浅草文庫亭

"大哉心乎"
-大いなる哉、心や

寿町アカデミー賞2012

2012-12-31 13:25:40 | DVD、映画
今年もそろそろ、というかもう本当に終わりますね。

改めてすごい年だったなぁと思う。2011年もそりゃすごかったけど今年も負けず劣らずすごかった。

個人的にはずっと映画ばかり観ていたような気がする。映画館で映画を観て、DVDもばんばん借りた。何枚かはDVDを買った。常に「あー、そろそろあれ、公開かー」と新作映画のことを考えていた気がする。なんだかこんなに映画を楽しみにしてた年は記憶に無いなぁ。

個人的な意見としてはっきり言わせてもらうけど、2012年て「映画の当たり年」だと思うよ。バーンと大きくお金を使った映画も公開されたし、小さいけれどピシッとした映画も公開された。続編ものもアタリが多かったと思う。それぞれ見どころがあって楽しめた。

なにせバットマンの完結編とスパイダーマンの新作とアベンジャーズとアウトレイジの続編と007の新作が見られる年って改めてすごいと思うよ。

そのうえで洋画限定で話をするけど、なんとなく今年は前向きと言うか「希望がある映画」が多かった気がしてる。

「世の中は良くならないだろう、でも、、やるんだよ!俺が!俺たちが!」というメッセージを僕は強く感じた。

で、それはなんでかなぁと考えてみたんだけど、一つにはやっぱり「ブッシュ政権の終わりとオバマの登場」の影響があるんじゃないかと思う。

ちょっと考え過ぎじゃないかと思われるかも知れませんがまぁ聞いてください。

だいたい映画って企画されてから上映されるまでに2、3年はかかるよね。厳密に「シナリオが書き始められる」という一番最初のタイミングから、僕が観る「日本公開」までだと4年くらいはかかるんじゃないだろうか。つまり今年観た映画は4年前に生まれたと言っても大きくは外れていないと思う。4年前と言えばオバマが大統領になった頃。その頃の期待感が今年の映画に込められている、と考えるのは考え過ぎだろうか。

逆にオバマ政権誕生前、ブッシュ政権の頃に作られはじめた映画、つまり4年くらい前に公開された映画はどうだったのか、と考えてみる。

たとえば2007年に公開された「ノーカントリー」。アカデミー賞を取ったけどこれほど救いのない話も無かった。「ノーカントリー」の原題は「No country for old men」つまり「古い人に国は無い」。もちろんこれは「新しくいい国になった」ということではなくて作品中でひどい殺人鬼が出てきて不条理に人が死んで行くということからも「真っ当な考えを持った人、つまり古き良き人々が生きられる国はもう無い」と言う映画だった。

2008年の「グラントリノ」は、西部劇の魂、つまりアメリカの魂であるクリント・イースウッドが一度も銃を撃つことなく死ぬ。彼の車である名車グラントリノ、いわば「アメリカの輝き」はアジア人の少年に引き継がれる。引き継がれるだけ希望があるとは言えるかもしれないけど、引き継ぐ相手は白人では無いということは明確だった。アメリカではヒスパニック移民の人口が増えつつあり、何十年後かには白人の人口比は最大では無くなると予想されている。つまり白人が少数民族になる。

2008年といえば「ダークナイト」なわけだけど(すきあらばダークナイトの話をしようとするな) アメコミヒーロー物としてこんな暗い話も無い。正義を為そうとするヒーローが犯罪者として追われなければいけないんだから。

同じくアメコミ物の「ウォッチメン」のメッセージなんてもっとひどい。つまりあれは「人間なんてほっときゃ戦争するんだから自分たちが大災害起こさないとまとまんねーよ」ということだよね。(あれは原作が冷戦時代のものだというとこもあるけど)

それらの極北がブッシュ政権下、イラク戦争真っ最中に撮影され2009年に公開された「ハートロッカー」 だと言える。この映画の希望の無さったら無い。地雷の一つを掘り出したら無数の地雷が繋がってた、と言うシーンが示すように「アメリカはとんでもないところに手を出してしまった」というメッセージがあった。そして徹頭徹尾「このおかしな戦争は全部ブッシュのせいだ」というメッセージが込められていた。


それらに比べると今年の映画というのはずいぶん希望があったと感じる。

ダークナイト・ライジングでは結果的に世界は救われるしバットマンは称えられる(苦い称えられ方ではあるけども)、アベンジャーズはアメリカンヒーローが勢ぞろいで大活躍する。

アルゴもヒーローの話だった。事件自体はどうしようもないアメリカが起こした事件だけど一人の父親がヒーローになった。あと映画としては珍しくCIAが「影のいい役」を担っていたね。普通は逆の場合、つまり「明らかな悪い役」が多いのに。

映画でもなんでも「物語」というものは僕は二つのメッセージが含まれているものが多くの人に支持されるんじゃないかと思う。

一つは「俺もそう思っていたよ」というもの。もう一つは「そうあって欲しい」あるいは「そうあるべきだよな」というもの。

「俺もそう思っていたよ」というメッセージが無ければ観客に共感されないし、「そうあって欲しい」というメッセージが無ければ観客に愛されない。いわば「共感」と「希望」が含まれていないとその「物語」は支持されないんじゃないだろうか。

つまり今年の映画には「世界は劇的に良くはならない、むしろ悪化しているのかもしれない」というのが「共感」、一方で「そんな世界の中でもやるんだよ!やれば少しかもしれないけどこの世界を救うことが出来る」ということが「希望」だったんじゃないだろうか。


つーことで蛇足ながら個人的アカデミー賞を。

■最優秀キッチリ終わったで賞=ダークナイト・ライジング

いろいろ首をひねるところのある映画でしたが、とはいえビギンズで始まってダークナイトで最高潮に達した話をきちっと終わらせたというところはやっぱりすごいと思う。

■最優秀ドキドキしたで賞=アルゴ

面白かったねー。ばれるの?ばれないの?通れるの?通れないの?捕まるの?逃げられるの?と最後の30分くらいはずっとドキドキしっぱなし。すばらしいエンターテイメントでした。全体的なストーリーの渦が波のようにごわーんと動いているにも関わらずところどころで小さなよく出来たネタもあって気が利いているんだよなー。「やっと脱出できた―」と飛行機乗ってそこで終わりじゃなくてそのあとのアレで。。もう僕は観ててスタンディングオベーションしたくなりましたよ。

■最優秀スカッとしたで賞=エクスペンダブルズ2

脳みそのどの部分も使わなかった感じがしますね。こういうバカみたいな(褒めてます)映画が作られるというのも世界が決して悲惨ではないという証だと思う。それだけで世界にはまだまだ希望があるじゃないですか。

■最優秀イイ男賞=ジェームス・ボンド(スカイフォール)

イイ男でしたねー。鍛えられた肉体、任務は必ず遂行する、常にスーツ。かっこよかった。「ジェームス・ボンド」がセックスシンボルであった時代は既に過去だと思っていたけど改めてそうなるかも知れないと思ったよ。

■最優秀イイ女賞=キャットウーマン(ダークナイト・ライジング)

うん、良かった。キャットウーマンと言えば札幌でよね3と話してて。僕が「キャットウーマンがずっとバットポッド(バイク)に乗ってる映画とかあったら観たいですよねー」と言ったら「キャットウーマンの後ろをずっと追いかけるゲームがあったらやりたいわ」って言ってた。もうこの人にはかなわないですね、いつまで経っても。
それで「レ・ミゼラブル」でしょ。すごいなあ。

■最優秀いい夫婦で賞=テナルディエ夫妻(レ・ミゼラブル)

すいません、好きなんですよ。あの二人がいることで作品自体、ちょっと力が抜けてよくなったと思います。ヘレナ・ボナム・カーターはねー、僕が高校の頃一番綺麗だと思ってた女優さんでした。今はこんなのばっかね。たぶんティム・バートンと付き合ってるからだよなあ。サシャ・バロン・コーエンについては今度ちゃんと話す。実はすごい人だと思っているので。しかしさ、この写真の表情だけでも「おもしろいことするんだろうなぁ」と思っちゃうよね。
普通、こういう道化役にはそれなりに「この人たちにもイイところがあるんだよ」という結論があったりするけど、この夫妻には一切ない(笑) そこが好きだなぁ。

そして、最優秀作品賞は、、、、

「桐島、部活やめるってよ」!!!


ドッピオさんとも話したけど、もうこれしかないでしょ、今年は。

同じ映画を映画館で3回も観たなんて僕の人生では初めてのこと。本当に素晴らしい映画でした。「高校生を描いた映画」ということで言えば確実にこの作品以降レベルが変わらざるを得ないと思う。本当に面白かった、興味深かった。
「完全ネタバレ桐島レビュー」を書いては直し加筆したりしてます。DVDもそろそろ出るみたいだから出たらアップしようかな。


ということで今年も終わる。来年も希望が持てる映画が増えるといいっすね。

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