「ゆうちゃん、お外で何してたの?」
キッチンへ入ると、里子が訝(いぶか)しげな顔で雄静(ゆうせい)に訊(たず)ねた。城水の教育方針で、我が子には無干渉(むかんしょう)が城水家の立て前となっていた。
「ん? 友達とね、お約束が…」
「ふ~~ん」
里子の攻撃は手止まりとなり、それ以上の追及がなかったのは、城水としては幸いだった。
夕飯後、城水はテレビを観る気にもならず、早々と書斎へ入った。今日の一日の出来事を、じっくり理詰(りづ)めに考えてみようと思ったのだ。しかし、どうも理詰めには詰められなかった。それは当然で、SFまがいの出来事を科学的に詰めて考えようというのは、そもそも無理な話なのだ。考えが纏(まと)まらにないうちに時間だけが過ぎ、夜も更けていった。明日も学校があるから、そろそろ寝るか…と寝室へと向かった。里子はすでに眠っていた。城水はベッドへ横たわり、眠りながら考えを続けた。思えるのは、自分と何か関係があるのか…ということだった。このとき、すでに城水が住む周辺に異変が起こり始めていた。むろん、そんなことを城水が知るよしもなかった。
異変とは、城水が住む街の後方に広がる山裾(やますそ)へ降下したUFO編隊の飛来である。編隊は一端、姿を隠したかに見えた。だがそれは人間の目には見えないバリア状のシールドを張っただけのことだった。いや、そればかりではない。上空、数百mのところまで降下した編隊は、発する一切の音を遮断していた。