トシの読書日記

読書備忘録

23才女子の恋愛観

2016-04-15 15:39:18 | あ行の作家



朝倉かすみ「恋に焦がれて吉田の上京」読了



本書は新潮社より平成27年に発刊されたものです。


かつて「肝、焼ける」や「ほかに誰がいる」でこの作家、すごい!と思わせた朝倉かすみでしたが、最近はこんなの書いてるんですね。語るに落ちたとはこのことです。姉も「田村はまだか」でこの作家にはまって以来、ずっと追っているようですが、いいかげん目を覚ましてほしいもんです。文章はそこそこ上手いんですがね。本書はその姉が貸してくれたものです。


北海道に住む23才、処女の吉田苑美(そのみ)が仕事の関係で知り合った41才の男に惚れ、その男になんとか近づこうとするのだが、男の会社が倒産、彼は東京へ行くことになる。なんと吉田はその後を追うんですね。


で、舞台は東京に移るんですが、全体に20代の女性に「わかるーそれー」みたいな共感を得ようとする策略満載で、アラカンのおじさんとしてはげんなりしてしまいました。


読まなくてもよかったです。残念。

事象の本質とイデア

2016-04-15 14:52:47 | た行の作家



筒井康隆「モナドの領域」読了



腰巻の「わが最高傑作にして、おそらくは最後の長編」という惹句にころりとまいって買ってしまいました。

本書は平成27年に新潮社より発刊されたものです。


一読、難しすぎです!こんな事を言っちゃあなんですが、筒井康隆が本書の主人公、「GOD」に言わせていることを本当に理解して書いているのか、いささか疑問です。色々な参考文献を読み飛ばして分かったような気になって書いているんじゃないの?という意地悪な思いがわき上がってきてしまいます。


宇宙は一つではなく、いろいろな世界があり、それがパラレルワールドという言葉で言い表されていたりするんですが、パラレルではなく、世界と世界が一部かぶさっているものもあると。その境目にほころびが生じてしまったために「GOD」が美大の教授、「結野楯夫」の肉体を借りてこの世界に表れたと。


この先未来に起こることは全て「GOD」が決定している、それが「モナド」というものなんだそうです。「GOD」は大勢の人が集まった公園でそのモナドのことをしゃべり、「GOD」を利用して金儲けを企んで近づいてきた男をちょっとした技ではじき飛ばし、脳挫傷にさせる。



「GOD」は逮捕され裁判になるのだが、ここでこの世界のこと、宇宙の始まりのこと等を語り、それが日本中に広まり、ついにはテレビで特番を組むことになる。そして数人の有識者による質問の形式で番組が始まるのだが、ここでも「GOD」は自分の存在について、宗教について、地球の未来について語る。


ここの裁判の場面とTV番組の場面で語られる「GOD」の言葉がこの小説のハイライトだと思うんですが、自分としてはちんぷんかんぷんとまでは言わないまでもなかなか理解することは難しかったです。

「エイドス」「エッセンティア」「モナド」等の哲学用語(?)を駆使して語る「GOD」の言葉は、本当に筒井康隆の血肉化した言葉なのか、どうなのか、それによってこの作品の価値は決まると思います。


今まで数多くの筒井作品を読んできて、その前衛的な姿勢に共感してきたのですが、本作品に限っては首をかしげざるを得ません。

その後の京産大玄武組

2016-04-15 14:36:19 | ま行の作家


万城目学「ホルモー六景」読了



本書は平成22年に角川文庫より発刊されたものです。

何年も前に何気なく手に取って読んだ「鴨川ホルモー」がめっぽう面白く、いっぺんに万城目学のファンになってしまい、その後「鹿男あをによし」「プリンセス・トヨトミ」「偉大なる、しゅらぼぼん」と、すっかり万城目ワールドの魅力にはまってしまったわけです。ちなみに、自分はこういったエンタメはまず読まないんですが、何故か万城目学だけは読んでしまうんですね。


本書はその万城目学のデビュー作「鴨川ホルモー」に登場する主な人物のその後、またその脇役を中心に据えたサイドストーリー等、オムニバスの形式で6話にまとめた作品であります。相変わらずの筆の冴えで、充分楽しませてもらいました。


まぁエンタメ小説なんで、レビューはこんなところで。