4月26日(日曜日)
ネット俳諧していて沖縄三線ライブが枚方公園であると知り、一人で行こうとした。よくよく調べると、同じ日の夜に、宇治市のJR駅のそばにある「おばんざい 音楽居酒屋 ZAN」でもやるではないの。家から車で15分の近場だ。ラッキーと小躍りをした。愛妻は何かと日頃ストレスをためている。愛妻は沖縄民謡は大好きだ。行かないかと誘うと、二つ返事で行くことが決定した。たまにはストレスを発散してもらわねばバチが当たる。公演1週間前にチケットを2枚買った。公演3日前に、姪っ子に「金、土で空いている日があればラーメンを食べに行かないか」とメールをした。「食べに行きたいけど両方とも予定が入っていて行けません。日曜だったら空いてるよ」と返信してきた。姪っ子は高校のときブラスバンドに入っていたので、音楽には興味がある。日曜日の夜、沖縄民謡のライブがあるので行こうと誘った。「行ってもいいの?」と殊勝なことを言う。沢山で行けば楽しいに決まっている。早速にチケットを買いに走った。
会場の「おばんざい 音楽居酒屋 ZAN」は、JR宇治駅から100メートルくらいの所にある。チケットを買うとき店に入り、入り口のカウンターと奥の楽器のあるフロアーをちらっと見たが、狭い所だなあが第一印象だった。20人も入れるかな・・・。
宇治駅前のコイン駐車場に車を置き、JRで京都から来る姪っ子を改札出口で迎え、6時半に店に入った。
6時半開場で7時開演なので、まだ観客は少ない。先に車から降りた愛妻がベストボジションのテーブルを確保していた。想像していたよりも中は広く、6人掛けの広いテーブルが4つもあった。カウンター席を含めれば30人は座れる。
席に座るとトレーに盛り付けた料理と、好きな飲み物1品(私は焼酎の水割り)が運ばれてきた。公演が始まる頃には食べ終り、1杯目の焼酎の水割りも飲み干していた。
予定時間の7時から仲宗根 充 師範の島唄ライブが始まった。壁にスクリーンがあり、昨年の父子リサイタルの画像が映し出された。師範は画面に向き、これに合わせ三線を弾き唄う。石垣島、白保の生まれなので民謡は八重山古典民謡が得意である。第一部は八重山の古典民謡ばかりで、知っている唄は皆無と言ってよかった。しかし沖縄民謡大好き人間にとっては、そんなことは関係ない。芸暦35年の師範の声に聞き惚れる。体型は相撲取り並のメタボ腹だが、これが伸びのあるしびれる声の出る基のようだ。1時間なんてあっと言う間に過ぎる。
本来三線には太鼓が付き物だが、生憎太鼓がない。師範は会場のドラムを見つけマスターを呼ぶ。マスターは昔ドラマーだったようで、師範の要望に応え三線に合わせてドラムを叩く。即席であるがそこはミュージシャン、太鼓も真っ青になるくらいお見事だった。第一部のシメはカチャーシーで、会場全員が立ち上がり、頭上にかざした手を右に左になびかせる。早や弾きの三線が会場をいやが上にも盛り上げる。沖縄民謡のライブはこれがあるから楽しい。
第二部は沖縄民謡に興味のある人は聴いたことのある曲がほとんどであった。会場にいる人を指名して一緒に唄ったり、リクエスト曲にも応えてくれた。八重山民謡の「島々清しゃ(しまじまかいしゃ)」をリクエストしたが、自分が唄うと言って舞台に上がる勇気がなく口ずさむだけだった。これではもったいないと思い直し「花」の時は、もう一人の男性と舞台に出て思い切り唄った。中年の男三人がはもると、それはそれはデカイ声になる。師範に負けじと声を張り上げた。三線を弾いてもらい唄うのは格別で、誠に気持ちの良いものだった。ついに念願が叶ったの思いだ。
カチャーシーが始まれば終りの時間だ。これが最後となれば全員がはじける。楽しいひと時は終った。時計を見れば10時で3時間楽しんだことになる。飲んだ焼酎の水割りは4杯だった。師範の声に惚れて、記念にと「ふるさとの島うた」のCDを買った。席に師範が来られ、買ったCDにサインをしてもらった。私が度々沖縄に行くと言ったら「今度来られたら是非とも島唄タクシーを利用して下さい」とPRだ。師範の本業は、那覇で個人タクシーを営業をしている。前の席の夫婦は、どこからお出でになったかと聞けば宝塚から見えたと言っている。私と同年輩の感じだ。島唄タクシーを利用したのが縁で、大阪、宇治と二日間おっかけをしているそうな。師範はタクシーに三線を乗せているようだ。たまたま島唄タクシーに乗った宇治市の「和於屋三線(わおやさんしん)」の社長がこれを見つけた。帰京して仲宗根師範の経歴を調べて驚いた。こんな素晴らしい方が使う三線にしては余りにもお粗末すぎる・・・。師範はタクシーの中は高温多湿で、本皮の物は直の間に傷んでダメになるので、やむなく人工皮革を使っていると答えたそうだ。それならばと、和於屋三線の社長は悪条件に耐えられる三線を提供したのだ。この事が縁になり、今では仲宗根師範はすっかり「和於屋三線(わおやさんしん)」のお得意さんになっている。
仲宗根 充師範の父は仲宗根 長一師範で、沖縄県指定無形文化財「八重山古典民謡」保持者(三線)の一人である。芸暦は70年と息子の倍だ。毎年父子でリサイタルを続けるのが充師範の願いである。いつまでも続くことを願ってやまない。明日から当分の間、車の中では仲宗根 充師範の声が響き渡ることだろう。
(メモ)
1.島唄タクシー(沖縄県個人タクシー 個人番号19)
仲宗根 充
八重山古典音楽安室流保存会 琉球民謡協会 師範
〒902-0078 沖縄県那覇市識名4-8-24
TEL/FAX 098-834-0491 携帯 090-3077-2095
2.株式会社ワオネット 和於屋三線
〒611-0002 京都府宇治市木幡南端11番地
TEL 0774-38-2626 FAX0774-38-2777
3.「おばんざい 音楽居酒屋 ZAN」はこんなお店です:団塊の世代が若き青春時代に、歌い踊ったなつかしい音楽を、エレキサウンドにのせて演奏しているお店です。壁には何本ものエレキギターがたてかけてあります。テーブルチャージなど一切いただいておりません。またお客様が自由に楽器にふれ、演奏もできる楽しいお店です。
(参考)
昨年、仲宗根 長一師範は「第24回八重山毎日文化賞」の特別賞に選ばれている。
八重山研究や芸術文化の振興に顕著な業績を挙げた人々をたたえる八重山毎日新聞社主催の「第24回八重山毎日文化賞」の選考委員会(崎山直委員長)がこのほど開かれ、今年は特別賞に八重山古典音楽安室流師範の仲宗根 長一氏(83歳)が選ばれた。
仲宗根氏は1925年白保生まれ。39年に八重山古典音楽安室流川平亀師匠に師事、66年に教師免許、70年に師範を取得、安室流工工四を発刊している。
93年から息子の充氏と5回の父子リサイタルを開催。99年に県無形文化財八重山古典民謡保持者、琉球民謡協会師範で同会顧問などを歴任している。73年には「うりずんの詩」を作詞。大衆に八重山民謡を広めた。
仲宗根氏は「八重山民謡すべてに情があり、歌の内容をよく知らないと情は出てこない。自分の歌に満足するようでは本当の唄者ではなく、大衆を満足させてこそ本物だと思う。生ある限り学び、郷土の芸能発展に少しでも役立てるよう歌い続けたい」と述べた。