Days of taco

やさぐれ&ヘタレtacoの日常と非日常

アジフライ綺譚

2016年04月11日 | 呑んだり喰ったり

むしゃむしゃ。

ばくぱく。ずるる。

 

そこそこ広い空間に、咀嚼する音が怪しく響く。

男たちはみな暗い目をして、ただひたすら

目の前のモノを胃の中に入れていく。

そこには「希望」や「夢」といった概念は存在しない。

生きていくために。ただそれだけのために、男たちは無言で食べ続ける。

 

ここは仕事場近くにある、

日替わりランチを500円で提供するという、

やさぐれた男どもが殺到する居酒屋である。

しかもご飯と味噌汁、卵や海苔がお代わりし放題。

「放題」がまかり通る状況のため、ここはまさに桃源郷だと

思いながら食している男たちもいるようだ。

 

「あれ? tacoさんじゃないですか?」

 

え? 誰?

と思って、声のする方を向いたら、

いつも通っている整体院のT先生だった。

 

「偶然ですね~ここはよく来るんですか?」

 

いや。実はすごく久し振りなんです。

2年ぶりぐらいですかね。と大ウソをつく。

 

「ああ~そうなんですか~いや~つい来ちゃうんですよね」

 

とAランチ(ブリの照り焼き)を食しながら話すT先生。

自分はといえば、Bランチ(アジフライ)をぱくついていたところを

まともに見られたことに動揺し、しばし言葉が出ず。

しかし、この空間にいる者はみんな同じではないか。

食いつめ者たちが、500円で至福を味わおうとしているだけなのだ。

 

taco  「N区役所の2階にある食堂が安くていいですよ~」

T先生 「そうなんですか。何が安いんですか?」

taco  「カレーがお得ですよ~特に水曜日は大盛りサービスで420円!」

T先生 「おお。それは行かないと」

taco  「それがただの大盛りじゃなくて」

T先生 「そうなんですか~うひょひょひょ」

 

T先生のキャラが変わった。

そう思ったけれど、口にするのはやめて、

アジフライを食すのに専念する。小さいなこのアジフライ。

 

 

コメント
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