博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

『大秦直道』その2

2011年09月06日 | 中国歴史ドラマ
『大秦直道』第7~13話まで見ました。

直道の図面を持つ魏青山を九原から都咸陽まで護送することになった蒙恬ですが、途中で韓騫の意を承けた山賊に襲撃され、図面を燃やされてしまいます。何とか咸陽には辿り着いたものの、肝心の図面が無いということで始皇帝は直道の建設を無期延期とし、その後は驪山陵や阿房宮の建設計画に没頭。蒙恬も直道建設計画から離れて長城の建設や匈奴との戦いに従事することになります。

しかしこれで当然直道の必要性が無くなったわけではなく、九原まで食糧が充分に輸送できずに前線で脱走兵が相次いだり、長城附近で隊商や民衆が山賊や匈奴に襲撃されるといったトラブルが頻発。そこで蒙毅と扶蘇は始皇帝に直道建設の意義を認めてもらおうと、九原への巡幸を提案。この巡幸と同時期に韓騫が今度は匈奴の仕業と見せかけて官兵に魏青山の住む九原の青山村を襲撃させ、村で隠居してた魏青山を死へと追い込みます。魏青山の死を知った始皇帝は、残された彼の娘霊児を養女として宮廷に迎えますが、この霊児を演じるのは古装片でお馴染みの楊冪さん。



ストーリー的にこれはいったいどうだろうという展開が続くこのドラマにあって、楊冪さんがレギュラーで出るというだけでもかなり和みます(^^;)

で、この霊児が胡亥と机を並べて勉強したりしていますが、(胡亥はデフォルト通り遊び好きのバカ息子……)その傍らで趙高は、韓騫の甥で汚れ仕事に従事しすぎて九原におれなくなった韓成を義子に収めます。彼は名を趙成と改めますが、趙成というのは一応実在の人物なんですね。(ただし実際は趙高の義子ではなく弟なんですが)このあたりの設定のしかたなんかはうまいなと思うのですが……

この趙高ですが、今回のドラマでは趙国の王族の末裔で、父母とともに趙国で人質生活を送っていた始皇帝、更に始皇帝の寵姫で胡亥の生母とである玉娘と幼馴染みという設定になっています。ただ、後に趙高は意に反して宦官にされてしまい、おまけに彼が恋い慕っていた玉娘は始皇帝に取られてしまいということで、腹の中では始皇帝を相当恨んでいるようですが……

趙高は始皇帝との長子の扶蘇と丞相の李斯に対しても含むところがあるようで、扶蘇と李斯の娘李賢との婚姻を画策。しかし当の扶蘇はこの結婚には不満で、新婚初夜に新婦をほったらかしにして淳于越の娘と知り合いになったりしてますが(^^;)
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『ローマ人の物語 ローマ世界の終焉』

2011年09月05日 | 世界史書籍
塩野七生『ローマ人の物語41~43 ローマ世界の終焉』(新潮文庫、2011年9月)

長らく続いてきた『ローマ人の物語』シリーズもいよいよ最終刊。今回はローマ帝国の東西分裂が決定的となった西暦395年から476年の西ローマ帝国滅亡を経て、一度はイタリア半島をローマの勢力下に取り戻した東ローマ帝国のユスティニアヌス大帝と、実際にイタリア経略に当たった軍人ベリサリウスの死までを扱っています。

教科書的には395年をもってローマ帝国の滅亡とされることが多いのですが、その年をもって急にローマ的なものが消え失せたわけではないので、本書では敢えてそこからずーっと引き延ばして、ローマを象徴する元老院や水道施設のようなインフラが破壊されるまでを範囲としているわけですね。

しかし西ローマ帝国、あるいはその後のオドアケルのイタリア王国や東ゴート王国統治下のイタリアは、どう見てもモヒカンがいたいけな村人から種籾を収奪しまくる『北斗の拳』の世界ですね。もちろんアラリックやアッティラ大王やテオドリックが世紀末覇者とか南斗六聖拳にあたるわけです(^^;) 洋の東西を問わず中世とくると、こうやってすぐに『北斗の拳』を連想するのは私の悪い癖ですが、いっそのこと開き直って中世=核の炎に包まれた後の世紀末説を強弁すべきなんでしょうか……

そして本書で印象に残ったのは西ローマ帝国が滅亡するさま。西ローマ帝国では初代のホノリウス帝及びそれに続くヴァレンティニアヌス3世が長い在位期間を保った後は、短期間で皇帝の首をすげ替えまくるという事態が発生し、それを見かねた東ローマ皇帝が2回ほど西ローマ皇帝を自国から派遣したりしますが、それもうまくいかず、最後の皇帝とされるロムルス・アウグストゥスがオドアケルによって退位させれられた後は皇帝のなり手がおらず、西ローマ帝国は何となく滅亡。その後はオドアケルが東ローマ皇帝の代理者としてイタリアを統治することになります。

「一国の最高権力者がしばしば変わるのは、痛みに耐えかねるあまりに寝床で身体の向きを始終変える病人に似ている」という著者のコメントに何だか胸が痛くなります(´・ω・`) 同じく頻繁に国のトップの首がすげ替えられつつも、まだ首相のなり手がいる日本はマシな状況なのかもしれません……
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『古代国家はいつ成立したか』/『江戸将軍が見た地球』

2011年09月04日 | 日本史書籍

都出比呂志『古代国家はいつ成立したか』(岩波新書、2011年8月)

本書のテーマとなっている古代国家というのは日本の古代国家のことですが、本書を読んで文献史学と考古学の両立ってて一体何なんだろうなと、何となく思いました。個人的には、本書に引用されている石川日出志氏の、文献史学と考古学が現時点で同一の解釈にあるよりも、異なる意見を持ちながら議論を戦わすことが今後の発展に導くという意見に強く賛同します。要するに考古学の成果を文献の知見にムリに擦り合わせる必要は無いと。

本書の場合は著者が考古学の専家ということで、どちらかというと考古学の成果をメインに据えて話を展開させており、文献・考古のバランスが割と取れている方ではないかと思いますが、それでももっと文献の比重を軽くしてもいいんじゃない?という気がしないでもないです。

あと、朝鮮半島の前方後円墳は時代的に見て日本から伝わったもんじゃない?というツッコミには(的確なツッコミだなあという意味で)思わず笑ってしまいました(^^;) 朝鮮半島のものが6世紀のものであるのに対し、日本のは3世紀から存在するので、どう見ても日本のが先だろうという話なんですが……

岩下哲典『江戸将軍が見た地球』(メディアファクトリー新書、2011年8月)

江戸幕府の歴代将軍が海外情勢に関する情報をどう受け取ったかという本なんですが、書中で紹介されている不干斎ハビアンの生涯がカオスすぎます……

不干斎ハビアンは戦国期から江戸初期にかけての人で、元々は臨済宗の寺で修行していましたが、18歳の時にイエズス会に入信し、22歳で日本人イルマン(修道士)となります。以後、キリシタンのイデオローグとして仏僧や儒者の林羅山らと討論したりし、評判となりますが、ある時に突如としてイエズス会から出奔して行方をくらまします。失踪の原因については女性信者と恋に落ちたためだとか、イエズス会の内情に嫌気が指したからだとか諸説あるようですが……

そして失踪から11年後。彼は反イエズス会論者として世に舞い戻り、今度はキリシタン弾圧を進める幕府側のイデオローグとして活躍することになります。で、ハビアンは『破提宇子(デウス)』を著述するのですが、本書ではこの本について、「反キリシタンのお手本となった共に、信者を棄教させるうえで格好の脱洗脳マニュアルとして使用された」と説明しているのですが、「脱洗脳」という表現に笑ってしまいました。要するに日本でのイエズス会宣教師の布教活動とは洗脳にほかならなかったということでしょうか(^^;)
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『ナポレオン 覇道進撃』第1巻

2011年09月02日 | 世界史書籍
長谷川哲也『ナポレオン 覇道進撃』第1巻(少年画報社、2011年9月)

『獅子の時代』編から引き継いで新章に突入した長谷川哲也の『ナポレオン』ですが、これがもう最初から最後までひどい(^^;) 前シリーズより更にひどさのレベルがアップしてます。具体的にどうひどいかは以下に挙げるキーワードを参照して察してください。

ということで、今巻の内容を象徴するキーワード。

お誕生会
うさぎ狩りと見せかけて王党派を合法的に虐殺できるイベント。

レジオン・ドヌール勲章
地獄のような体験を人生最高の思い出に変えてくれる魔法のアイテム。

エマ・ハミルトンの裸体画
その所有者及び周囲の人々を死地に追い込む呪いのアイテム。

「争っている場合じゃない!ここはひとつ祖国のためにがんばろうじゃないか」
過去の恩讐を乗り越えさせ、かつての敵と味方を団結させる魔法の言葉。

「フランスは男性原理の時代だった」
こう言っておけば、どんなにひどいことをしても何となく納得してもらえるという魔法の言葉。

「愛が男を狂わせる」
こう言っておけば、どんなにひどいことをしても(以下ry

サン・ピエール村に残された借用書
ナポレオンにかかれば、ちょっといい話もかなりひどい話になってしまうという象徴的なアイテム。

「赤字だから増税するとか国債を発行するとかは子供(ガキ)だって言えるんだよ」
「自粛で何か良くなるとでも」
…………これはいったい誰に向けて言っているセリフなのか(^^;) 
コメント (14)
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