。数十年前、生まれて間もない城水の体内に宿生した彼等は、彼を残して地球上から飛び去ったのである。では、彼等が何のために城水の体内に宿生し、城水の住む近郊の山に舞い降りたのか? それは、壮大な宇宙生命の存続に関係していた。
「行ってきまぁ~~す!!」
「気をつけるのよっ!」
キッチンでの朝食を急いで終えると、雄静(ゆうせい)はランドセルを慌(あわ)ただしく背負って家を飛び出していった。通学バスの時刻が迫っていたのだ。