博客 金烏工房

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『偽りの大化改新』

2006年07月20日 | 日本史書籍
中村修也『偽りの大化改新』(講談社現代新書、2006年6月)

タイトルは随分とキャッチーですが、トンデモ本の類ではありません(^^;) 

天智天皇は自ら蘇我入鹿を打ち倒して大化の改新を成し遂げた英雄でもなければ、叔父の孝徳天皇や母の斉明天皇を傀儡として実権を握った冷酷な策謀家でもなかった。『日本書紀』に見られるこれらの天智天皇像は、後に天武天皇系の人々が意図的に天智天皇を貶めるために記したものである。『日本書紀』の記述を丹念に検討していけば、天智天皇が近親の権力闘争に翻弄された平凡な人物であったことが見えてくる……これが本書の趣旨です。

大化の改新は軽王子(孝徳天皇)によるクーデタであり、皇極天皇や中大兄王子、彼の異母兄である古人大兄王子の後ろ盾となっている蘇我入鹿を排除することで皇極天皇を退位に追い込み、これによって孝徳天皇の即位が実現したとか、孝徳朝で実権を握っていたのはあくまで大王である孝徳天皇自身であったとか、この孝徳天皇の死去により、彼によって実権を奪われていた皇極天皇が斉明天皇として大王の位に復帰することができたといった指摘は確かになるほどと思いました。

反面、仮に著者の言うように『日本書紀』に天智天皇を貶める意図が込められていたとすれば、このような修史作業を天智天皇の血を引く持統天皇以下の歴代天皇や、本書でも天智天皇と親交が深かったとされる藤原鎌足の子孫達がどのように考えていたのか疑問に思います。

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