さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
その他つれづれなる(そんなたいそうなもんかえ)
拳闘見聞の日々。

最終回の心残り(東京国際サウスポー祭り その2)

2012-04-08 13:04:42 | 関東ボクシング
さて、まずは昨日放送された「せやねん」動画です。
本人が試合後と違って明るい表情です。まあ良かったかなと。
スポーツ報知にはこんな記事もあり。これが事実なら私の推測は大外れです。うむむ。
ジョニゴンさんは粟生挑戦希望とかいう話も出てますが、これは先方が粟生と長谷川の両にらみで、
良い条件を引き出そうとしているんだろうなぁ、という感じですが。


さて、金曜日の世界戦二試合ですが、家で録画した映像を見る時間がまだ取れず、
結局会場で見てきた印象のみで書きます。


バンタム級タイトルマッチから行きますが、なんと言っても一番の見所は、リングに上がってきたときの
ビック・ダルチニアンの顔でした(笑)
いや、本当に雰囲気持ってましたね。殺傷本能を持つ野獣の目でした。
何も本人、そういうのをひけらかすでもなく、余裕の表情だったんでしょうが、顔見ただけで怖かったです。
こういう選手って、そうそう見られるもんじゃないかもしれませんね...
これだけで、会場来て良かったな、というくらいでした。

対する山中慎介は、目線を合わせるでもなく、飄々とした印象。
相手の圧力を無理に撥ねつけようとして力み、自分の型を崩すほど愚かなこともないので、これはこれで良し。
ただし、相手を恐れて押し込まれるようでは駄目で、そのあたり、山中がどういうバランスを取れるのかに注目しました。

初回はダルチニアンが結構気分良く攻め、山中は受け身の対応。
見て立ったのか、それとも押されているのか、この流れが続くようならまず勝てないだろうと思いましたが、
2回から山中はいとも簡単そうにジャブを当て、左から右の返しもヒットします。

序盤、採点上は取ったり取られたり、だったのでしょうが、感心したのは山中の方。
上記の「雰囲気」はともかく、ラフなように見えつつ、要所で鋭い狙いをもって
強打を飛ばしてくるダルチニアンに対し、力んで撥ね付けるでなく、怖れて引くでもなく、
実に良いバランスを維持して、冷静に闘っていました。

中盤以降、左でカットさせ、左のボディブロー、身体を逃がしつつタイミングを変えた左。
10回返しの右でぐらつかせる。ダルチニアンは少しずつミスが増えていき、動きも落ちていく。
山中は無理のない闘いぶりでリードを広げ続けました。
このあたり、強引に出るでなく、捨て身で攻めるわけでもなく、試合を支配していく山中には、
想像していた以上の確かな強さを感じました。

最終回については、本田会長の指示で流した、という話ですが、理解できなくはないです。
この相手にクリアに勝つというのは、ノニト・ドネアとアンセルモ・モレノにつぐ快挙?であり、
東洋の選手でいえば、Z・ゴーレスでも勝ち取れなかった星です。
今後、山中慎介が国際的な評価を得て、米大陸のリングに進出するためには、
是非とも勝ちたい試合であり、大事を取るというのは、至極当然の選択、という考え方なのでしょう。
また、米大陸のスター選手が持つ力、土壇場でも油断出来ない力を、誰よりも深く見知っている
日本のボクシング人は誰か、といえば、その代表格が、他ならぬ本田明彦氏であることも、確かな事実です。

それはよくわかる話ですが、やはりそれだけでは割り切れないのが人間というもので。
選手本人も、おそらくセコンド陣も、最後攻めて勝つ、という気持ちだったでしょう。

私の率直な気持ちとしては、この試合に勝つことによって、山中慎介が一段ステップアップするとしたら、
最終回に攻めて出て押し切り、あわよくばストップに持ち込んで、一段どころか二段、三段のステップを
一気に上がって欲しかった、ということに尽きます。
ダルチニアン相手に、厳しい展開で、疲弊も被弾もあり、無理に無理を重ねたような展開の上での最終回だったなら、
そんな期待はしませんが、恐るべきことに、そして素晴らしいことに、山中はまったくそういう状態ではなかった。
だからこそ、というのが、心残りではありました。

この選択については、様々な意見があると思いますが、彼がこの試合のラストラウンドをこのように闘ったことが
果たして正しかったのか、間違いだったのかは、今後の彼の闘いぶりが証していくことでしょう。


全体としては、まずは見事な内容と、良い結果だったと思います。
そりゃ最終回、全然手を出さずにいて、最後の最後に左ストレートを突き刺して倒す、という
往年のサーマート・パヤクアルンみたいなことが出来ていれば最高だったんでしょうが...(^^;)



