映画「ジャスティス・リーグ」が公開されました。今回はその話。
※「ジャスティス・リーグ」のネタバレを含みます。
何度も繰り返していると思うけどまずはDCコミックとマーベルの話から。アメリカでいわゆるアメコミヒーローものと言われるコミックには大きく2つの流れがある。一つはDCコミックス(以下、DC)、もう一つはマーベル・コミック(以下、マーベル)。
DCとマーベルは日本で言えばジャンプとマガジンみたいなものでライバル。DCの人気キャラクターといえばスーパーマン、バットマン、ワンダーウーマン、マーベルの人気キャラと言えばスパイダーマン、キャプテン・アメリカ、X-メン。
DCは1969年に映画会社のワーナーに買収され、1990年代にバットマンの映画化でヒット。それを観ていたマーベルは2000年代にX-MEN、スパイダーマンの映画化でヒット。DCは2000年代後半にバットマン新3部作(俗にいうダークナイトトリロジー、というかつまりダークナイトだけど)が大ヒット。
ほんと何度かこの歴史の流れを説明しているけど改めて2008年というのはこの2大帝国にとって大きな年だったな、と思う。だってダークナイトとアイアンマンが公開された年ですよ。DCの特徴である「ダークな」「リアルな」世界観の絶頂である「ダークナイト」と、マーベルのアベンジャーズシリーズ、つまり「マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)」の1作目であるアイアンマン。これがねぇ、同じ年に公開されているんだものね。
その後、マーベルは2009年にディズニーに買収され、2012年にはMCUのひとつの集大成である「アベンジャーズ」が大ヒット。同年DCはダークナイトトリロジーが「ダークナイト・ライジング」を持って完結。MCUのようなユニバース企画(単体でヒーロー映画を作って、それを大集結させる企画)のDC版「DC・エクステンデッド・ユニバース(DCEU)」を始めることになる。
その第一弾が新たなスーパーマン映画「マン・オブ・スティール(以下、MOS)」、これがDCにとっての新たなドル箱シリーズになる予定だった。
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これがねぇ、、コケちゃったわけですな。制作費225億ドルに対して興行収入668億ドル。今のハリウッド映画だと制作費の3倍稼げてやっとトントンなので制作費対比興行収入297%は大コケとまで言わずともコケたレベル。同じ「ユニバース1作目」ということでいえばアイアンマン1は制作費の4倍稼いでいる、せめてここくらいは行きたかっただろう。
弱ったDCは次にバットマンとワンダーウーマンを持ってきた。スーパーマン、バットマン、ワンダーウーマン3役揃い踏みの「バットマンVSスーパーマン/ジャスティスの誕生」(以下、BvS)を公開。
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これが制作費の3.5倍の興収。それでもまだ足りない。ライバルの「アベンジャーズ1」なんて制作費の6.9倍の興収なんだから。やっぱね、BvSはMOSの流れを組んで全体的に暗い。画面が暗いってのもあるし、話も暗い。バットマンもスーパーマンもどうも暗い。これはやっぱりさー、大人も子供も大喜びっていう映画にはなりづらいよね。
続くDCコミックスに出てくる悪役だけを集めた「スーサイド・スクワッド」は制作費の4.26倍というなかなかのヒット。
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とはいえこのシリーズは悪役シリーズではなくヒーローシリーズなわけでスーパーマンとバットマンの話がしっかりしてきゃどうにもならない。どうすんべかーと思っていたらいるがな、ワンダーウーマン!となって映画「ワンダーウーマン」が大大大ヒット!制作費の5.47倍を稼ぎ、なんとダークナイト超え!
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さーこりゃバットマン、ワンダーウーマンに加えて新キャラも出る「ジャスティス・リーグ」が楽しみだわい、というのがこの夏の出来事でした。
【以下、ジャスティス・リーグのネタバレを含みます】
-------------------------------------------------
はい、観てきました。まぁとにかくバットマンが出るっていうしそれがベン・アフレックだし、それに何よりワンダーウーマンが出るって言うんで楽しみにしていきましたよ。
結論。
いや、もっと悪くなる可能性だってあった!持ち直したほうだって!良いシーンはあった。悪くない!
