キカクブ日誌

熊本県八代市坂本町にある JR肥薩線「さかもと駅」2015年5月の写真です。

夏休みの「ハリー・ポッター」

2022年08月17日 | ☆読書


今年の夏休みは「山の日」も含めて6連休だったのですが、ずーっと「ハリー・ポッター」を読んでいました。さらに、映画化作品も全部見ました。ほとんど外出もせず。上の写真に写ってる本は半分くらいです。図書館で借りたので、文庫本タイプやハードカバーなどいろんな「版」が混じっています。(英語版はぱらぱらと参考程度に読みました)

まさに「ホグワーツ魔法学校サマーキャンプ参加」の様相^^。

ハリーポッターシリーズは全部で7作品あり、1作品が文庫本だと2~4冊分あるので、かなり読みごたえがあります。(全作品映画化されており~7番目は映画2本分~しかも1本が2時間半!)

ハリーの通う「ホグワーツ魔法学校」は全寮制で、11歳で入学して7年通うのですが、その1年生から7年生までの7年間の出来事です。1学年分が1作品となっています。


とにかく1~2日では終わらない大作ですから、夏休みに集中して読めてよかったです。最後の二日は夢でもハリーポッターの世界にいました。まさに「寝ても覚めても」どっぷり魔法の世界につかりました。


子どものころから本は好きでしたが、ファンタジーには不思議と縁がありませんでした。「指輪物語」「ナルニア国物語」とか、ともだちが夢中になって読んでいた記憶はあるけど、私はローラ・インガルス物語やシャーロックホームズシリーズが好きでした。

初めて読んだファンタジー。
この作品は面白いです!
子供が読むには難しいような気もしますが、きっと子供は子供なりの、大人は大人の感動ポイントがあるのでしょう。
いま勉強しているヨーロッパの「昔話」の要素もいろいろ出てきますし。ファンタジーに素養のなかったところ、勉強にもなりました。


作者のJKローリングはわたしと同世代の作家。
90年代からハリーポッターを書き始め、1作品ずつ出版され、作家が本を書いている途中で映画化も進むという、まさに同時代の作品だったのです。

「次のお話はどんなかな?」などとワクワクしながら出版を待つ体験をした人も多かったようです。出版日には本屋にすごい列ができたとか。

残念!それには参加できなかった。
(だいたい、流行っているものに関心のないふりをしがちな天邪鬼なので、割とこういうことがよく発生します)

今更ながら、大阪のUSJにあるハリーポッターのとこ、行ってみたくなりました。オリバンダーの店で魔法使いの「杖」を買ってみたい(笑)


「快読 ハリー・ポッター」菱田信彦著

2022年08月01日 | ☆読書
 イギリスの「階級社会」を背景に読み解く、大胆な「ハリポタ」論!

ハリー・ポッターは映画を1作くらい見た程度。
あまり興味を持ってなかったのですが、世界的な大ヒット作ですよね。
作者のJ・K・ローリングは、執筆当時、シングルマザーで生活保護を受けるほどの困窮していたそうですが、いまや長者番付に載る人ですよね。
きっと面白いんだろうなぁ、とは思いつつもこれまで読むきっかけがありませんでした。

この本は友人が書いたのです、ある日突然郵便受けにこの本が届きました。
作者からの恵贈で出版社から直送されてきたものでした。

このブログで「SHERLOCK」のセリフの翻訳に挑戦していたころ、コメント欄にいろいろ書き込んでくれてた方です。

せっかくいただいたので、感想も伝えなきゃ!
と一気読みしました。
ハリーポッター知らないのに読めました。
イギリスの社会階層論など、とても面白かったです。


で、この本を読んで、ハリー・ポッターも読み始め、
いま、3作目まで読み終わりました。
「賢者の石」
「秘密の部屋」
「アズカバンの囚人」

お も し ろ い !

売れるの納得です。
大人が読んでも十二分にたのしめます(というか、これが子供向けとは思えない)


本を送ってくれた友人からは
「この機会にぜひ小説の方をお読み下さい。英語で読むのがお勧めです。イギリスの学校生徒の口語表現とかもわかって面白いですよ。」
とおススメをいただきました。

え?英語で? 

