浅草文庫亭

"大哉心乎"
-大いなる哉、心や

「恋しくて」

2013-09-12 23:04:24 | 村上春樹
村上春樹は海外小説もたくさん翻訳している。有名どころ(ロング・グッドバイ、キャッチャー・イン・ザ・ライ、グレート・ギャツビィ)は読んでいるけど、全部読んでいる、とまではいかない。

で、その翻訳小説の中で僕が一番好きなのは「バースデイ・ストーリーズ」。これは誕生日に関わる短編小説を村上春樹が集め、訳したもの。この短編集の中では「ムーア人」が本当に素晴らしいと僕は思う。

で、今回も同じような短編集が出ました。

「恋愛」をテーマにした短編集を村上春樹が集め、訳した短編集。

表紙の絵が素晴らしいね。本屋さんでパッと見て村上春樹というだけで買って紙カバーをかけてた。なんとなく「シャガールとかの絵かな」と思っていたら竹久夢二でした。

水戸駅の書店で見つけて買ったんだけど、冒頭の「愛する二人に代わって」があまりにも素晴らしすぎて、東京まで戻る車中(1時間と少し)、その余韻だけで他の短編を読み進めるのをやめてしまった。

余韻を楽しみ「はぁ」と思いながら電車から見る車窓からの茨城の緑はここしばらく無いほど良いものでしたよ。

古びたボーイ・ミーツ・ガールの話ではある。真面目なだけが取柄でちょっと風采が上がらない男の子と、少し派手目な幼馴染の女の子の数年に渡る派手ではない恋愛模様。それが縦糸で、9.11が横糸に編み込まれている。(そういや昨日が9.11だった。あれから12年も経ったのか)

この短編が本当にもう素晴らしくてですねー。もうこれだけでこの短編集読む価値はあると思いますよ。

「恋愛小説」、しかも短編なんて今さら時代遅れな感じがするけど、でも、今だからこそまた良いのかもしれない。

村上春樹もこの短編集のあとがきで書いてある。

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ひょっとしてこの世知辛いポスト・ポスト・ポスト・モダニズムの文学世界に、突如ラブ・ストーリーの時代が花開いたのかもしれない。
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「ポスト・ポスト・ポスト・モダニズム」ってのがいいね。「一周回って古いのが新しいよね、逆に」とか言ってるいけ好かないヤツが目に浮かぶ。←偏見

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