というのが率直なところだなー。。
冒頭10分ぐらいはかなりゾクゾク来ていた。ダイアナ、つまりワンダーウーマンの美しさと強さ。もうね、映画「ワンダーウーマン」から続いている感じでとってよかった。「ワンダーウーマン」の舞台が第一次世界大戦だったから、舞台が現代に移って「ああ、また会えた!」ともうそれだけで涙モノです。
このワンダーウーマンの女優さんの表情がとても良いなと思うのは、「ワンダーウーマン」の「ノーマンズランド」でもそうだったんだけど、「あ、この人、いまこの瞬間に怒ったんだな」と誰しもが分かる表情。この表情にゾクッと来ます。起こったからと言って叫ぶでもなく、ダイアナはむしろ無口になり無表情になる。彼女の眼力も手伝って、どこか神々しい美しさに見える。
あと自分でも意外に感じるくらいゾクゾクっと来たのがフラッシュが人を助けるシーン。助けた少女に一言だけ声をかけてすぐに立ち去る。少女の髪が風で揺れる、、なんだか知らないけどこういうのはグッときた。つまりさ、ヒーローの本質というのは敵を倒すってこともあるんだけど、それと同じくらい、いや、それ以上にヒーローの仕事なのは「人を助ける」ってことだよね。感謝されようがされまいが、とにかく市井の人を救う、それこそがヒーローの仕事だ、ということだろう。
それ以外にいくつか、まぁ良いシーンはあったけども全体としては。。うむー。大傑作だ!とは言い難い。
この作品を救ったのは、一人はジョス・ウェドンだろう。マーベルのアベンジャーズ1と2の監督。「なんで?」と思われるかも知れないけど少し説明します。
ジョス・ウェドンは最近、DCと「バットガール」の映画化に向けて話し合いをしていたらしい、その流れで「ジャスティス・リーグ」の脚本にも関わっていた。そんな時「ジャスティス・リーグ」を進めている監督のザック・スナイダーが私的な理由で仕事を続けられなくなった。(娘さんが亡くなられたらしい、痛ましいことだ。。)ということで「ジャスティス・リーグ」の監督と編集作業をジョス・ウェドンが引き継いだ。
いや、ほんと良い奴だなージョス、と思うのね。ジョス・ウェドンお得意の軽い会話ギャグなんかが今までのDCEUに一番足りなかったものだろうね。もしジョス・ウェドンが関わってなかったら、もしかしたら「ジャスティス・リーグ」はMOSとBvSをもっともっと暗くした、救いようの無い映画になっていたかもしれない。もちろんそういう映画すべてが悪いわけじゃなくて、例えばザック・スナイダーが監督した「ウォッチメン」なんかは僕は良かったと思う。だけどさ、重苦しいものが続くとねー、「いやぁもう流石にもう頭空っぽにして楽しめる楽しい映画が観たいよ」と思ってしまう。
DCEUはMOSからずっと「いや、次こそ本番、いや、次こそ」と思わされ続けてきたように思う。「ジャスティス・リーグ」も決して悪い作品じゃない。だけど観終わったあとにあるのは「ま、次が勝負だな、、」という感じなんだよね。比べたら申し訳ないけど「アベンジャーズ1」はそうじゃなかった。観終わって「あー、今までのそれぞれの単独作品はこのためにあったんだなー」と一つの「完結」を観た気がする。もちろん完結な訳はなくてそれからもユニバースは続くんだけど。それでも「中締め」感はあった。一方、「ジャスティス・リーグ」は、、というと。申し訳ないけど「うん、これでまぁリセットされて次が勝負だな」という印象。そりゃ「次は観ないな」と思われるよりはいいけどね。
まぁとにかくDCEUは続く。Life goes on.
※「ジャスティス・リーグ」のネタバレを含みます。
何度も繰り返していると思うけどまずはDCコミックとマーベルの話から。アメリカでいわゆるアメコミヒーローものと言われるコミックには大きく2つの流れがある。一つはDCコミックス(以下、DC)、もう一つはマーベル・コミック(以下、マーベル)。
DCとマーベルは日本で言えばジャンプとマガジンみたいなものでライバル。DCの人気キャラクターといえばスーパーマン、バットマン、ワンダーウーマン、マーベルの人気キャラと言えばスパイダーマン、キャプテン・アメリカ、X-メン。
DCは1969年に映画会社のワーナーに買収され、1990年代にバットマンの映画化でヒット。それを観ていたマーベルは2000年代にX-MEN、スパイダーマンの映画化でヒット。DCは2000年代後半にバットマン新3部作(俗にいうダークナイトトリロジー、というかつまりダークナイトだけど)が大ヒット。
ほんと何度かこの歴史の流れを説明しているけど改めて2008年というのはこの2大帝国にとって大きな年だったな、と思う。だってダークナイトとアイアンマンが公開された年ですよ。DCの特徴である「ダークな」「リアルな」世界観の絶頂である「ダークナイト」と、マーベルのアベンジャーズシリーズ、つまり「マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)」の1作目であるアイアンマン。これがねぇ、同じ年に公開されているんだものね。
その後、マーベルは2009年にディズニーに買収され、2012年にはMCUのひとつの集大成である「アベンジャーズ」が大ヒット。同年DCはダークナイトトリロジーが「ダークナイト・ライジング」を持って完結。MCUのようなユニバース企画(単体でヒーロー映画を作って、それを大集結させる企画)のDC版「DC・エクステンデッド・ユニバース(DCEU)」を始めることになる。
