今日こんなことが

山根一郎の極私的近況・雑感です。職場と実家以外はたいていソロ活です。

開閉会式の演出に、なぜあんなアイデアが出たのか

2021年03月20日 | 時事

今回の東京五輪開閉会式の演出案の騒動について、私からも一言。

そもそも、アイデア出しの企画会議って、部外秘のはずなのに、それが1年後になって(このタイミングに)、外部に漏れ出ることに、違和感(悪意)を感じる。

ただ世間の人は、それ以前に、なぜ、あのようなひどいことをアイデアとして出したのか、出すべきではなかった、と思うかもしれない。

本人がそれを出した理由は、アイデア出しの基本テクニックである「ブレイン・ストーミング」(脳の嵐、以下、ブレスト)を実行したつもりだからだろう。
電通のクリエイティブ・ディレクターという肩書きと年齢から、「アイデア出しならブレストで」という長年の習慣が身に付いていたはず。

アイデア量産技法としてのブレストとは、思いついたことを、すべて吐き出すもので、これはまずいと自己判断して、出すのを躊躇してはいけないのがルール。
だから、顰蹙(ひんしゅく)を買う内容であっても出したのだ。
それがブレストだから。

そもそも、ブレストは、フロイトの精神分析療法における「自由連想法」が起源。
患者が自由連想を進めていくと、普段の意識レベルでは思いもつかない、無意識の内容が出てくる。
連想は、①言葉の発音の類似性、②意味の対応性、あるいは③表象イメージの類似性によって進行する。
だから、オリンピック→①→ピッグ→②→豚→③→あの人、と連想が進行したわけだ(この連想のレベルの低さは責めるなかれ。連想とは所詮このレベルなのだから。そして”没”になったものを事後にあげつらうのも、なんだかなぁ)

意識によって抑圧された無意識とは、たとえばフロイト理論では、異性親に対する性的関心や、同性親に対する憎悪など、社会的に許されない内容だったりする。
なので、ブレストが進むと、そのような常識に反する内容のアイデアが出ておかしくない(むしろ常識の壁を突破したい)。
しかも、その場合、自己判断してそれを抑制してはならないのだ。
もちろん、いろんな意味で”使えない”アイデアは、ブレストが終った後の選別段階で没にすればいい。

精神分析の治療関係では、当然ながら守秘義務があり、患者の連想内容が(本人が同定される状態で)公開されることは絶対にない。
ふつうの企画会議でもそのはずなんだが(それがマナー)。

今回の教訓
気心の知れない人間が集まった会議の場では、ブレストを本気ではやらない方がいい。

上の当事者のような特定世代の人には”ブレスト信仰”があるのだが、
経験上、ブレスト(特に集団ブレスト)って、ゴミしか出てこない。
それは連想のみに頼るからで、
真に素晴らしいアイデアは、連想による思いつきではなく、しっかり考え抜かれることによって生まれる(ニュートンが、リンゴが木から落ちるのを見て、万有引力の法則を思いついたのは、それまでそれについて考え抜いていたからであって、偶然の連想でポッと出たのではない)
今回の案も、人を傷つける内容以前に、実際ゴミのようなレベルだったでしょ。
集団ブレストをやるくらいなら、個人ブレストを各自でやって、その選別結果を集団で持ち寄った方がましだと思う(個人ブレストなら、顰蹙を買うアイデアも他人に知らせる前に自分で没にできるし)。


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