日下翠『金瓶梅 天下第一の奇書』(中公新書、1996年7月)
随分前に人から面白いと薦められながら今までスルーしてた本です(^^;) 古本屋でたまたま本書を発見し、読んでみることに。
明代小説の四代奇書に数えられながら、『三国志』『水滸伝』『西遊記』と比べて馴染みが薄い『金瓶梅』。その『金瓶梅』の魅力を描写手法やキャラクターを中心に探っていこうというのが本書の主旨。かく言う私も『金瓶梅』は未読です……
まず描写の手法については、『水滸伝』などとは違って女性の衣服や遣り取りに供される金銭の額など、日常生活の描写が不必要なまでに詳細であるという特徴を挙げています。どうやらこの辺りを楽しめるかどうかで『金瓶梅』に対する評価が変わってくるようです。
キャラクターについては、主人公の西門慶は『水滸伝』から拝借してきたキャラですが、作者が書き綴っているうちにこの西門慶とシンクロし始めたようで、『水滸伝』から引き継いだ悪漢としての属性と、作者の分身としての文人としての属性の二面性を持つキャラになってしまったという指摘が面白いです。
また、応伯爵のようなキャラクターから、何をするにも仲介者(と仲介者への謝礼)が必要だという、今も昔も変わらない「ブローカー社会中国」の姿を見出したり、『金瓶梅』の時代と現代の女性の社会的地位を比較してみたりと、『金瓶梅』から現代の中国社会へと話題が広がっていくのも興味深いところです。
このように『金瓶梅』の魅力は決してエロだけというわけではありませんが、エロも確かに魅力のうちなんだ!ということで性描写に関するコメントもあります。本書の最後で著者は『金瓶梅』の性描写が他の作品と比べてどう違うのか専門の研究者に比較してもらいたいと述べていますが、これについては最近こういう本が出た模様。
この翻訳者の土屋英明氏は東方書店の目録『東方』にて『中国の性愛文献』というコラムを連載しておられるその道の専門家ですが、本書で『金瓶梅』の面白さが少しわかったところで、この訳本を読んでみようかどうか迷っているところです(^^;)
随分前に人から面白いと薦められながら今までスルーしてた本です(^^;) 古本屋でたまたま本書を発見し、読んでみることに。
明代小説の四代奇書に数えられながら、『三国志』『水滸伝』『西遊記』と比べて馴染みが薄い『金瓶梅』。その『金瓶梅』の魅力を描写手法やキャラクターを中心に探っていこうというのが本書の主旨。かく言う私も『金瓶梅』は未読です……
まず描写の手法については、『水滸伝』などとは違って女性の衣服や遣り取りに供される金銭の額など、日常生活の描写が不必要なまでに詳細であるという特徴を挙げています。どうやらこの辺りを楽しめるかどうかで『金瓶梅』に対する評価が変わってくるようです。
キャラクターについては、主人公の西門慶は『水滸伝』から拝借してきたキャラですが、作者が書き綴っているうちにこの西門慶とシンクロし始めたようで、『水滸伝』から引き継いだ悪漢としての属性と、作者の分身としての文人としての属性の二面性を持つキャラになってしまったという指摘が面白いです。
また、応伯爵のようなキャラクターから、何をするにも仲介者(と仲介者への謝礼)が必要だという、今も昔も変わらない「ブローカー社会中国」の姿を見出したり、『金瓶梅』の時代と現代の女性の社会的地位を比較してみたりと、『金瓶梅』から現代の中国社会へと話題が広がっていくのも興味深いところです。
このように『金瓶梅』の魅力は決してエロだけというわけではありませんが、エロも確かに魅力のうちなんだ!ということで性描写に関するコメントもあります。本書の最後で著者は『金瓶梅』の性描写が他の作品と比べてどう違うのか専門の研究者に比較してもらいたいと述べていますが、これについては最近こういう本が出た模様。
この翻訳者の土屋英明氏は東方書店の目録『東方』にて『中国の性愛文献』というコラムを連載しておられるその道の専門家ですが、本書で『金瓶梅』の面白さが少しわかったところで、この訳本を読んでみようかどうか迷っているところです(^^;)