第10章 楊家報仇(前編)
朝議の際に、寇準は潘仁美の供述を太宗皇帝に渡しました。太宗はこれを見ると、困ったような態度を見せ、どうしたら良いのかわからなくなりました。この時、潘妃が宮廷に駆けつけ、泣きながら皇帝に父親を処刑しないようにと求めます。太宗は八賢王に対して言いました。「そなたの叔母が願い出ておるのだ、斬刑にするにしろ赦免するにしろ、そなたが見計らってやるがよい!」
と言って八賢王も腹が決まらず、寇準が知恵者であるとわかっていましたので、彼を来させて事態を収拾させることにしました。寇準は楊家のために公正に取りはからってやりたいと思いましたが、皇帝の機嫌を損ねるわけにもいかず、まずは楊家のために皇帝に褒賞を願い出ることにします。太宗は楊府として天波楼を建てさせ、かつ佘太君に龍頭の杖を授けることを承諾しました。続けて、太宗は言いました。「太師の罪は、斬刑に処されて当然のものであるが、潘妃が朕に仕えておる功績に免じ、辺境に配流して軍務に就かせることとする。楊延昭は軍紀違反により、適当な日を選んで鄭州に配流することとしよう。」
寇準は楊六郎が潘仁美を殺さずにはおかないと誓っていることを知っていますので、朝議が終わった後、こっそりと六郎に復讐の方法を教えてやりました。
その日の晩、六郎は八賢王に謁見し、涙ながらに言いました。「殿下、お別れに参りました。」八賢王は跳び上がるほど驚き、慌てて事情を尋ねます。楊六郎は言いました。「私は堂々たる身の丈八尺の男児であるというのに、親兄弟が殺害されて、仇も討てないとなれば、どの面を下げて生きていけましょう?殿下にはただ我が一門の孤児と寡婦の面倒を見て下さるようお願いするばかりです!」言い終えると宝剣を抜き、首にあてようとします。
八賢王は汗だくになるほど大慌てし、必死で六郎を取り押さえます。ちょうどその時、寇準がやって来たので、六郎は剣を下ろしました。八賢王は寇準を見て言いました。「そなたは知謀に長けておる。きっと何か良い策があろう。」寇準は彼がそのように言うのを見て、急いで自分の考えを述べると、八賢王は続けざまに策が精妙なのを褒め称えます。
次の日、八賢王は太宗のもとに赴いて独角赦を貰い受けました。この独角赦さえあれば、人を殺しても罪には問われないのです。八賢王はこの独角赦を楊六郎に渡し、楊六郎は七郎の妻の杜金娥と八姐・九妹を引き連れ、潘仁美が護送される道で待ち伏せをします。
この日、彼らはついに黒松林で潘仁美を護送する車を目にしました。楊六郎は突撃して護送車の檻を真っ二つにし、潘仁美の頭髪を引っ掴んで確かめてみると、それは見たこともない人物で、訊問してようやく潘仁美が別人を身代わりにして流刑地に送ろうとしていたことがわかりました。楊六郎は大いに怒り、彼を護送車に押し込め、慌ただしく都へと引き返します。
楊六郎は潘仁美の身代わりとなっていた囚人を寇準の面前に引っ立て、黒松林でのことを彼に話しました。寇準も潘仁美がこんな手を使ってくるとは思ってもみませんでしたが、考え直して言いました。「郡馬殿、そうであるなら、やつには主君を欺いた罪があるということになり、我々がやつを殺すのに、またひとつ口実が増えたことになる。」
それから寇準と楊六郎は慌ただしく南清宮へと向かい、八賢王に対してこのことを詳しく報告して、言いました。「潘仁美が身代わりを立てて配流させたとなれば、やつは今潘府に隠れているはずです。しかし潘仁美が主君を欺く罪を犯したとはいっても、陛下はおそらくやつをお許しになるでしょう。我らとしては先にやつを処断して事後承諾を得るしかありません。」
朝議の際に、寇準は潘仁美の供述を太宗皇帝に渡しました。太宗はこれを見ると、困ったような態度を見せ、どうしたら良いのかわからなくなりました。この時、潘妃が宮廷に駆けつけ、泣きながら皇帝に父親を処刑しないようにと求めます。太宗は八賢王に対して言いました。「そなたの叔母が願い出ておるのだ、斬刑にするにしろ赦免するにしろ、そなたが見計らってやるがよい!」
と言って八賢王も腹が決まらず、寇準が知恵者であるとわかっていましたので、彼を来させて事態を収拾させることにしました。寇準は楊家のために公正に取りはからってやりたいと思いましたが、皇帝の機嫌を損ねるわけにもいかず、まずは楊家のために皇帝に褒賞を願い出ることにします。太宗は楊府として天波楼を建てさせ、かつ佘太君に龍頭の杖を授けることを承諾しました。続けて、太宗は言いました。「太師の罪は、斬刑に処されて当然のものであるが、潘妃が朕に仕えておる功績に免じ、辺境に配流して軍務に就かせることとする。楊延昭は軍紀違反により、適当な日を選んで鄭州に配流することとしよう。」
寇準は楊六郎が潘仁美を殺さずにはおかないと誓っていることを知っていますので、朝議が終わった後、こっそりと六郎に復讐の方法を教えてやりました。
その日の晩、六郎は八賢王に謁見し、涙ながらに言いました。「殿下、お別れに参りました。」八賢王は跳び上がるほど驚き、慌てて事情を尋ねます。楊六郎は言いました。「私は堂々たる身の丈八尺の男児であるというのに、親兄弟が殺害されて、仇も討てないとなれば、どの面を下げて生きていけましょう?殿下にはただ我が一門の孤児と寡婦の面倒を見て下さるようお願いするばかりです!」言い終えると宝剣を抜き、首にあてようとします。
八賢王は汗だくになるほど大慌てし、必死で六郎を取り押さえます。ちょうどその時、寇準がやって来たので、六郎は剣を下ろしました。八賢王は寇準を見て言いました。「そなたは知謀に長けておる。きっと何か良い策があろう。」寇準は彼がそのように言うのを見て、急いで自分の考えを述べると、八賢王は続けざまに策が精妙なのを褒め称えます。
次の日、八賢王は太宗のもとに赴いて独角赦を貰い受けました。この独角赦さえあれば、人を殺しても罪には問われないのです。八賢王はこの独角赦を楊六郎に渡し、楊六郎は七郎の妻の杜金娥と八姐・九妹を引き連れ、潘仁美が護送される道で待ち伏せをします。
この日、彼らはついに黒松林で潘仁美を護送する車を目にしました。楊六郎は突撃して護送車の檻を真っ二つにし、潘仁美の頭髪を引っ掴んで確かめてみると、それは見たこともない人物で、訊問してようやく潘仁美が別人を身代わりにして流刑地に送ろうとしていたことがわかりました。楊六郎は大いに怒り、彼を護送車に押し込め、慌ただしく都へと引き返します。
楊六郎は潘仁美の身代わりとなっていた囚人を寇準の面前に引っ立て、黒松林でのことを彼に話しました。寇準も潘仁美がこんな手を使ってくるとは思ってもみませんでしたが、考え直して言いました。「郡馬殿、そうであるなら、やつには主君を欺いた罪があるということになり、我々がやつを殺すのに、またひとつ口実が増えたことになる。」
それから寇準と楊六郎は慌ただしく南清宮へと向かい、八賢王に対してこのことを詳しく報告して、言いました。「潘仁美が身代わりを立てて配流させたとなれば、やつは今潘府に隠れているはずです。しかし潘仁美が主君を欺く罪を犯したとはいっても、陛下はおそらくやつをお許しになるでしょう。我らとしては先にやつを処断して事後承諾を得るしかありません。」