「パティシエになりたーい!」ブログ。

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遊戯王文庫版感想 22巻(転)

2009-11-22 02:23:41 | 遊戯王☆感想文
「屍は横たわる 器は砂となり塵となり――
黄金さえも剣さえも 時の鞘に身を包む――

骸に王の名は無し

時は魂の戦場――
我は叫ぶ
闘いの詩を 友の詩を

遥か魂の交差する場所に 我を導け」



闇を打ち破り、…セト様が次なるファラオとして即位した「記憶の世界」。
アテム本人も言っていますが、今回の展開は本来の歴史とは違うものです。現代のバクラと闇様の意志と、表遊戯達の介入によってその「過程」と「結果」は大きく変化しています。


それでは、本来の歴史とは、一体どういうものだったのか。

わかっているのは
・ゾークは封印された。
・同時にファラオの魂も封印され、千年パズルは砕かれた。
・アテムの名前も封印された。

そして一番の(←私的に)ポイント。
・セト様があの石板を作って残している。

石板に記されているのは、亡きファラオに捧げられた「友への詩」。
18巻冒頭で示されるその内容が……上記のものです。

あの石板を残したということは、本来の歴史でもセト様は次のファラオに即位した…ということだと思われる。
ファラオのことを「友」としてるのは、…今回あった、あの最後あたりの会話も実際交わされたからではないだろうか。ファラオ本人から、次のファラオになって欲しいと…自分に代わって、自分の意志を継いで、この国の平和を取り戻して欲しいと言われ…そしてその本人は、自分の身を犠牲にゾークを封印した。
封印が簡単に解かれることのないようにか、ファラオの真の名前は隠されて…。
それでも闘いの記憶は消えない。
友の熱い想いは永遠に消さない。
さまよえるファラオの魂と、いつか再び…必ず出会いたいという願いを込めて、セト様はあの石板を残した……。


社長と闇様がBC準決勝で見たビジョン…。ファラオと闘うセト様の姿…
似ているようだけど、あれも、今回の展開とは少し違う。
この時のビジョンに他の人(アクナディンとかゾークとか)が介入できるわけがないので、…あれは「本来の歴史」なのではないだろうか。それぞれの千年アイテムに封印された記憶からの映像だから、個人の主観で細部は変わるかもしれないけど…。
そしてこのビジョンの中のセト様のこのセリフ。
「もう一度言う…。貴様に手を貸すつもりも――闇(やつら)に服従するつもりもないとな…。」
一度言ったらしい。
…じゃ、なくて!!
これって!これって!!
…「そうだったらいいな」ぐらいに思ってた私の勝手な自説を、進めてみようと思ったきっかけはこのセリフです!!

ずばり、
「本来の歴史は、高橋先生が20巻のあとがきで語っていた『やむを得ずカットしたエピソード』だったのではないか」
それ、自分が読んでみたいだけじゃん!…と、私も思ってました。でもでもでも!あとがきによると、「王の記憶編」の壮大なエピソードを短くしたのは体調を崩されてからで…体調を崩されたのはクル・エルナ村での闘いのあたりの時の話で…、
じゃあ、BC編を描いてらしたころは、壮大なエピソードのままだった…はず!!
よし、行けるッ…!(どこ行くねん…)

件のあとがきより。
「千年眼の邪念によって、欲望と憎悪に支配されてしまったアクナディンが、白き龍を抽出するための拷問にかけるべくキサラを拉致するのですが、神官セトがファラオの忠誠に背き、キサラ救出に向かうのです。ここからアクナディンと神官セトの対立が激しくなり(~中略~)闇の大神官率いる死霊軍、ファラオと神官団、白き龍(キサラ)の復讐を果たそうとする神官セトの三つ巴の戦争に発展していく構想だったのですが…」

これを踏まえて、もう一度準決勝ビジョンのシーンを見てみる。
記憶戦争では…アクナディンがセト様の意識を乗っ取っていて、ファラオを抹殺するべく挑んだ闘いだったけど、…これは?
…闇には従わないって言ってるくらいだから、アクナディンに乗っ取られてはいないと思われる。ファラオが「明らかに正気を失っている目」と表現した目に似てる気もするがそもそもセト様はこういう顔…いえなんでもありません。

しかし、背後の石板には「白き龍」がいる。
抽出には「千年錫杖」が必要なはず。でもセト様が自らキサラから抽出したとは…とても思えない…。一度は乗っ取られたのか?
いや、今回のような経緯で、アクナディンによってキサラを殺されたところまでは同じで…もしかしたら、抽出は自分でやったのかも…。「キサラの復讐を果たすため」という高橋先生の言葉とも合ってくるし。アクナディンが今回ああいう行動(投身自殺→セト様の体を乗っ取り青眼抽出)に出たきっかけは「ゾークがやられてしまったのを目の当たりにしたから」なんだし…。

そうか、それなら……もう一つひっかかってたことも解決する!
…イシズ戦で社長が見たビジョン。「胸を刺す悲しみ」のアレ…
あれも、似てるようで今回の記憶戦争時と違う点があるんですよね!見たらすぐわかるけど。
「ビジョンでは、キサラを抱くセト様の前の石板に青眼の姿がある」
この相違点も、普通に読んでる時は「まあイシズ戦のあのシーンでここに青眼の姿がなかったら意味不明だし、イメージ画像ってことかな?」とか思ってたけど…
本来の歴史では…、セト様は胸を刺す悲しみに苛まれながらも、死んでしまったキサラのため、白き龍と共に闘う決意をしていた…そういうシーンだったのかもしれない。千年ロッドに封印されていたのは、そんな悲しい記憶だったのかもしれない…。

そういや結局、イシズ戦のあのシーンで社長を止めたのは誰の意志だったんだろうか。普通に青眼とキサラの意志…でもいいんだろうけど、…イシズ戦でも準決勝でも「千年ロッドに封印されている記憶」が光を放ってビジョンを見せてた。闇マリクはあれを「海馬瀬人の記憶」だと言ってたし…大体、千年ロッドの持ち主はセト様であってキサラではない。
…セト様か?セト様が止めたのか?自分の生まれ変わり(?)を助けるために…。
そう考え始めるとまた…なかなかおもしろい。でもイシズ戦は…やっぱり青眼かな…。シーン的に。
気になること一つ。…セト様が現代の社長の行動を見てたとしたら、一体どう思ったんでしょうか(笑)。自分が想いを込めて詩を刻んだ石板を「記憶から粉砕してくれるわ!」とか言い放つのを見た日にゃ、頭抱えるくらいじゃすまないような…。
でも社長の過去アレルギーは不遇な幼少期に端を発するものだし…予想外の展開に驚きつつ、ハラハラしながら見守ってあげてたのかもしれない。
冥界の扉の向こうで。ファラオの魂の帰還をずっと待ちながら……。
社長の、ファラオ(闇遊戯)に対するものすごい態度の数々を、アイシスさんあたりにからかわれながら…皆で見守っていたんじゃないかと想像すると…それだけでもう5000字くらい書けそうです(……)。



壮大に脱線してますが、そろそろ話を戻して……。
準決勝ビジョンのシーンの状況をもうちょっと考えてみる。
ここのファラオとセト様は、何故闘っているのだろうか。

セト様のセリフからわかるのは…すでに「王宮が崩れ堕ちている」こと。アクナディンは闇との契約を交わし、闇の大神官となっている…つまりゾークも復活していること。
ファラオはまだ存命だし、千年パズルも砕かれていないので、神官団とゾークの「最後の闘い」の前であることもわかる。
……つまり、スゲー大変な時…ですよね…。
セト様の言葉。自分と「我が龍」は闇には従わないけれど、ファラオにとっては永遠の敵だから、このピンチの中でもファラオに手を貸すことはない…。
「だが…今、貴様をここで倒す…。それは大いに望むところだがな。」
大変な時である。
大変な時だからこそ、決着をつけようと…セト様がファラオを呼び出して「決闘」を申し込んだということでファイナルアンサー?(←古い…)
セト様何やってんですかと言わざるを得ない!!

