これってすっごく基本的な疑問でしょ.
実際,富士山の頂上など高所ほど寒い.
だから「太陽は実はとっても冷たいのである」と主張するトンデモ系の人がいるくらいです(「トンデモ本の世界」と学会編 宝島社 P28).
でも学校でちゃんと勉強した人は,「100m上がるごとに気温は0.6℃下がる」ということ)は知っているはず.
これを気温減率といいます(このページの最重要キーワード!)。
つまり標高1000mの所(軽井沢など)では東京下町より6℃低いわけです.
問題は何で下がるのかということ.
太陽に近いと言っても,表面温度が6000℃ある太陽と地球との平均距離は1億5000万kmもあります.
電気ストーブだって15mも離れれば熱は届かないでしょ.
だから,たった100mでも気温が0.6℃も下がるということは,太陽との距離の問題ではなく,むしろ地球の大気内(対流圏)の問題とみるべきです。
「イヤ,太陽が冷たいからだ」と思う人は,0.6℃/100mの気温減率に太陽までの距離をかけて,太陽の温度を出してみては.ちなみに地表の平均気温は15℃.
最も近い熱源はどこか
確かに太陽の放射熱は地球を暖めます.
では地球のどの部分,陸地と海と空気のいずれを一番暖めるでしょうか.
答えは陸>空気>海の順です.
強い日射を浴びるとアスファルトの地面が地上の空気よりも熱くなるように,地面が一番暖かくなるのです.
つまり,この時,大気にとっては地面が身近な熱源になるのです.
そして上空に行くにしたがって,地面からの放射(輻射)熱が届かなくなるので,気温が下がるわけです.
ただし,これは地表から高度10000m(1 5000 0000kmのうちの10km)くらいまでの「対流圏」(宇宙的視野では”地表”の空気)内の話で,その上の「成層圏」では,温度は上空に行くほど上昇します。
ただこれも太陽に近づいたからではなく,成層圏内のオゾン層にたまった紫外線のせいです。
成層圏の上の「中間圏」では,再び高度とともに気温が下がり,更にその上の「熱圏」(電離層)ではまた高度とともに気温が上がります。大気圏って複雑.
乾燥断熱減率
でも上の説明だと,地表から離れた上空の冷たさの説明にはなるけど,山という地面の突起の冷たさの説明には不向き(だってそこはまだ地面なんだから).
実際,日射をあびると,山の斜面の方が,同じ高さの大気よりも先に暖まります(陸>空気だから).
同じ地面(空気への熱源)でも山が地上(下界)と違うのは、標高が高いということ。
両者では気圧が違うのです。
もちろん山の方が標高が高い分だけ、気圧が低い(地上付近の減圧率は、10m上がると1hPa減る)。
では、気圧が低い(下がる)とどうなるのか。
空気を抑える力が低いので空気が膨張します。
空気が膨張すると、その膨張のために使われた仕事エネルギーが(エネルギー保存の法則によって)内部の熱エネルギーによって消費され、空気の温度が下ります.
また日射をあびて暖まった空気は同じ気圧(≒高さ)だと軽くなるので,そこにとどまれないで上昇しちゃいます.
そして空気が上昇すると気圧が下るので上の理由で冷やされるのです.
同じ(乾燥した)空気が上昇する場合(上昇気流の話)では,100mに1℃の割で下がります.
これを「乾燥断熱減率」といいます.
これは「熱力学の第一法則」によるもので,この原理は上昇気流が低温化して雲を発生させるメカニズムとして非常に重要です.
そして上空は,この低温化した空気がたまっているわけです.
それで上空の方が気温が低いのです(ただし厳密にはこれがすべてではありません).
ちなみみ気温減率(-0.6℃/100m)と乾燥断熱減率(-1.0℃/100m)の違い(差)が問題になる気象現象があり、それについては次の2で。