延原謙訳では「赤毛組合」ですね。
ホームズ作品でもかなり有名な部類ではないでしょうか?
「赤毛組合のトリック」も。
私にとっても、子供のころ読んだ印象が残っている話でもあります。子供向けの本で、今読んでるホームズとは全く違った印象。この印象のままだったら、おそらくホームズ物語にはまってはいなかったんじゃないかな。延原謙様に出会えてよかった!
ドラマの方はというと、原作にはないモリアーティ教授が出てきます。
そして教授が黒幕ってことになってます。
あれれれれ。
まぁ仕方ないですね。テレビ的には。
「最後の事件」とかでいきなり「すべての犯罪の半分は教授が裏で糸を引いてる」ってことになってしまうので、ホームズの手がけた事件の--犯罪じゃないのも混じってるから---1/3くらいは教授関係にしとかないと・・ということになったのでしょう。説得力なくなっちゃいますもんね。放映ではこの次が「最後の事件」らしいので、やっぱり少しは盛り上げたかったのでしょう。
実は私自身は、モリアーティ教授にはあまり関心(思い入れ)がないのです。アイリーネ・アドラーと同様、作中でホームズがやたらと持ち上げている割には、たいしたことがない気がして、後世の人がすごい好敵手にして映像化したりしてると「大騒ぎしちゃって!」と、鼻白んじゃうんです。
BBCの「SHERLOCK」も初めて見たときには、「ピンク」も「暗号」も「グレートゲーム」も「ベルグレービア」も全部モリアーティがらみだったのが、気に入りませんでした。唯一「バスカヴィル」だけは独立した話になっててほっとしました。(バスカヴィルは正典でも一番のお気に入りなので^^)
もちろん、こういう「おはなし」を作る際に、敵役が強ければ強いほど、色彩豊かにワクワク楽しめる話になるんだろうとは思います。なので、理解はできるんですけど、いきなり第1話「PINK」から既にモリアーティだったのには驚きました。
と、ぶちぶち文句も多かったのですが、最後に2-3話「ライヘンバッハ」を見て、その気持ちはどっかに吹っ飛びました。
正典のモリアーティよりももっとぐっと説得力を持って登場してくれたジム!
もう今までの文句は、消えてなくなりました。
そういえば、先日見たハリウッドロバートダウニーJr.のシャーロックホームズにしても最初からモリアーティの影があり、このままでは現代の観客はシャーロックホームズはモリアーティとの戦いのために存在したと思う人が増えるんじゃないかしら?
仮面ライダーとショッカーみたいに(古っ!他のたとえが思いつきませんでした・・)
声を大にして言いたいのは、ホームズの魅力は「ホームズVS.モリアーティ」(だけに)にあるんじゃないということです。モリアーティなんて、ドイルがホームズを抹殺するために急ごしらえしたキャラなんですからっ。
たてつけ悪いんですよ。
がたぴしゃ。
と、ひとしきり文句を言い尽くしたので(笑)、ドラマの話に戻ります。
モリアーティ教授の話を除くと、どことなくユーモラスで、明るい話です。
落語みたい。
このホームズとワトスンはひどいです。
依頼人の話を聞き終わると、大笑いし始めます。
ひどい。
ウィルソンさん、かわいそー。
時代の、もしくはこの二人の属してる(紳士)階級の価値観かもしれないけど、お金に細かい(きたない?)ウィルソンのような人物を小ばかにしてるんでしょうね。ユダヤ人だということに関係あるのかな?「ベニスの商人」的な。
でもウィルソンさんからは謝礼をもらわなかった上に、お見舞金まで渡しているから、まぁ二人ともそこまで底意地悪い態度ではなかったと言えますか。
とはいえ、大笑いするホームズとワトスンはなかなか陽気でよかった。
深刻な事件のときは、二人ともしかめ面だし。
そしてこの話は、屋外シーンのお天気が良くていいですね。
最後の本屋さんからのシーンもいい。
サラサーテ演奏会のシーンも。
全体的にテンポ良く、気持ちよく、進んで行きます。
(教授登場シーンをのぞいて)
ジョン・クレイ(Spaulding)がつかまるときの態度もいい。
王家の血筋だから言葉遣いに気をつけたまえとか何とか。
そして恭しくお辞儀して去って行く・・・。
ユーモラスで面白いです。
そこの台詞はこうです。
Spaulding: I beg you to take your filthy hands off me! You may not be aware that I have royal blood in my veins. And be so kind as to say "sir" and "please" when you address me.
君の汚い手を私から離してくれたまえ。
君は気がついてないかも知らんが、私には王家の血が流れているのだ。僕に話しかけるときには「sir」と「please」を使ってくれるようにお願いするよ。
filthy:汚れた
veins:静脈
address:呼ぶ、話しかける
Jones: All right. Would you please, sir, mind marching upstairs where we'll get a cab to transport your highness to the police station?
わかりました。恐縮ですが、sir、階上までご足労願えますでしょうか?そちらにて私どもで馬車をつかまえまして、殿下を警察署までお送りいたしとうございます。
Spaulding: That's better.
よかろう。
こんな感じかな?
たぶん、言い回しとして、とても丁寧で気取ってるんでしょうね。
でもその辺はあんまり味わえません。
be so kind as to say とか
Would you please, sir とか、丁寧なんでしょうね。
ジョーンズ警部が「
your highness-殿下」って呼んでるのはわかりますが。
演奏会を聞きに行くシーン。
サラサーテ役の方、本物のバイオリニストさんだったようですね。
風貌もサラサーテに似せてあったようですが、演奏もサラサーテ風だったのでしょうか?わかったら面白いのに。
私も聞きたかったな~。この演奏会。
二人がサラサーテを聞きに行った、セントジェームズホールってどこなんだろうと思って調べました。正典では、サラサーテの前にシティーに寄って行こう。となってます。ドラマでもシティでウィルソン質屋を偵察した後、演奏会へ行っています。
位置関係が知りたいオタク心(笑)。
以下WIKIより。
St. James's Hall was a concert hall in London that opened on 25 March 1858. It was situated between the Quadrant in
Regent Street and
Piccadilly, and
Vine Street and
George Court. There was a frontage on Regent Street, and another in Piccadilly.
ちょっと遠回りですね。
前も書いた
ロンドン空間把握地図を基に考えると、市ヶ谷から日比谷に出るのに、深川経由で行くという感じですね。
もうこのホールは立て替えられて残っていないそうです。
以下、備忘録的な台詞の引用です。
Holmes: Hm!
Watson: [entering] Oh. Sorry, Holmes.
Holmes: No no. You couldn't have come at a better time.
Watson: Well, I was, I was afraid you were engaged.
Holmes: I am. Very much so.
Watson: What are you going to do?
Holmes: To smoke. It is quite
a three-pipe problem, and I beg that you won't speak to me for fifty minutes.
「パイプ三服分の問題だ。」
現代版シャーロックで「パッチ3枚分の問題だ」に置き換わってた台詞はここだったんだ!
Holmes: Sometimes I think
my whole life is spent in one long effort to escape from the commonplaces of existence.
Watson: No no, you are a benefactor of the race, Holmes.
Holmes: Well, maybe it is of some little use after all. "L'homme c'est rien - l'oeuvre c'est tout," as Gustave Flaubert wrote to Georges Sand. Hm?