ステージおきたま

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コントとランとご飯パンにうつつを抜かす老いの輝き

なんだってキャバレーなのさ?『クロスロード』まで5日

2016-07-27 08:25:38 | シニア演劇

 いよいよ追い込みだ。昨日から本番まで連日の稽古が続く。どこまで磨き上げられるか?メンバーの気合いも入ってきた。ともかく、何度でも繰り返し練習するしかない。それがシニア演劇とのお付き合いのコツだ。何度も何度も間違って、セリフに詰まって、動きを忘れて、また、そこ!?て憤懣は限りなく溜まっていくが、切れちゃいけない、諦めちゃいけない、あくまで穏やかにかつ冷徹にダメ出ししつつ繰り返す。

 一人2役、あるいは3役をこなす。しかも、キャバレーのホステスだったり老婆だったり。こんな七面倒くさい台本、よくも書いたもんだと思う。だいたい、なんでキャバレーなんだ?ホステスなんだ?ダンサーなんだ?

 まずはオープニングのダンスだ。第1回公演のリンダダンス以降、菜の花シニア恒例だからねぇ、こいつがなくっちゃ幕が上がらない、と勝手に思い込んでるわけ。売れ筋商品は大切にしなくっちゃ。シニア演劇学校の舞台じゃ芝居となんの脈絡もなくダンスで締めくくっても平気だけど、さすが劇団となるとねぇ、意味もなく踊るわけにゃいかない。踊る曲も、観客や団員の懐かしのヒットメロディで調子のいいものを探す。今回は「スィングスィングスィング」と「マンボNO5」。そこから連想ゲームで浮かんで来たのが、一時代前のキャバレー。ステージがあって、広いダンスフロアがあって、生バンドをバックにプロの踊り手が妖しげに踊る。エロもありだが露骨じゃない。今じゃスナックや風俗店に押されてすっかり寂れちまった形だけど、そこはかとなく懐かしい。そんなキャバレー盛衰を横糸にして、一人のキャバレーダンサーの一生をたどってみるのもいいかな、なんてね。

 団員たちに、これまで触れたこともない別世界を体験してもらおう、てのも理由の一つだ。芝居やるんだから、日ごろの自分とはかけ離れた人生過ごしてもらおうじゃないか。メンバー女性たちの職歴、教員、保母、看護婦、介護士、・・・お堅い人生歩んできた人たちばかりだから。着たこともない衣装まとって、ビール片手に客に体摺り寄せるなんて、それだけで心浮き立つてもんだろう。

 も一つ、秘密の動機。僕の幼年時の記憶だ。戦後の焼け跡からいびつに復興した渋谷。周囲は男と女の巷。キャバレーや料亭がひしめき、いかがわしくも活気あふれる世界だった。昼間やさしくしてくれた女性が、夜はけばけばしく着飾って男たちの腕に縋りついていた。色恋沙汰やら情痴事件の端々が耳をかすめたりもした。酒と小便と反吐の匂いが混じり合う裏道。よくはわからぬが、そんな場末の喧騒の中、女たちの幾つもの人生が交錯していたことだろう。数々のクロスロードに踏み迷ったことだろう。屈曲し挫折し頓挫した幾つもの人生、彼女たちに捧げるものがあってもいいんじゃないか。

 一つの作品世界が生まれるには様々な思いが行き合うものなんだ。でも、決め手は、キャバレー?面白そう!敷居高くてやり甲斐ありそう!だったら、作ってしまおうか?まっ、そんなところなんだよな。

コメント
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