泡 盛 日 記

演劇人(役者・演出家)丹下一の日記です。

荻原さんを偲ぶ会

2007-08-28 00:20:06 | 丹下一の泡盛日記
 荻原達子さんを偲ぶ会に行ってきた。5月に交通事故で亡くなられた。

 荻原さんは能楽プロデューサー。自分との接点は青山にある銕仙会能楽研修所。1983年に大学を卒業した後、お掃除会社で午前中バイトしながら、午後からは稽古。もちろん食べていけなかった。だから1日2食。
 そんなころ荻原さんが事務所の雑用係に雇ってくれた。週末の能楽堂は、能だけでなくなにかしらイベントが入っていて、場内整理をしたり後片付けをしたり。おかげでかなりの本数の能の上演に立ち会うことができた。

 荻原さんからは、若い世代も含む舞台人に対する大きな深い愛情を強く感じた。自分のような「小僧」にもきちんと応対してくださり、はじめて肯定される感覚を知った。渋谷のジァン・ジァンの舞台も観に来てくださり(もちろん自分のためではなかったろうが)、アドバイスをいただいた。

 あるとき、青山の通りを銕仙会の方向へ歩いていたら、道の反対側から手を振る人がいて荻原さんだった。こちらを覗き込むようにして、驚く自分の顔を確認すると、にっこり笑って手を振った。まるで大学の先輩の女子学生のようだった。
 千賀企画を辞めてからも劇場でお会いすることがあり、いつもの笑顔で近況を聞いてくれた。賀状や移転のお知らせなどには必ず一筆添えてあった。

 都内の会場には、能楽界のお歴々大集合。ものすごい顔ぶれのチームで「鷹姫」が居囃子で上演され、白石加代子さんが漱石の「夢十夜」を朗読した。どちらもすごかった。
 バイトしていたお掃除会社は、現在加代子さんの夫の深尾さん(旧早稲田小劇場で俳優・演出だった)が経営しているもの。深尾さんとも久しぶりにお会いし、長く話した。他にも様々な先輩がたと久しぶりに。

 帰宅途中、飲み屋に寄り一杯だけ静かに飲み、偲ぶ会事務局が配布してくれた冊子を読む。荻原さん、本当にありがとうございました。お疲れ様でした。
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