スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

王将戦&相反する感情

2007-12-10 20:56:21 | 将棋
 王将戦挑戦者決定リーグ戦最終局一斉対局。昨日の予告通り,ここでは深浦康市王位と久保利明八段の一戦を紹介することにします。ここまで深浦王位が12勝,久保八段が9勝。
 ここは久保八段の先手で中飛車。急戦と持久戦を巡っての駆け引きの末,36手目の☖1二香をみて先手が☗4五歩と開戦。後手は☖8六歩と応戦し,以下,継ぎ歩から46手目の☖8七歩成でと金を製造。これが間に合っているのかが一局の成否を握っているといえそうです。
 先手は盤の右側で総攻撃。先手玉が手付かずで後手陣はばらばらなので,先手が勝ちやすそうに思えますが,63手目☗4四歩の局面で佐藤紳哉六段と千葉五段の判断は後手よし。ただ66手目☖4二角の局面では阿久津六段が先手もちとの見解ですので,難しいのでしょう。
 観戦は67手目の☗5四歩の局面から。ここで☖5六歩。☗4五歩と攻め合うのはさすがに無理でしょうから☗4六角。72手目に☖8一飛と引いて,なるほど後手も指せるような気がしました。
 77手目の☗5三歩成は軽妙な感じ。☖同角に☗5二銀成ではなく☗5二金。82手目に☖2六角と逃げましたが,☖5四金のように受けると,角を取って☗5五角と打つのでしょうか。しかし実戦は銀が取れたので,87手目に☗6八飛と回って先手が指せるように思いました。しかし千葉五段の見解では後手が余せるのだそうです。
 ここで☖6六銀は質駒を打つようなもので恐い感じですが飛車を成らせるわけにもいきません。ただ90手目に☖7七ととしたために☗4五銀と打たれて後手玉はきわめて危険になりました。☖7六との方がよかったかもしれません。
 ここから☖4七歩成☗同金☖3七角成としましたが☗同金で先手の勝勢となったようです。同じことなら94手目にすぐに☗3七角成の方が,先手が☗2六歩と打つ一歩がない分よかったかもしれません。
 この後は先手がうまく寄せきって後手が投了。久保八段はリーグ成績を5勝1敗として羽生善治王将への挑戦を決めました。結果的に,順位上位の佐藤二冠と森内名人が勝ちましたので,負ければプレーオフにも進出できなかったところで大きな1勝。王座戦では3連敗しましたが,熱戦の連続でしたので,楽しみなシリーズになりそうです。
 手について何かあればまた()の中に追記します。

 それでは第四部定義五の,相反する感情について,もう少し詳しく考えてみることにします。相反する感情は,ある特定の人間のうちにある感情affectusを意味するので,このことは大前提になります。そこでこの特定の人間を,ここではAと仮定します。
 AのうちにXに対する愛amorとXに対する憎しみodiumがある場合。これは明らかにAを異なった方向に引きずるふたつの感情であるといえます。したがってこれらは必ず相反する感情ということになります。また,愛と憎しみは反対感情でもあるので,これは心情の動揺animi fluctuatioの条件も満たしているといえると思います。
 同様にAのうちにXに対する希望spesと不安(恐怖)metusの両感情がある場合も,やはり相反する感情なのであって,また反対感情ですから心情の動揺が生じているといえると思います。ただし,希望と不安の場合には,愛と憎しみの場合とは少し異なった意味があります。これについては後で考えることにします。
 問題なのは,AのうちにXに対する愛とYに対する愛の両方がある場合です。この場合は,これらふたつの愛というのは,Aを異なる方向に引きずる場合もあるでしょうし,引きずらない場合というのもあるでしょう。別のいい方をすれば,Aのうちで,Xに対する愛とYに対する愛は,両立し得る場合もありますし,両立し得ない場合もあります。そこで両立し得る場合にはこれは相反する感情ではありませんが,もしも両立し得ないような場合には,相反する感情であるということになります。
 このように,反対感情というのは,たとえばXとYは反対感情である,あるいは反対感情ではないと必ず断言できるのに対し,相反する感情の場合には,必ずしも断言できない場合というがあるということになります。
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