博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

『街場の中国論』

2011年03月23日 | 中国学書籍
内田樹『増補版 街場の中国論』(ミシマ社、2011年3月)

本書は非中国プロパーである著者が敢えて中国について論じてみたというスタンスで、しかも著者が2005年度に大学院で開講したゼミの内容を元にして2007年に出版した本に3章分の増補を加えたという構成で、2008年以降の毒餃子問題やチベット問題等々については踏まえられていない部分が多くを占めるわけですが、それでも割と見るべき所をちゃんと見ているなあという印象を受けました。

国家のサイズ(この場合は単純に国土の広さと人口の多さを指す)によって国家の抱え込むリスクのスケールや取るべき統治法も変わるのだから、日本や欧米の政策を中国に押しつけようとしても意味がない。日本が社会的・経済的に世界最高レベルで安定しており、かなりの程度の政治的失敗が許される「負けしろ」の大きい国家であるのに対し、(このことは民主党政府が未曾有の震災に対してかなりgdgdな対応をしても、日本国が今なお存在できていることから証明されてしまいましたね……)中国はちょっとした政策の誤りが内戦などの重大な後果に直結し、少々の失敗も許されない国家である。日本はこのことを踏まえたうえで中国との外交に臨むぺきという意見や、中国のガバナンスの衰えは日本の国益に反するという意見には同感。

また台湾・尖閣問題に関して、伝統的な中華思想においては「国民国家」や「国境線」という概念が存在する余地がなく、中国は国境線を画定することそれ自体に強い嫌悪感を抱いているという指摘はなかなか面白いと思いました。ただ、それでも台湾が今後も現状のまま存続しうるかどうかはかなり微妙だと思いますが……

その他、現代中国は抗日戦争以外に国民が一丸となって成功した体験が無いだとか、江沢民は歴代の中国のトップの中で後世の評価がかなり低い人ではないかとか、所々でかなりぶっちゃけた物言いをしていたり、あるいは李連杰主演の『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ&アメリカ 天地風雲』をネタにしているのに笑ってしまいました(^^;) 普通こういう本でそんな映画を題材に選んだりしませんよw

コメント (2)    この記事についてブログを書く
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2 コメント

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mixi経由投稿 (えまの)
2011-03-24 07:42:04
この方の~~論、結構良く読みます。「外さない方」だなと思っていますし、わりと信頼しています。
結構マンガや映画等の大衆娯楽大好きな方なんですよね。ワンチャイを持ち出すのはさもありなん…
Unknown (さとうしん)
2011-03-24 21:52:28
>えまのさま
まさかワンチャイシリーズまでチェックしてるとは思いませんでした。カバーする範囲が広すぎます(^^;) マンガ好きと言えば、この人、『ワンピース』のガイドブックにも一筆書いているみたいですね。

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