冷や汗たらたら・・・・


でも、この夏はどこにも出かける予定もないから、
ハリポタを英語で読んでみるのも一興かもしれません。

とりあえず図書館に英語版もありそうなので借りるだけは借りてみましょう。







「万葉集講義」上野 誠著

2022年07月16日 | ☆読書
今やってるNHKラジオの「古典講読」は万葉集です。私の万葉集の知識は、高校で習ったところまでなので、ほぼ初めて聞く話ばかりで面白いです。

鏡王女(かがみのおおきみ)と中臣鎌足の相聞歌を取り上げている回がありました。

玉櫛笥覆ふを安み明けていなば君が名はあれど吾が名し惜しも

玉櫛笥 みもろの山の さな葛 さ寝ずは遂に 有りかつましじ

万葉集にはいろんな状況の歌が入っていますが、この歌を送りあうタイプのもの(相聞)は、どうして両方セットで後世に伝わっているのでしょうか?
手紙のようなものだとしたら、セットになってるというのは不思議です。この歌の返歌がこの歌、と特定することも難しそうですし・・。
宴会の席などでふたりが一緒の場所にいて、(さらに公衆の面前で)詠みあって第三者が記録してたとかならわかるのですけど。

万葉集にもそういう宴席での余興的な歌もたくさんあるそうです。上記の鏡王女と中臣鎌足の歌がそれに当たるかは知りませんが。
ラブレター的なもので、しかも「人目を忍んでいる」状況の歌なら、残りにくいんじゃないかな?
うーん。

なんだかすごく気になってきました。



そうだ!
同級生に万葉集の専門家になった人がいたっけ。
聞いてみよう。

以下、わたしと同級生(専門家)のやり取り(相聞)です。



「こんばんは。 万葉集について質問なのですが…。 個人に宛てた相聞歌とか、どういう経緯で第三者の知るところとなり、歌集に収録されたのでしょうか?? 昔からそれが不思議でしょうがないのです。 昔のことで、コピーもないし、個人にあてた歌が残るのが不思議です。 すみません、気になってしょうがなくなってしまいました。」

友人
「こんばんは。 ご無沙汰です。相談の件、個人的には以下のように考えています。 万葉集の場合、歌人名が分かる相聞の歌はある程度偏りがあります。また歌人名が分からない相聞歌はある程度類型化された表現です。 前者の歌は、恐らくそれぞれが歌のメモなどを残していた。それらが万葉集の編集で利用されたのだと思います。後者の歌は、類型化されているので、似た歌が沢山詠まれていた。そうした歌が現在見るような万葉集の歌なのだと創造されます。 これは古今集以降の王朝和歌とは、また異なる残り方なのだと思います。こんなもんでいかがでしょうか。」


「早速のお返事ありがとうこざいます!! めも!! びっくりです。 とすると、万葉集を編むときに、「歌を集めまーす!」とかアナウンスがあり、子孫が応募したとか何でしょうか?(あるいは編者が著名な人の家に行き、「御宅にになんか先祖の歌残ってませんかねー書付とか?」と調査して回ったって感じなんでしょうか?? 類型化した方のは、流行り歌的に その時代の人々が ある程度みんなが知っていたような伝わり方をしていたってことでしょうか??
その辺のことが書かれた参考書とかありますか??」

友人
「編集の時にはある程度周辺の人に頼んだんじゃないですかね。また、古歌集などから拾った歌だと書いてあるので、そうした歌集が早くからあったんだと思います。 類型化した歌は、ある程度知られていたのだと思います。 参考になるような書物、バッチリではないですが、入門書としては、上野誠『万葉集講義』(中公新書)が参考になります。 」




ということで、読んでみました。
「万葉集講義」
面白かった!




はじめはもじどおり「うた」 っていた「うた」が、文字(漢字)の浸透とともに買い留められるようになってゆき、
「だれが、どこで、どんなシチュエーションで」詠んだものか。
が重視されてきた。

というはなしが、目からウロコでした。
硬いタイトルですが、歌の現代語訳が砕けててとても楽しく読めました。

一例を・・・
大伴旅人が九州勤務を終えて都に帰任するときの送別会での山上憶良の歌

あがぬしの御霊たまひて 春さらば 奈良の都に 召上げたまはね

これについた現代語訳が

よっ!わが主人とも頼む大伴旅人サマ。その旅人サマのコネにすがりまして、春になりますれば、奈良の都に栄転させてくださいましな…。旅人サマ。

面白すぎ!でも状況よくわかりますね。



再来年の大河ドラマは紫式部?!

