たかはしけいのにっき

理系研究者の日記。

今年読んで印象的だった本2019

2019-12-28 01:34:22 | Weblog
 3年ぶりなんですが、このシリーズ簡単にやっておこうと思います。
 Twitterで書いた内容と同じです(少しだけ書き足しています)。そのまとめです。今年はなんとなくフェミ系を考えていたんだなぁという6つです。今年どれくらい本を読んだか、詳細な数は覚えていませんが、たぶん45-55くらいかと思います。これは読破した数で、パラパラめくった数はもう少しありますが。(といういつもの退屈なエクスキューズはこれくらいにしておこう)

 ①「幼年期の終り」アーサー・C・クラーク著
 古典的な有名SFですが、すごく構造がしっかりしているなぁと思いました。冷戦時代、地球上の有名都市の上空に謎の船団が現れるところからスタートする小説で、人類の幼年期の終わりまでを描く。徐々に地球支配してきたオーバーロードの役割が明らかになる。
 1950年代にどのような未来が予想されていたか?を考慮しながら読むと面白いと思うし、地球人類の使命を想像したという点も面白いと思う。ただ、やっぱりこの世界観をすんなりと入っていけるかと言ったら話は別で、ある種の読みにくさはあるかなぁと思う。

 ②「絶叫」葉真中顕著
 ごく普通の女性が、無難な選択をしただけなのに、どんどん生活が成り立たなくなり、最終的に殺人事件を起こすという話。これはその辺の新書に書かれている4冊分くらいの現代社会の問題点(戦後すぐの家父長制のモデルの問題点、労働問題(契約社員・個人事業主など)、生活保護の問題点、性風俗産業の問題点など)をきちんと示していると思う。けっこうきついテーマですが、ハッピーエンドです。その後彼女がどうなったかも、作中にきちんと書かれています(そう思えない人は読めてないので再読したらええ)。かなり長いけど、まったく飽きないで、本に触れたい時間を自然と増やしながら読むことができました。

 ③「物語のおわり」湊かなえ著
 作中内に出てくる途中で終わっている小説を、北海道に旅行に訪れた人たちの間で、次々に手渡されていき、それぞれ物語の終わりを迎えるという話。最終的に、この小説のモデルにも手渡され、本当の終わりを迎える。バラバラかに見えて、きちんと一本繋がってる話で、面白かった。
 湊かなえはイヤミスの女王と呼ばれていますが、この作品はそんなにイヤーな感じはなかったです。ほんと、この人が書く小説は、立体視点が得意だなぁと思います。

 ④「モテない女は罪である」山田玲司著
 これだけ漫画で、1巻完結です。「女はこの恋愛指南書だけ読んでればええ」って思えるくらい内容が精緻でした。タイトルは衝撃的ですが、”モテなさいよ”という意味ではなく、”モテないとまるで罪人みたいなのはどうなの?”という意味です。男が読むと「そりゃそうじゃん」ということばかり。「男にとって、女は、怖いかめんどくさいか、だ」というのはものすごく名言で、よくよく考察してこの一冊を書いたんだろうなぁということがわかります。
 こちらで途中まで読めます。

 ⑤「お孵り」滝川さり著
 "生まれ変わり"の村で起きる惨劇を描いた作品。これはホラーものってなってるけど、俺は「いかに人は縋りたくなってしまうか」って点をとても上手に書いていると思いました。信仰心そのものが「奇跡」を産んでしまう、という表現も秀逸で、「こんなのありえねーじゃん」で本を閉じてしまうともったいない。
 生まれ変わり研究の第一人者イアン・スティーヴンソンは実在の人物だし、バージニア大学医学部では専用のサイトまであって、割と真面目に研究していますので、あながち起こりえないことではないかも?

 ⑥「女性活躍に翻弄される人々」奥田祥子著
 色々な女性が出てきて、この奥田さんとインタビュー形式で話をするのですが、この著者が本当はどう思ってるんだろうか?ということを考えながら読むと、とても面白いです。システムの問題ではなく、お前がクズ女だからだろ、という人が何人か出てきます笑。
 あらゆるシステムが、現場の空気感とマッチしていないことが原因で不幸に見舞われる人も多いのではないか?と思わせるようなインタビューも多く、やはり一つの性別だけ取り出して「活躍だ!」というのが、冷静に考えて無理があるんじゃないかなぁと思わせる内容でした。

 っというわけで、ぜひみなさんも読んでみてね。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする