とっくに芽出てなきゃならんのに、種まきから1週間経っても顔見せない!イネだよイネ。いっくら寒い日続きったって、こんな遅れるなんて、うーん、異常事態発生間違いなし!これまでも発芽が遅れることもあったが、ここまでの発芽不良は、あり得んぞ!
かすかに顔出した新芽も、どうにか生き延びましたぜ、って自信なげのか細さだ。焦る気持ちを抑えつつ、明日まで待ってみよう、さらにもう一日。きっと明日は出てくるだろう、天気も回復してきたことだし。
不安を無理やり押しつぶして待つこと3日!覆っていたワリフを剥ぐ。おおーーっ!ヤ、ヤバいぞ、どうに顔を出した新芽が、ワリフの網目に挟まってどんどん抜けてくる。根がほとんど張ってない!発芽しないポットもほじくり返してみると、まったく芽も根もでていない!・・・ダメだ!種が死んだんだ、間違いない。
かぁーーーーっ!何が原因だ?どうして種が腐った?
これほど大規模な種腐れとなりゃ、原因は床土しかない。
と、いうことは、ボカシの入れすぎ!がぁぁぁぁぁん!
今年こそと意気込んで作ったボカシだぜ。米ぬか過剰で発酵不良だった去年の反省を生かし、有機質肥料も奮発し、切り返しも4回以上行って、完璧に近いボカシを作った、つもりなのに。
そうか!この有機質肥料が効きすぎたんだぜ。例年になく窒素肥効の高いボカシになってたんだ。なのに、畑土との混合割合は去年と同等!窒素過剰、肉特特特盛のごはん極少、の牛丼!そりゃ体に悪いわ!消化不良になるわ!ポットの土の臭い、完全にヘドロだもの。窒素分が多くなった分、配合比率を下げにゃならんかったんだ。うん、もう!遅いぜ、気付くのが。
どうしよう?
空回り気味に、いろんな選択肢が頭を駆け回る。このままか細い発芽苗の生育を祈る。それ、昭恵じゃん、祈りでコロナにも発芽不良にも打ち勝てない。ならば、今年の米つくりをきっぱり断念する。ダメダメダメ!もっとあり得ない。家族や親戚の食い扶持、どうするってんだ!って以上に、イネの植わっていない田んぼなんて、そんな無様にゃ耐えられない!知り合いから苗を分けてもらう。それも許されない。我が家の育苗は4軒分の米つくり支えてるんだし、小学校の学校田の分も引き受けてるんだ。責任ってもんがあんだろ。
と、なりゃ、やることは決まってる!
そうさ、種を播き直す!これしかない。10日遅れになるが、今すぐ播けば、辛うじて5月中に田植えが可能だ。同じ集落の米つくり名人は6月田植えで見事な田んぼを作ってる。彼と違ってこっちは天日乾燥だっていう弱点はあるが、そこはもう夏、秋の好天に望みを繋ごう。
播き直しは決断した。次はその方法だ。播種機械を再度借りて全面的にやり直すにゃ種も不足、掛土も足りない。借用費用も馬鹿にならん。手播きじゃ、手播き、それしかない。
どうにか育ちそうな株はそのまま使うとしても、芽が出てないポットをそのままにはしておけない。そういう中途半端な苗箱、出ていないポットの掛土をほじくり返して、種を播く、って言うより、種を入れる。発芽は見られるものの、量も少なく元気がない箱は、ええい、思いきれ!全とっかえだぜぇぇぇぇ!
未練を断ち切り、後ろ髪を引きちぎり、ばんばん箱をひっくり返した。
新たにボカシ割合を1/4にした土を作り、種と掛土を横に侍らせ、さっ、がんがんやろうぜ!コシヒカリ70枚、ヒトメボレ50枚、それとモチも!合わせて130枚!すべて指先で種数粒を入れていく。
気の遠くなる作業。果たしていつまでかかる?そんなもん、やってみなけりゃわからん。ともかく、やるんだ!俺の米つくり人生最大にして、壮大なる無様な愚策!
確かなのは、ともかく最後までやり抜くぞ!って決意のみ。
つづく