博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

『古代国家はいつ成立したか』/『江戸将軍が見た地球』

2011年09月04日 | 日本史書籍

都出比呂志『古代国家はいつ成立したか』(岩波新書、2011年8月)

本書のテーマとなっている古代国家というのは日本の古代国家のことですが、本書を読んで文献史学と考古学の両立ってて一体何なんだろうなと、何となく思いました。個人的には、本書に引用されている石川日出志氏の、文献史学と考古学が現時点で同一の解釈にあるよりも、異なる意見を持ちながら議論を戦わすことが今後の発展に導くという意見に強く賛同します。要するに考古学の成果を文献の知見にムリに擦り合わせる必要は無いと。

本書の場合は著者が考古学の専家ということで、どちらかというと考古学の成果をメインに据えて話を展開させており、文献・考古のバランスが割と取れている方ではないかと思いますが、それでももっと文献の比重を軽くしてもいいんじゃない?という気がしないでもないです。

あと、朝鮮半島の前方後円墳は時代的に見て日本から伝わったもんじゃない?というツッコミには(的確なツッコミだなあという意味で)思わず笑ってしまいました(^^;) 朝鮮半島のものが6世紀のものであるのに対し、日本のは3世紀から存在するので、どう見ても日本のが先だろうという話なんですが……

岩下哲典『江戸将軍が見た地球』(メディアファクトリー新書、2011年8月)

江戸幕府の歴代将軍が海外情勢に関する情報をどう受け取ったかという本なんですが、書中で紹介されている不干斎ハビアンの生涯がカオスすぎます……

不干斎ハビアンは戦国期から江戸初期にかけての人で、元々は臨済宗の寺で修行していましたが、18歳の時にイエズス会に入信し、22歳で日本人イルマン(修道士)となります。以後、キリシタンのイデオローグとして仏僧や儒者の林羅山らと討論したりし、評判となりますが、ある時に突如としてイエズス会から出奔して行方をくらまします。失踪の原因については女性信者と恋に落ちたためだとか、イエズス会の内情に嫌気が指したからだとか諸説あるようですが……

そして失踪から11年後。彼は反イエズス会論者として世に舞い戻り、今度はキリシタン弾圧を進める幕府側のイデオローグとして活躍することになります。で、ハビアンは『破提宇子(デウス)』を著述するのですが、本書ではこの本について、「反キリシタンのお手本となった共に、信者を棄教させるうえで格好の脱洗脳マニュアルとして使用された」と説明しているのですが、「脱洗脳」という表現に笑ってしまいました。要するに日本でのイエズス会宣教師の布教活動とは洗脳にほかならなかったということでしょうか(^^;)
コメント (2)
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