2022年05月13日 | ☆読書
再来年の大河ドラマは紫式部が主人公だそうですね。
平安時代、しかもあまり武士が出てこない王朝絵巻。
面白そう!
平安時代というと「風と雲と虹と」を思い出しますが、都の旅一座の風俗が唐風だったりしてけっこう独創的でしたよね。(NHKオンデマンドで見返した記憶有)考証がむずかしく自由度があったのかな~などと勝手に推測。この平安絵巻も自由度があって作りようによってはかなり面白くなるのでは?と思います。
なんにしても戦国と幕末はもう飽き飽きなのでありがとうNHK!な気持ちです。


さて、わたくし偶然にもこのところ「紫式部日記」にはまってるんです。
大河のニュースがあった日はちょうど、予約していた「新訳紫式部日記」が図書館に届いていたので借りてきたところでした。



NHKラジオで「古典講読」という良番組があり、この前まで「紫式部日記」が取り上げられていたのです。ちらっと聞いたらとても面白かったので、ここ一月ほど、Youtubeに上がっているのを毎晩寝る前に少しずつ聞いています。

王朝日記の世界Ⅱ  第 26 回  紫式部 日記(1)紫式部 日記の 魅力 /島内 景二・しまうち けいじ・国文学者 NHK 古典講読

その講師の先生の本があると知って予約しました。
読んでみると、「古典講読」の台本がそのまま本になったような(その逆かも)もので、先生の声が聞こえてきそうです。今まであまり関心がなくて、「源氏物語」も教科書で読んだ程度なんですけど、この日記はとても面白いです。
1000年前の人ですが、島内先生の現代語訳が生き生きしてて、そこに紫式部がいるみたい。友達になれそうな人なのか、なれないタイプなのか、読み進めながら考えようかなと思ったり。

この本読んでおくと再来年の大河もぐんと楽しめるはず!





圓生の録音室

2022年02月28日 | ☆読書
ロシアがウクライナに軍事侵攻し、大きな戦争になるのではないかと背筋を寒くしています。もしかして第一次世界大戦の始まるときはこんな感じだったのではないか?
戦車がウクライナの冬の大地を進む様子を見て、今でもやはり戦車なのが意外だったり、世の中の動きについて甘い考えだったんだと気が付かされてます。

なんとも落ち着かない、暗い気持ちになってしまったところで、本を読みました。



図書館に予約して、随分順番待ちしました。手に入って一気に読みました。
文庫だしこれは買って手もとに置きたいな。(と思っだけど絶版なんでしょうか??)


著者の京須さんは圓生百席などの録音盤のプロデューサーで、6代目圓生最晩年に一緒に濃密な仕事をした方。
そして文章も素晴らしい。

まるで圓生師がそこで喋ってるかのような錯覚。確かに声が聞こえてくる。
おすすめします。





南条文雄「懐旧録」

2022年02月07日 | ☆読書
佐々木閑先生のyoutube仏教講義をずっと見てます。
そこで最近登場したのが南条文雄。
もちろん全然知らない名前でした。

幕末生まれの真宗大谷派のお坊さん(学僧)で、明治九年に英国に渡り、当時ヨーロッパで進んでいたインド学、アジア学、仏教学に触れてサンスクリットを学んだ方。日本最初期の文学博士であり、大谷大学の学長などを務めた方なんだそう。

お坊さんの英国留学ってどんな感じだろ?

と興味をそそられ、図書館から借りてきました。



戊辰戦争の頃、本願寺が像兵を組織して、それに加わって1年余訓練に明け暮れていた話。

すごく秀才だったため、本山の学寮に入って頭角を現していた頃の話。

お坊さんだけど、夜の街に通ってお酒を飲み、いつも同じ女性たちが迎えてくれた話。(笠原さんはその女性との間に一男をもうけていたのだそう)

