博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

『アトランティス・ミステリー』

2010年06月10日 | 世界史書籍
庄子大亮『アトランティス・ミステリー プラトンは何を伝えたかったのか』(PHP新書、2009年11月)

『史林』の書評欄で紹介されてなければ、確実にトンデモ本と勘違いしてスルーしてましたね。古代ギリシア史専攻の著者がアトランティス伝説にツッコムらしいと期待して読んでみたのですが……これまでのアトランティス実在説の紹介にかなりの頁数を割いていて古代ギリシアの部分が意外と少なく、ちと内容に期待しすぎたなと。まあ、アトランティス実在説の方に期待した読者は「古代ギリシアの部分、イラネ!」と思ってるんでしょうが。

で、本書の主張をまとめると以下の通り。

○アトランティスのネタ元になっているのはプラトンの対話篇『ティマイオス』と『クリティアス』。
○これまでの議論では、アトランティス伝説はなぜ語られたのかという問題がスルーされていた。
○『クリティアス』が未完のままであるので分かりにくくなっているが、アトランティス伝説の真の主役はアトランティスを打倒した古アテナイ。
○アトランティスはダメな国家として理想的な国家古アテナイと対比される存在であり、古アテナイのかませ犬にすぎなかった。
○つまるところアトランティスも古アテナイも、プラトンが理想的な国家のあり方を語るために創作されたものであった。

取り敢えず、プラトンの時代には既に教訓や思想を伝えるために神話・伝説を創造するという発想があったと分かったのが収穫でした。

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