ハン・ガン「すべての、白いものたちの」
(河出文庫)を読む。
原題は「흰」。「白い」という形容詞らしい。
白に覆われた、あるいは白になっていくものたちへの
思いが綴られる。本にも余白があって、白い。
著者には姉がいて、母から産まれた直後に息を引き取る。
今は亡き姉に語りかけながら、
ナチスドイツに壊滅させられたワルシャワと
朝鮮半島の地についての思いが語られる。
雪や氷、みぞれ。
崩壊したワルシャワの街
赤ん坊をつつむ「おくるみ」などが
すべて白のイメージで包まれていく。
これは何だろう。
鎮魂か。それとも平和への希求か。あるいは人生の悔恨か。
でも、そういった言葉では表せないものというか。
ただ無心に読み、白のイメージがもたらす静寂と
うっすらと漂ってくる悲しみに浸るのがよさそうだ。