柴崎友香「待ち遠しい」(毎日文庫)を読む。
年齢も出自も異なる3人の女性が
織り成す微妙な繋がり。その微妙さを
徹底的に味わう397ページだったという。
主人公の春子は39歳。
デザイン会社に勤め一人暮らしをしている女性だ。
彼女がいつのまにか、アパートの大家で、
同じ敷地内の母屋に住むゆかり(63歳)や、
そのゆかりの甥っ子の妻である
沙希(25歳)と交流し、親しくなっていく。
家族でもなければ、友人でもない。おまけに世代も異なる3人が
ひとつ屋根の下でお茶を飲んだり、ご飯を食べたり、
ついには温泉旅行に行ったりするのだけど、
親密になるかと思えば、意思の疎通がはかれず
不協和音が響いたりして、なんとも微妙な関係。
読者は彼女たちの言動を読み取りながら、
想像を膨らますことになる。
こういうのが小説を読む醍醐味なのかな、と。
とはいえ、読み進めていくうちに
浮かび上がってくるのは、
世代を超えた、女性としての生きづらさだ。
春子は未婚であることを、母親や会社の上司から
嫌味のようなことを言われ続け、
ゆかりは実の娘から絶縁されていることから
母親としての資質に自責の念がある。
結婚は女の幸せだといわんばかりの沙希は、
春子が結婚していないことを責める。
親に育ててもらったのに、
なぜ子供を産もうとしないのかと。
春子と会社の上司との会話が印象的だ。
「男はつらいのよ。いろいろ背負てるからなあ。その点、女の人は仕事でも主婦でも選べて、自由で羨ましいわ。ここら辺の店でも楽しそうにしている女の人でいっぱいやんか」
「……それは、なんとかがんばって楽しみを見つけてる、ってだけのことやと思うんですけど」
「そうそう、女の人はええね。生きるのがうまいから」
殺(と)ったらんかい!
そう思う読者は多いことだろう。
淡々とした描写のなか、感情が沸点に達する瞬間がある。
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