ウィトラのつぶやき

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G7をみれば、世界の流れが大きく変わっていることがわかる

2018-06-11 08:32:53 | 社会

メディアは米朝首脳会談の話題で持ちきりだが、私はこの週末のG7の結末のほうがむしろ影響は大きいと考えている。既に報じられたようにアメリカの関税を巡ってG7はアメリカ対その他6か国という対立構図になった。しかもトランプ大統領は自分で署名した共同宣言を「撤回する」という無礼な行動に出ている。以前、安倍総理が言っていたようにG7は価値観を共有する主要国の集まりでかなりの部分本音で話ができる場だったのだが、アメリカがこれをぶち壊した。今後、G7は意味がなくなり、残りのG6がどうするかを話し合うことになるだろう。

並行して中国で青島SCO(上海協力機構)が開催されている。これはもともと中国とロシアが国境問題で安定的な管理を行うために始めたもので旧ソ連のカザフスタン、キルギスタン、ウズベキスタン、タジキスタンが加わっている。これに最近インドとパキスタンが加わり、今年はイランもオブザーバーとして加わっている。議題は国境管理の問題から拡大してG7に対する対抗勢力のように北朝鮮問題(これは元々の議題に入っていた内容)、貿易問題なども議論するようになってきている。更にASEANなども取り込もうとしているようである。現在のG7に混乱を見て、「保護主義に反対する」という青島宣言を出している。

私はこのSCOへのインド、パキスタンの加盟を重要視している。インドは中国と継続的に国境紛争を行っているが、この4月に習近平ーモディ会談で国境問題を棚上げにするという合意をしており、アジアというかユーラシア大陸でまとまっていこうという方向性が見えている。インドは近い将来GDP世界3位になることが確実視されており、インドと中国がうまく協力すれば(今でも活発に貿易は行っているが)、大きなインパクトを生みことになるだろう。私は遠からずヨーロッパはSCOに接近していくとみている。

中国、インド、パキスタン、ロシアは互いに紛争を抱えており、これまでのG7のように「価値観を共有して世界を動かしていこう」というよりは、「自国の権益を確保しつつ世界の中で共同することで存在感を高める」という緊張感の高い交渉をやっていくと思うが、G20の中での発言権はG7よりもSCOの結論の影響が大きくなっていくだろう。

問題は日本の立ち位置である。日本はG6の中では最もアメリカ寄りである。おそらくSCOへの接触もヨーロッパが動いてからということになるだろう。それは仕方がないとして、私は安倍総理の言う「自由で開かれたインド・太平洋戦略」を気にしている。これは中国の南シナ海へに進出に対抗してアメリカ・日本・インドで中国包囲網を作ろうという考えで、安倍総理がアメリカに提案したものだと理解しているがアメリカにはそれほど腰が入っておらず、インドもアメリカの態度を見てそれほど本気ではない。インドは、現状は全方位外交だが、SCOの動きにみられるようにむしろ中国に接近しようとしている。日本は今年の骨太の方針にも「自由で開かれたインド・太平洋戦略」は出ているが、これを言いすぎるとアジアで孤立するのではないかと感じている。

中国、ロシアから見ても日本はトランプ政権に不満を持っていると見えており、当面は仲間に引き込もうと声をかけてくるだろうが、1年後はどうなっているか分からない。私は日本はアメリカではなくヨーロッパと歩調を合わせるべきだと考えているが、はたしてどうなるか、安倍外交に不安を感じている。

 


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