でも、何故ファラオがここでその決闘を受けているのかを考えると…
「キサラを奪われて暴走中のセト様の説得」の意味合いもあったのかもしれない。
ゾークの力は強大で、倒すためにはどうしてもセトと白き龍の力が必要…というか、自分と神官団全員の「結束」が必要とファラオは考えた。しかしセト様はああいう人なので(……)、言葉での説得は無理。
ならどうするのか。
闘いの中で伝えるしかない。…あの、三千年後の…憎しみの塔での闘いの時のように。
結束の必要を。
復讐の無意味さを。
自分の想いを。

…セト様はファラオを「永遠の敵」だと言った。
でもこれは、本来の「敵」というよりかは…意味は「好敵手」に近いのではないだろうか。忠誠に背いたとしても、ファラオは憎しみを向ける相手ではないはずだし…。
王宮は崩れ堕ち、ファラオは今や裸の王同然……。
もう、「神官」と「王」ではない。セトと、アテムとして向き合う二人。
もはや二人に言葉は意味を持たない。二人に代わって運命を決めるのは…「決闘(ディアハ)」。
闘うことができるのは、敵が…「好敵手(ライバル)」がいるから。
より高みを目指して、闘い続ける事ができるのなら、
「好敵手…、友……、その境界がどこにある」?


「憎しみの果てに真の勝利はない」ということで…ここでのセト様は、ファラオには勝てなかったと予想します。…古代編での青眼って強さがケタ違いっぽいので、多少不安ではあるけど…力で押し切ろうとしたら、きっとキサラが抵抗して止めただろう。憎しみにかられたセト様を救えるのは、もうファラオだけだと信じて。(ついでに、キサラによる妨害があったとしたら「オレとお前の間に力の差はない!」につながってまたオイシイ。負けた原因はあくまで「内なる憎しみ」…)
ファラオは、セト様を負かした上で、憎しみに捕われることの愚かさを説き、最後の戦いを共に闘うことを望んだ。
…そしてここで、自分にもしものことがあったら(最初から自らを犠牲にすることに決めていたとしても明言は避けただろう)次のファラオになって国を守って欲しい、と伝えた。

…なぜ、セトだったのか。
ここは本当に想像するしかないけど(いやコレほとんど想像だっけか)…、アテムはやはり、セトを「友」だと思っていたから、じゃないかな…。神官にすら向いてなさげなあの態度と思考回路(……)を考えると次期ファラオ指名は誰でも首を傾げたくなるだろうけど、…でも、セト様の、国を守りたいという想いは本物で…そして、自分の国への想いもきちんと伝えれば、理解して意志を継いでくれるだろうというのを信じてた…としか思えない。ファラオはそれを見抜いていたと。
立場の違いから、即位中は向き合って対等に話をする機会なんてなかっただろう。けど、もしそんな機会があれば、…地位も何も関係なく、魂をぶつけ合うことができるなら、…きっと最高の「友」となれるだろうと信じてて……この闘いでそれを確信へと変えた、から。とか。
…とても、私の理想ですが……でも、それくらいのことがなければ、あのセト様があんな石板を残すなんて…しないと思うんですよね。ホントに。


白き龍を従えた神官セトが合流し、ファラオ率いる神官団はゾークとの最後の闘いに臨む。
ゾークの力は強大で…ファラオは、この世界を闇から守るため、自らの命を犠牲にして、闇の大神官の魂を千年錘の中に封じた。そして千年錘を砕く。現世への復活をさせないために。
しかし闘いは終わってはいない。決着がつかない限り、二つの魂はパズルの中をさまよい続ける。

待っている。パズルを解いて、この世界の戦いに決着をつける者を。
二つの魂を冥界へと還す者を。


それはきっと、自分ではない。
だからせめて…その時、どうかその場に自分の魂を継ぐ者が導かれますように。
セト様は願いを石板に残す。

砕けたパズルを王墓に大切に保管して、真の名前もそこだけに残して。
まだ見ぬ未来へと希望をつなぐ……。

そして自分はファラオとして、王国の平和を取り戻すために尽力する。
それが友の、最後の願いだったから。



…以上、三千年前のセト様の物語。
ああ、思いつくままに書いてたつもりだったけど…どんどん自分の中で確信に変わってきた…!きっとこうだったはず!てか、こうであってくれ!(えー)
ちなみに、ずっとこれのこと考えてたら冒頭の詩…暗唱できるようになっちゃいました(ええー)。

(「結」へつづく)

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