神奈川県の「水環境保全条例」
神奈川県では、良質な水を安定的に確保するため平成17年に策定した20年間の取り組み全体を示す「かながわ水源環境保全・再生施策大綱」を策定し、この大綱により5年間に取り組む「実行5か年計画」を策定。その取り組みのため、平成19年度から「水源環境保全税」を導入しました。
そして、平成24年度以降も事業の必要性から第2期5か年計画を策定し税を5年間延長し対策を行っています。
この背景には、神奈川県の水資源の多くは相模川水系の上流に位置する山梨県の相模ダムや宮ケ瀬ダム等の開発に依拠(約8割)しており、流域全体の環境保全を図るために、県境を越えて取り組む使命があったからです。
税額は第1期と同じで、県民一人当たり300円+所得割4%で、納税者一人当たりの平均負担額は890円で、この県税収入は年間約39億円となっています。
この税を使った取り組みは、まず「森林の保全・再生」では、森林整備による間伐材については搬出支援等を行うことにより、私有林からの搬出量が着実に増加し、間伐の促進が図られ、「かながわ森林塾」を開校し担い手の育成を行った。
平成24年度からは、シカの採食による整備効果の低減に対処するため、シカ管理と連携した森林整備を実施するとともに、新規就労者育成目標の設定や間伐材の搬出量のさらなる増加に取り組むとしている。
自然林については、土壌流出防止対策工法や植生保護柵等の設置に取り組み、県民との協働による登山道の補修活動等をおこなった。
平成24年度からは、シカ対策を行うとともに、土砂流出対策や登山道整備に加え、山のごみ対策、環境配慮型トイレへの転換などに取り組むとしている。
「河川の保全・再生」では、市町村が計画的に実施する生態系に配慮した河川・水路等の整備や浄化対策に取り組んだ。
平成24年度からは、生活排水対策(合併浄化槽への転換促進)や相模湖の浄化対策を継続するとしている。
「水源環境への負荷軽減」では、県内ダム集水域での公共下水道整備や高度処理型合併処理浄化槽整備を行う市町村への支援を実施し、ダム湖への生活排水の流入抑制を図った。
「県外上流域対策の推進」では、神奈川県の主要な水源河川である相模川と酒匂川の上流は、それぞれ山梨県と静岡県であることから、流域全体の環境保全を図るためには県境を越えて上流域対策に取り組む必要があることから、相模湖などのダム集水域の大半は山梨県内にあることから、山梨県と協議を行い「相模川水系流域環境共同調査」を実施し、この結果を踏まえ両県が共同山梨県内の相模川上流における森林整備及び生活排水対策に係わる基本合意書を取り交わした。
この合意書により神奈川県が山梨県に支出する金額は平成24年度2千7百万円とのことでした。
今回の調査で思ったことは、神奈川県で全国で唯一所得割での「水環境保全条例」が導入され、24年度からの継続が行われましたが、大都市であるが故に、県民が税が徴収されていることや、その目的をどれだけ理解されておられるのか。
また、人口が約900万人と多く、「水環境保全税」による収入が年間39億円となり、当然行う事業量も多いため他県に先駆けて対策が推進されるため、格差が生じること。
そのことと比較し本県の「森林づくり県民税」の収入は約6億7千万円であり、それ故に神奈川県のような幅広い事業が出来ないこと。
水資源がとぼしい神奈川県の水源地である山梨県での水源を維持・発展させめため協定書を締結し、神奈川県がその目的のため税金を投入する取り組みは、水資源・電力資源等の観点から、今後本県でも検討する必要があると思いました。
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