留学するのは周りに秘密だったこと。

横浜、神戸、香港、シンガポール、セイロン、スエズ運河、マルセイユと航海した話。

英国についてから英語を始めた話。

下宿での初日、ガス灯の消し方がわからず、フッと吹き消してしまいガス漏れ騒ぎになった話。

イギリスでは日本人学生会があり、持ちわまりで研究発表的なことをやっていた話。

アメリカ周りで帰国した話。
大陸横断鉄道にも乗っていらっしゃいます。

ペッペさんが見つけた仏舎利をタイの王様から譲ってもらえるとのことで、お迎えに出かけた話。


知り合いが洋行するというので挨拶に行た際に「いつかはインドへ仏跡巡礼に行きたいんですよね」と話したら「じゃあ、You一緒の船に乗っちゃいなよ。お金1000円かしちゃうからさー」と言われて、そのまま家財道具まとめてお寺に預けて、ほんとにインドに行っちゃった話(奥さん同行)。
これすごい。
1000円ってすごい大金でしょう。
ぽーんと出しちゃう人もすごいけど、すぐにのっちゃう南条文雄先生もフットワークが軽い。

船中で出会った乃木希典氏が「インドは物騒なところだから」と懐剣を渡そうとした(ケド固辞した)


仏教学の世界学会がフランス領インドシナ(トンキン)で開催されてそこへも参加。イギリス留学中に知り合いになった人たちと再会する。


日清戦争後、荒廃した中国の寺のお経を保全(と言っていいのか?日本に持ち帰る)のために清国慰問団が組まれたという話。
ミンビ暗殺事件のあとで、朝鮮の宮殿に幽霊が出るということでお坊さんに読経供養をしてほしいという要請があった話には驚いた。罪悪感が幽霊を見せている?
また、この時の同行者には「覚王山日泰寺」の塔建設のため、中国の寺から仏塔を移築しようという計画をもっていたことも興味深い。




佐々木先生の仏教動画。
先生が「濃厚接触者」となったことや体調不良だったとのことで1週間ほどお休みがあった。(おとといから復活!ぱちぱち)

久しぶりに鎌倉円覚寺の横田南嶺老師のYoutubeも観たのだけど、佐々木先生のことに触れていらして、みんなつながってるなぁなどと思ってちょっとうれしかった次第。






この夏読んだ本

2021年08月24日 | ☆読書
この夏はコロナコロナで何となく落ち着かなかった。
読んだ本の記録です。

論文集なので、それなりに難しいのですが、面白い話もあったり。
アンデルセンとグリム兄弟の生涯の比較研究は読みやすく興味深いものでした。



ヘレーン・ハンフ (著), 恒松郁生  (翻訳)

往復書簡集「チャリングクロス街84番地」の大ヒットにより、ついにあこがれの英国旅行ができることになったへレーンハンフのイギリス滞在記です。

翻訳している恒松郁生さんは、惜しまれつつ閉館してしまったロンドン漱石記念館の元館長さんですね。


頭木弘樹著
知り合いが読んでいて面白そうだったので図書館で借りてきた。
読み進めていくと、小澤俊夫先生の話やマックスリュティ理論の話が出てきてびっくり!頭木弘樹という方は「本を紹介する」のがお仕事なんだそう。
おびただしい本と落語の音盤が紹介されています。
面白い本でした。おすすめ!




お経で読む仏教」釈徹宗著
NHK出版 学びのきほんシリーズなので、とっても読みやすく面白かった。
この半年の仏教学習の成果もあり、よく理解できました。
釈先生のお話を聞く機会もそれなりにあるので、釈先生の声が脳内で響いていました。
おすすめ!







自由が丘にある小さな出版社~ミシマ社~の社長さんの書いた本です。
この出版社、本屋さんに行くと何か手書きっぽいポップとかがあったりして、気になっていたのです。
「自由が丘」だし。(自由が丘の近くでいつも仕事しています)

ここの出版社の本を買って読んだこともあります。(成長しない会社~「21世紀の楕円幻想論 その日暮らしの哲学」 平川克美著

最後まで読んで気が付いたのですが、この本はミシマ社のものではなく、河出書房です。
元気が出てきます。人生に悩んでいる人とか、若い人とか、これから一旗揚げたいひととか、そろそろ人生を仕舞いたい人とか。
おすすめします。





「もしも徳川家康が総理大臣になったら」

2021年06月21日 | ☆読書
横浜に引っ越してきて2年になる。

通勤に時間がかかるようになった。
特急に乗れば35分、各駅停車で45分 door to door なら乗り換えや歩く時間も含めてプラス20分かかる。

時間に余裕があれば各停に乗るようにしている。帰りは必ず各停に乗る。
10分の差は大したことがないし、各停のほうが空いているから。(コロナになってからは特に空いていることは重要なファクター)
それに各停だと車内で読書にも時間が使える。

