博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

2021年4月に読んだ本

2021年05月01日 | 読書メーター
戦後政治史 第四版 (岩波新書 新赤版 1871)戦後政治史 第四版 (岩波新書 新赤版 1871)感想敗戦から安倍政権退陣までの政治史、というか政界史、政局史になっているきらいがないわけではない。『小説吉田学校』とは別の視点からの戦後政治史が読みたいと思って本書を手に取ったが、社会党、民主党といった第一野党の動向も比較的詳しいのが特徴か。コンパクトにまとまっているだけに、便覧的な使い方もできそう。読了日:04月01日 著者:石川 真澄,山口 二郎

古代日本の官僚-天皇に仕えた怠惰な面々 (中公新書 2636)古代日本の官僚-天皇に仕えた怠惰な面々 (中公新書 2636)感想古代日本の状況はよいとして、著者は「専制君主国家」一般に対して幻想を抱いているのではないだろうか。中国を比較対象にし、唐代の例も挙げてはいるが、中国王朝全般が著者のイメージする「専制君主国家」を貫徹できたわけでもあるまい。中国には中国の「怠惰」と「寛容」があったはずである。(宋以後の胥吏のありようも含めたら相当イメージが変わるのではないかと思う)読了日:04月03日 著者:虎尾 達哉

つくられた卑弥呼 (ちくま学芸文庫)つくられた卑弥呼 (ちくま学芸文庫)感想『女帝の古代王権史』の刊行を機に、前考と言うべき本書を文庫版で再読。男王も女王もともに「見えない王」と「戦う王」としての性質を兼ね備えていたのではという所から、現在広まっている卑弥呼像が果たして妥当なのかという疑問につなげていく点、そして古代においては名前による男女の区別がなかったのではないかという発想はやはり面白い。読了日:04月05日 著者:義江 明子

氏名の誕生 ――江戸時代の名前はなぜ消えたのか (ちくま新書)氏名の誕生 ――江戸時代の名前はなぜ消えたのか (ちくま新書)感想現在の日本人の氏名のあり方はどのように誕生したのか?が本題なのだが、その前提として江戸時代の「名前」はどのようなものだったのかという説明に半分以上を費やしている。朝廷の常識と武家(というか広く朝廷以外)の常識とが大きく齟齬する中で、明治維新以後朝廷の常識に沿った形で是正が図られるはずだったが……と、複雑な「名前」のあり方や変化の推移を複雑なまま追っているのが面白い。結果として「日本人のお名前」は単純化されたが、それ故に削ぎ落とされてしまったものも多いと感じさせられる。 読了日:04月10日 著者:尾脇 秀和

後期日中戦争 太平洋戦争下の中国戦線 (角川新書)後期日中戦争 太平洋戦争下の中国戦線 (角川新書)感想日中戦争のうち、太平洋戦争勃発後の展開、特に第三師団の動きに着目。731部隊による細菌戦などを詳述。細菌戦は日本側をも苦しめることになる。目的もないままに始められたという日中戦争、蔣介石以下日本に留学経験のある中国側と日本側の将校とが実は旧知であったということで、本当に何のための戦いだったのかという思いを深くする。読了日:04月11日 著者:広中 一成

労働組合とは何か (岩波新書 新赤版 1872)労働組合とは何か (岩波新書 新赤版 1872)感想西欧での労働組合の起こり、日本での状況など、労働組合の歴史的な起源から語り起こし、日本でユニオニズムが根付かず企業別組合となってしまった歴史的な経緯を詳述。凡百の論者なら「だから日本でユニオニズムは無理なのだ」と結論づけられるだろうが、本書は企業別組合とセットになるべき年功序列が崩壊した今こそユニオニズムを創る好機なのだと言う。日本での成功例として関西の生コン業界を取り上げているのが面白い。読了日:04月14日 著者:木下 武男

中国語は楽しい ――華語から世界を眺める (ちくま新書)中国語は楽しい ――華語から世界を眺める (ちくま新書)感想大陸で話される中国語だけでなく、台湾華語や香港の粤語なども視野に入れ、基礎知識やよもやま話を展開。台湾語は書き言葉として規範化されておらず、結果台湾ではかつての「国語」と歩み寄りを見せていること、そして同様に書き言葉として規範化されていなかったはずの粤語が、「粤語白話文」という形で急速に書き言葉としての規範化が進んでいるといった現地事情が面白い。読了日:04月15日 著者:新井 一二三

中国の歴史10 ラストエンペラーと近代中国 清末 中華民国 (講談社学術文庫)中国の歴史10 ラストエンペラーと近代中国 清末 中華民国 (講談社学術文庫)感想太平天国から西安事変まで。軍事優先、独裁体制、党国体制など、現代中国の政治、政府のあり方として問題視される要素が、共産党政府独自の問題というよりも、孫文、蔣介石の姿勢を継承したものであるという歴史的背景、歴史的展開を随所で示している。なお、本書のタイトルにもなっているラストンペラーよりは魯迅の方が印象が強いし、本書においては重要な役割を果たしている。読了日:04月19日 著者:菊池 秀明

京劇―「政治の国」の俳優群像 (中公叢書)京劇―「政治の国」の俳優群像 (中公叢書)感想清代から21世紀初頭までの京劇と政治との関わり。西太后、袁世凱、毛沢東ら為政者との関わり、梅蘭芳ら有名俳優の銘名伝、新中国の京劇改革、文革と京劇、京劇を通じた日中交流等々。革命模範劇について、ありがちな否定的評価で一刀両断せず、伝統京劇が行き着いたひとつの帰結とする点、一次伝統、二次伝統と、京劇の「創造的破壊」(マイクの使用、女優の導入など)の話が面白い。読了日:04月21日 著者:加藤 徹

幣原喜重郎-国際協調の外政家から占領期の首相へ (中公新書, 2638)幣原喜重郎-国際協調の外政家から占領期の首相へ (中公新書, 2638)感想幣原外交なるものは存在したのか?あるいは田中外交との近似性、外相時代には発揮できなかったリーダーシップ、中国の革命外交に対する保守的な見方、そして憲法第九条の産みの親なのか?という問題など、幣原の功績よりはその限界性を強調する内容。それによって「あとがき」にあるように、「等身大」の幣原を描き出していることには成功しているかもしれない。読了日:04月23日 著者:熊本 史雄

三国志 きらめく群像 (ちくま文庫)三国志 きらめく群像 (ちくま文庫)感想正史『三国志』よもやま話というか銘々伝。正史の基礎というか読み込み方もわかるような設計となっている。個別の議論については要審議の部分もあるだろうが、歴史エッセイとしては上等の部類か。読了日:04月26日 著者:高島 俊男

八九六四 完全版 「天安門事件」から香港デモへ (角川新書)八九六四 完全版 「天安門事件」から香港デモへ (角川新書)感想天安門事件に関わった人々のその後。事件後に「ネットで真実」に目覚めて大変なことになった者もあれば、台湾で学生たちと接し、ヒマワリ学運に影響を及ぼした者もあり。そして天安門事件の負の部分は香港のデモに継承されていく。今回追加の新章ではその継承のありさまが語られる。大陸を見下す香港人の精神が、金やモンゴルに圧迫された南宋人、あるいは清に追い詰められた南明政権の人士と類似しており、ある種の「中華思想」をこじらせてしまっているのが何とも悲しい。読了日:04月28日 著者:安田 峰俊

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