その第一弾が新たなスーパーマン映画「マン・オブ・スティール(以下、MOS)」、これがDCにとっての新たなドル箱シリーズになる予定だった。
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これがねぇ、、コケちゃったわけですな。制作費225億ドルに対して興行収入668億ドル。今のハリウッド映画だと制作費の3倍稼げてやっとトントンなので制作費対比興行収入297%は大コケとまで言わずともコケたレベル。同じ「ユニバース1作目」ということでいえばアイアンマン1は制作費の4倍稼いでいる、せめてここくらいは行きたかっただろう。
弱ったDCは次にバットマンとワンダーウーマンを持ってきた。スーパーマン、バットマン、ワンダーウーマン3役揃い踏みの「バットマンVSスーパーマン/ジャスティスの誕生」(以下、BvS)を公開。
バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生 アルティメット ・エディション ブルーレイセット(期間限定/2枚組) [Blu-ray]
これが制作費の3.5倍の興収。それでもまだ足りない。ライバルの「アベンジャーズ1」なんて制作費の6.9倍の興収なんだから。やっぱね、BvSはMOSの流れを組んで全体的に暗い。画面が暗いってのもあるし、話も暗い。バットマンもスーパーマンもどうも暗い。これはやっぱりさー、大人も子供も大喜びっていう映画にはなりづらいよね。
続くDCコミックスに出てくる悪役だけを集めた「スーサイド・スクワッド」は制作費の4.26倍というなかなかのヒット。
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とはいえこのシリーズは悪役シリーズではなくヒーローシリーズなわけでスーパーマンとバットマンの話がしっかりしてきゃどうにもならない。どうすんべかーと思っていたらいるがな、ワンダーウーマン!となって映画「ワンダーウーマン」が大大大ヒット!制作費の5.47倍を稼ぎ、なんとダークナイト超え!
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いや、もっと悪くなる可能性だってあった!持ち直したほうだって!良いシーンはあった。悪くない!
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冒頭10分ぐらいはかなりゾクゾク来ていた。ダイアナ、つまりワンダーウーマンの美しさと強さ。もうね、映画「ワンダーウーマン」から続いている感じでとってよかった。「ワンダーウーマン」の舞台が第一次世界大戦だったから、舞台が現代に移って「ああ、また会えた!」ともうそれだけで涙モノです。
このワンダーウーマンの女優さんの表情がとても良いなと思うのは、「ワンダーウーマン」の「ノーマンズランド」でもそうだったんだけど、「あ、この人、いまこの瞬間に怒ったんだな」と誰しもが分かる表情。この表情にゾクッと来ます。起こったからと言って叫ぶでもなく、ダイアナはむしろ無口になり無表情になる。彼女の眼力も手伝って、どこか神々しい美しさに見える。
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それ以外にいくつか、まぁ良いシーンはあったけども全体としては。。うむー。大傑作だ!とは言い難い。
この作品を救ったのは、一人はジョス・ウェドンだろう。マーベルのアベンジャーズ1と2の監督。「なんで?」と思われるかも知れないけど少し説明します。
ジョス・ウェドンは最近、DCと「バットガール」の映画化に向けて話し合いをしていたらしい、その流れで「ジャスティス・リーグ」の脚本にも関わっていた。そんな時「ジャスティス・リーグ」を進めている監督のザック・スナイダーが私的な理由で仕事を続けられなくなった。(娘さんが亡くなられたらしい、痛ましいことだ。。)ということで「ジャスティス・リーグ」の監督と編集作業をジョス・ウェドンが引き継いだ。
いや、ほんと良い奴だなージョス、と思うのね。ジョス・ウェドンお得意の軽い会話ギャグなんかが今までのDCEUに一番足りなかったものだろうね。もしジョス・ウェドンが関わってなかったら、もしかしたら「ジャスティス・リーグ」はMOSとBvSをもっともっと暗くした、救いようの無い映画になっていたかもしれない。もちろんそういう映画すべてが悪いわけじゃなくて、例えばザック・スナイダーが監督した「ウォッチメン」なんかは僕は良かったと思う。だけどさ、重苦しいものが続くとねー、「いやぁもう流石にもう頭空っぽにして楽しめる楽しい映画が観たいよ」と思ってしまう。
DCEUはMOSからずっと「いや、次こそ本番、いや、次こそ」と思わされ続けてきたように思う。「ジャスティス・リーグ」も決して悪い作品じゃない。だけど観終わったあとにあるのは「ま、次が勝負だな、、」という感じなんだよね。比べたら申し訳ないけど「アベンジャーズ1」はそうじゃなかった。観終わって「あー、今までのそれぞれの単独作品はこのためにあったんだなー」と一つの「完結」を観た気がする。もちろん完結な訳はなくてそれからもユニバースは続くんだけど。それでも「中締め」感はあった。一方、「ジャスティス・リーグ」は、、というと。申し訳ないけど「うん、これでまぁリセットされて次が勝負だな」という印象。そりゃ「次は観ないな」と思われるよりはいいけどね。
まぁとにかくDCEUは続く。Life goes on.