浅草文庫亭

"大哉心乎"
-大いなる哉、心や

ゴーイング・コンサーンって有り得るのか?

2008-09-03 00:13:47 | 
ローマ人の物語文庫版『迷走する帝国』が出ました。


塩野 七生
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一応、言っておくと「ローマ人の物語」は単行本で既に15巻、すべて発刊されてます。これの文庫版が徐々に出つつあり、今回出たもので単行本12巻分。後は年に1回出るみたい。

単行本買えよ、と思われるかも知れないけど単行本だと幅取るしね~。2000年の歴史を追ってくんだから、まぁゆっくりでいいかな、と。

カエサルがグランドデザインを描き、アウグストゥスが確立した帝政ローマ。悪名高き皇帝が続いたり、四皇帝の一年と言われる皇帝争奪の年を経、「賢帝の世紀」と言われる栄華も誇りました。

しかし五賢帝の最後と言われるマルクス・アウレリウスの時代から正に「終わりの始まり」(12巻のタイトル。うむ、寂しい言葉だ)、ローマがローマで無くなっていきます。

正にこの『迷走する帝国』の始まりでカラカラとゲタ(人の名前ね。ゲタがカランコロンのゲゲゲの鬼太郎じゃないよ)が皇帝になってから読んでるこっちも「ああ~こりゃもう無理だ~」と思ってきます。

カラカラの行った「全属州民に対するローマ市民権の付与」は今読めば正にドラッカーの言う「人口構造の変化」に着目できていなかった、と言えるんだろうけどその頃はそんな事に着目する人なんでいなかったんだろうね。

非常に簡単にまとめてしまうと、
今までのローマと言うのは周辺地域を攻め、その人たちを奴隷にすることによって成り立っていた。奴隷、と言っても支配的な奴隷ではなくて頑張った奴隷は「解放奴隷」という身分になれた。さらに解放奴隷から頑張れば「ローマ市民」となり、場合によっては元老院に入ることも出来た。
たとえ属州出身と言ってもそこは寛容なローマ人、中には属州出身ながら皇帝になった人もいる。

しかし、この時代に入り、領土拡大はいったん休止。

そうなると当然財政的に厳しくなります。また人口も増えないので防備のための兵も不足。そこでカラカラが考えたのが全属州民へのローマ市民権付与。

以前は、ローマ市民であることに誇りを持ち、公職も無給でやっていた気高い意志がある人たちが誰しもローマ市民になったことでその市民権に価値を感じなくなる。

この頃からローマがローマで無くなっていく。

これを見ていると、「拡大し続けるしか道は無いのか」と思ってしまう。戦争というのはもちろん良くないことだけど、国が繁栄し続けるためには新たな領土を拡大し、征服した領土からよくも悪くも「搾取」をし続けないと繁栄は続かない。
国民が増え、消費が増えないことには繁栄しない。

企業経営に関しても安定期、というのはありえないのかも知れない。常に新しい事業に取り組み、新たな顧客を獲得し続けるしかない。

そしてどこかで臨界点とも言うべき「終わり」が来てしまうのでは?

ということでこの世界ってどうなるのかね。

ローマ帝国の話は2000年前のことなんだけど、現代にだって学ぶことは多い。