都内に住んでいた頃は、自転車のことも多く、通勤時に読書はほとんどできなかった。読書のための時間ってあるようでなかなかない。

おかげで、この2年で読書量がずいぶんと増えた。図書館で借りてばかりだから書棚の本は増えないけど。


あ、この週末に読んだのは、珍しく新刊本の小説「もしも徳川家康が総理大臣になったら」、電車に広告が出てて興味を持った。
まだ文庫にもなってないし、夫に話すと興味がないというので(前にも書いたが夫とは本の趣味が違う)、電子書籍にした。単行本だと1600円くらいするが、電子書籍だと1300円ちょっと。それにAmazonのポイントも貯まってたのを使って800円くらいで買えた。



一日で読み終わった。
800円で買って良かった。それ以上払ってたら、少し後悔したかも(ケチなんです私)。でも前半は大いに楽しんで読んだ。こういう歴史のifものは理屈抜きに楽しい。でもやっぱり内容が薄くて「時間つぶし退屈しのぎ」という感じの本だった

電子書籍は嵩張らないのが何よりの利点。家族でも回し読みはできないから、そこが不便だけど。(今回夫も読みたいと言ったらリアルの本を買っていたかも)










「チャリング・クロス街84番地」へレーン・ハンフ著

2021年06月16日 | ☆読書
 
夫が買ってきて面白かったといっていた本。

小説読みの夫とは本の趣味はあまり合わない。
私は小説をあまり読まないし、たいてい図書館で借りてくるタイプ。
対して、夫は新刊本を山ほど買ってきてはせっせと読んでいくタイプ(本で破産するかも)。
これは書簡集ということで、とっつきやすく、そしてとても面白かった。

1970年に出版されたもので、日本語訳も早い時期に出ていたようだけど、今年の4月にこの増補版が新たに出て、本屋に平積みになっていたのだそうだ。

ニューヨークの脚本家の女性とロンドンの古書店との書簡集。
アメリカで見つからない古本をイギリスから取りよせようと思って、たまたま雑誌に広告のあったロンドンの古書店に、問い合わせをしたところから始まる。
1949年から1969年まで20年にわたる本の注文やそれにまつわるいろいろなやり取りがそのまま本になっている。

ただそれだけなのに、とても面白い。
時代の空気が詰まっている。

この作者のへレーンは、「消費される」新刊本を嫌っているようだ。その感覚はわたしも分かる。(だから私は新刊本を買わないで図書館で借りている)

それと古い時代を舞台にした小説などにも辛辣だ。
「その時代のことを知りたかったら、その時代に書かれた本を読めばいいのに、なぜ後の時代の人が書いたまがい物を読まなければならないのか」
その感覚も納得だ。

宮部みゆきの江戸ものも昔は好きだったけど、半七捕物帳を知ってからは、江戸風情を楽しむために宮部みゆきを読みたいとは思わなくなった(岡本綺堂も江戸時代を生きた人物ではないケド、現代語で書かれているものの中では江戸に近い)


さて、この本は1970年に出版され、それがリーダーズダイジェストに載り、世界中で大人気になったらしい。そして1986年には映画化されている。主演はアン・バンクロフト(ミセス・ロビンソン!)とアンソニー・ホプキンス(レクター博士!)。

 

アマゾンビデオで見てみた。
この映画もすごくよかった。
この二人は手紙のやり取りをするだけで、実際に会うことはないのだけど、それでもしっかり映画になってる。おすすめ!

さて、この古書店があった「チャリングクロスロード84番」。
いまはどうなっているのだろうかと、グーグルマップで調べてみた。
(こういうの大好き)
そうしたら、その場所はマクドナルドになっていた。
でも古書店時代の古い写真にある建物のファサードは同じもののようだった。
感激。古い建物を建て替えずに改装して使うヨーロッパならではですね。









藤本晃氏の著作『日本仏教は仏教なのか』3部作

2021年05月24日 | ☆読書
緑が美しい九品仏浄真寺。
散歩してきました。
桜でもなく紅葉でもない時期はヒトも少なくて落ち着いたいい感じです。




今日のお釈迦様。
本堂には上がらず外から眺めただけです。


最近ずーっと読んでいた、藤本晃さんの「日本仏教は仏教か?」シリーズ3部作。ようやく読み終わりました。読んでいてとてもしんどかった。
頑張って読んだ自分えらい!
この方は仏教学で博士号も持っているそうですが、一貫して主観的な論調で進むので、読み進めるのがつらかったです。
ご自身は浄土真宗のお坊さんだそうですが、テーラワーダとのつながりが強いようで、熱心な釈迦崇拝者だとのこと。悪い人じゃないのでしょうけど、こういう本を書くには向いていない方だなぁと思いました。

