奥山大史監督「ぼくのお日さま」を見る。
今年の2月にハンバートハンバートのライブに行ったとき、
この映画の音楽と主題歌を担当しているという
アナウンスがあって、へえそうなんだ、
公開されたらまあ見ようかなと。
そんな割と軽い気持ちでいて、実際見たら、
いやはや、これは傑作だと感じ入ってしまったという。
場所は特定されないが、
どこかの北国が舞台で冬は雪が降り積もる街。
冬のあいだホッケーのチームで練習していた
小学生のタクヤは、リンクで華麗な舞をしていた
中学生のさくらの姿に憧れ、池松くん演じる
荒川コーチの指導のもと、ペアでアイスダンスの練習を始める。
自然光だけで映し出されたスケートリンクに、
ガリガリッ、ザザッというスケート靴の音が鳴り響く。
だんだん上達していくタクヤをさくらが受ける形で、
ふたりして見事な滑りを見せるショットの美しさ。
それを見守るコーチのあたたかな目。三人揃って
カップ麺をすする場面が挿入される小気味良さ。
ゾンビーズの「Going Out of My Head」が流れるなか、
氷の張った池で戯れる三人の様子などは、
なんだかとても懐かしい光景というか。
ずっといつまでも見ていたいと思わせるほどだ。
しかし、あたたかなトーンはいつまでも続かず、
ちょっとした誤解というか思い込みが
三人のあいだに亀裂が入り、切なさが募る結末となるわけで。
それまで雪と氷ばかりのなか、あたたかな感じがあったのだけど、
急に冷たさが募り、自然光でキレイだなと思っていた画面が
暗く陰鬱な感じをまとっていく。
それはそうとして、あのときのタクヤとさくらは
とっても輝いていたよね。それはホントだよね。
それでいいんじゃないの。と諦観とともに納得する。
タクヤには吃音があり、
自分の言いたいことがなかなか口に出せない。
最後の最後にそれは吃音なの、それとも
ほんとに口に出せない何かがあるの?
と問いかけたくなるエンディング。
なんともお見事であり、作り手の「どう?いい終わり方だよね」という
意識を強く感じたりもするけれど、傑作であることには変わりはない。
で、ハンバートハンバートの主題歌も滲みたわけで、
エンドロールのデザインも素晴らしい。
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