・お釈迦さまは全知全能。なんでもお見通し。
・お釈迦さまがスリランカに3回下り立っている。
・パーリ語仏典は真実。お釈迦様の時代から何も変わらずに続いている。
・根本分裂、部派仏教を経て上座部だけがお釈迦様の教えを守っている真のサンガ。ほかは偽物。

という話が繰り返し出てきます。
そのことが、筆者の一番いいたいことなのだろうとは思いますが、主張があるならもっと論理的に語ってもらわないと、飲み込みにくい。3冊にもわたって書いている情熱は感じるけど、その主張は全く納得できませんでした。



今回読み終えた3冊。
この「サンガ」という出版社は、テーラワーダ(上座部仏教)の本をたくさん出版しているようです。しらべたら、今年の1月破産してしまったのだとか!!出版業界は経営厳しいですよね。

 
 




コロナ後の世界(文春新書)読了

2021年04月23日 | ☆読書


読了。
去年図書館に予約しておいたのが、ようやく順番が回ってきた。
ジャレド・ダイアモンドやスティーブン・ピンカーなど海外の知識人たちにインタビューや寄稿してもらったものをまとめたのだそう。

主に去年の4月5月ぐらいに書かれたものが中心。
そう考えるともう1年が経っており情報としては多少古くなっているが、それでもとても面白く読めた。雑誌の特集をまとめたようなもので、重版などはされないのだろうけど。

世界の第一線で活躍する学者の皆さんであるが、当然ながらその未来予想はそれぞれ違っている。

AIの進化について脅威だという人、楽観的な人。
中国が脅威となるかならないか。
アメリカの民主主義や分断についての悲観・楽観。



おまけのように日本についても語ってくれているが、熱く語る人もいれば、たいして関心がなさそうな人もいた。

私なりに思ったことは、日本の喫緊の課題は男女格差の是正だ。そのことにより超高齢化社会を支える労働人口の減少などについても多少の光明が見えるというものだ。


今読んでいるのは、この本にも登場するスティーブン・ピンカーの「暴力の人類史」。これが力作すぎてなかなか読み終わらない。飛ばし読みしてるのに、読み終わらない(笑)
でもすごい本だ。
なんとしても最後までたどり着きたい。

「犀の角たち」佐々木閑著

2021年04月06日 | ☆読書

「この本を書くことができたはのは、自分にとって本当に良かったこと」
と著者自らがどこかで話していた本。
読了。

科学史概略(結構なボリューム)から仏教に話が及ぶ。
科学者と釈尊への「ラブレター」だとあとがきに書かれている。(この本を書くのに3か月かけたそうだがその期間が恋愛期間だったのだとか^^)

文中に何度となく著者の科学者への憧れが表出してくる。
そんなところに人間くさい佐々木先生を発見して嬉しくなる。

が、科学史概説の部分は私には難しかった。
万有引力、
相対性理論、
量子論…。
進化論はすこしわかったけど、数学史に至ってはまだチンプンカンプン。

何度も読み返す必要がありそうだ。

仏教については「釈迦の仏教」と「大乗仏教」について、それぞれ一章ずつ割いている。大乗仏教についてはかなりぶっちゃけた書きっぷりで痛快だった。
2006年の本なので先生もまだお若いのだ。
個体特性:寒さに弱い に大いに親近感。

釈迦の仏教と大乗仏教がそれぞれ優劣つけがたい(そもそもどちらが優れているなどという比較の対象にはならない)という説明に、「パターチャーラーの物語」が使われていた。この話、知らなかったけど、すごく納得だった。

釈迦の仏教と大乗仏教とは、それぞれ必要な人がいるというのは先生が色んな所で語っていることだけど、今までで一番良くわかった。
 
全てを失い、悲しみのどん底で物狂いのようになっていたパターチャーラーを釈迦が救い、彼女は出家して安寧を得た。
しかし・・・と先生は言う。
「もし、パターチャーラーの子供の一人が生き残っていたら?」
家も夫も両親も子供も失って悲しみのどん底にいることは変わりがないけど、一人残った子どもを育てなくてはならないなら、出家はできない。釈迦の仏教では救うことができない。彼女は在家のままこの悲しみ苦しみと対峙していかなければならない。大乗仏教の出番だ。

と、こういう話。

私はまだどちらも必要としてないから、宗教的に仏教を信じる段階ではないけど、仏教2500年の歴史には大いに興味がある。



「犀の角たち」が2013年に文庫になった。
たぶん文庫版の加筆もあるだろうから、買うならこちらかな。


アマゾンのレビュー見てると、佐々木閑先生を嫌いな人がいるんだな~と思う。なんかものすごい長文で否定してる人いるけど(レビュー欄で)なんなんだ?あの情熱は?

「サル化する世界」内田樹著

2021年03月24日 | ☆読書
数年前から私が時々イベントセミナーでお世話になっている喫茶店(最近はコロナで全く出かけてませんが)『隣町珈琲』さん。そこでお目にかかったオーナーの平川克美さんは、かなり有名な言論者らしくご本もたくさん(でも難しそう)。それでもこの方は私が以前住んでいた大田区の隣まちのご出身だということで、かなり親近感をもちまして、難しそうなご本を買って読みました

そしてその平川さんの幼馴染でよく対談などされているのが内田樹さん。名前はもちろん知っていたのですが、「思想家」とか「哲学者」とかいう肩書きの方の著作はきっと難しくて読めないだろうと思って敬遠していました。
でもそうかぁ下丸子出身なんだ~と、身近に感じてからちゃんと書かれたものを読むようになってみると、面白い!難しいけど面白い!



さて、この本『サル化する世界』
内田さんはいろんなところに頼まれて文章を書いていらっしゃるようで、この本もそういう色んな所で書いたり話したりしたことを再録したもののようです。なので話題はあっち行ったりこっち行ったり、本としての一貫性はないのですが、それでも現代の私たちの問題を語っているという点は共通しています。

非常に興味を惹かれたのが「比較敗戦論」。第二次世界対戦の敗戦国各国の「敗戦の受容」について比較考察した文章です。もちろん日本は敗戦国ですが私から見ても敗戦の受容は健全な形ではないと思います。「敗戦」より「終戦」という言葉を使いたがるとかもその一例かな。
他の敗戦国はどのようにして敗戦を受容したのかという視点で語られています。戦勝国と敗戦国という規定も厳密には難しいもので、第二次大戦のような複雑な戦争、また一つの国でもその戦争の途中で政府が転覆して内戦になってしまったりすると、そもそも勝ったのか負けたのかということがはっきりしない場合があるようですね。

フランスは戦勝国だと思っていましたが(常任理事国にも入ってますしね)でも実はフランスは第二次世界大戦中はドイツに占領され協力した親独政府が政権を握っており本当の意味では敗戦国らしい。
逆にイタリアについては「日独伊三国同盟」の印象が大きいので、何の疑いもなく敗戦国だと思っていましたけれども、実はイタリアは第二次世界大戦中に内戦が起こりムッソリーニを失脚させレジスタンス側の政府になっており、(1945年7月にはイタリアは日本に宣戦布告したらしい)実は戦勝国なのだということも知りました。

敗戦をどのように受容したかによってその後の国民の心の問題にかなり影響を与えるということが、こういう比較研究をすることによってわかる部分があります。私の中の問題意識にも通じるので、ここ少し掘り下げたいな。


そのほかにも「結婚は生活防衛~リスクヘッジ」だという話。
教育が消費されるようになっている。一番教育効果を上げるのは実は「成績をつけないこと」なのではないか?という提言など、考えるヒントがたくさん詰まっていました。




YOKOの好きなもの羅列

(順不同)地図、河岸段丘、保存樹木、宮本常一、縄文時代と日本の古代、文明開化と江戸時代、地方語、水曜どうでしょう、シャーロック・ホームズ、SHERLOCK(BBC)、陳昇、John Mellencamp、Kate Bush、イ・スンファン、カンサネ、1997年以前の香港映画、B級コメディー映画、SNL、The Blues Brothers、台湾、旅行の計画、イタリア、エステ、宮部みゆき、ショスタコーヴィチの交響曲5番、森川久美、のだめカンタービレ、くまモン
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