さて、もう一試合についてすが、また後日、ということで。
どうかご容赦くださいませませ...m(_ _)m





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6 コメント

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Unknown (アラサーファン)
2012-04-08 17:24:56
いやはや、山中君の落ち着きぶりには驚きました。右ジャブと左ストレートに加え、あんなステップワークあったんですね。戦前のコメントとは裏腹に試合ぶりは完全に山中君が格上の振る舞いでしたね。私は右ジャブとステップワークの巧拙、カットしてからドタバタしたダルチニアンと最初の公開採点聞いてもクールな山中君のメンタルの差。どっちがキャリア上なんだと思ったほど山中君は見事でした。最終ラウンドは会場からもブーイング起こってましたが私は初防衛戦でしかも一発のあるダルチニアン、今後のビッグマッチの可能性を考えると十分‘あり’の戦法と思います。セニョールは日本で人気復活より、海外で試合組む方が道が開けるとお考えでしょうし。
欲を言うとあの大口叩きを倒して、黙らせて欲しかったですが。
長谷川さんについては繰り返しますが最低でもあと3試合は調整試合してほしいですね。せやねん見てて嬉しかったのは、ジョニゴン戦後に限界と言ってた長谷川さんのお父さんがこの試合については誉めていたこと。テレビ用かもしれませんがライルズさんの指導が長谷川さんを良い方向に導いてくれると見ているのかもしれませんね。
おまけですが長谷川さん、ハンバーガー食べられて良かったですね。
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Unknown (にわか)
2012-04-08 18:52:13
さうぽんさんのお書きになった、「山中のステップアップ」の項、100%同感です。
勝って本当に良かったと思う反面、仮にあそこで完璧に倒しきっていれば、海外での扱いもかなり変わっていたのではないかとも考えてしまいました。
状況が違うと言われればそれまでですが、サルガド戦で最終ラウンドあえて倒しにかかり、それを見事になし遂げた内山選手を思うと、どうしても。。。。
とは言いつつも、この勝利を足がかりに大きく飛躍していただきたいです。
返信する
Unknown (Unknown)
2012-04-09 15:03:29
私は山中の最終ラウンドの戦い方、
断固支持します。

ボクサーは打たれてはいけません。
打たれてないからこそ、メイウェザーは
30過ぎてもすばらしい動きをします。

彼は絶対に無理しないでしょう。
ボクシングは結果がすべて。
最後がんばるより、傷少なく勝つことが
大きな結果を生みます。

結果が出たほうが盛り上がる。
結局長い目で見たらいい勝負して
世界で通用しなくなるより

そんなときも冷静にずるがしこく
でも結果を手にして世界で通用する
というほうがボクシング人気自体が
あがると思うし

山中はそれが出来る選手。
無駄なリスクは避けるべきです。
返信する
コメントありがとうございます。 (さうぽん)
2012-04-09 18:04:44
>アラサーファンさん、にわかさん、無記名の方

山中のボクシングについては私も誤解していた面がありまして、強打の手応えが前提になっているボクサーだ、という風に思っていました。あれだけ冷静に相手を見て、急きも慌てもせず、行くときと引くときのバランスをきちんと管理して闘えるとは、嬉しい驚きでした。脱帽ものです。

最終回については、基本的にはあれで良いのだろうと思います。その反面、心情的にはもう一押しの期待をしてしまいます。また、それが許されるのではないかと思うほど、11回までの山中は無理、無駄の無いボクシングを見せてくれていました。それこそ、レンドール・ムンロー戦における西岡利晃のように。だからこそ...という思いは、やはり残ってしまいましたね。


>アラサーファンさん

長谷川はあのコーナーで外したことは無かったと思います。いつだったか、初回か2回で倒した試合のあとは、おいしそうに中華丼を食べていました。試合が物凄いノックアウトだったのに、凄味や禍々しさの欠片もなく、「ぱくぱく」という擬音が聞こえてきそうな長谷川の様子を見て、「こんなこってええのかなぁ...」と思わず考え込んでしまった記憶があります(^^;)
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Unknown (NB)
2012-04-11 17:16:12
最初マジで東京国際サウポン祭りに見えました!(笑)
ダルチも4月6日じゃなく、4月4日のほうのバンタムタイトルマッチに出ていたら…ですね~、残念。なんちゅう世界やって思いますボクシングというスポーツは。めちゃくちゃです、笑うしかない。亀田にじゃなくJBC。人間界は、みんな平等じゃないといけないのです(偉そうにスミマセン)。本当悔しい思いです。それでも頑張ってる日本人ボクサー、凄いです。
山中の事はあまり見た事ないのであまり言えないのですが、最終ラウンドの悔しさを次に繋げていってほしいです。
あんな世界屈指のと突猛進ファイターのダルチがあまり動けないような展開になるとは…。

山中の足の動き見てて西岡に似てるなと感じながら見てました。
ただ、相手のパンチをボディワークで外した瞬間やサイドに回った瞬間、相手の撃ち終わりの間の瞬間など西岡なら手を出すなと思うところ感じました。

やはり勇猛果敢なファイターには、出鼻出鼻をくじく何かが必要ですね。やはり足以上にパンチ強いのは大きいです、しかも足で打ち気を外すわけですから、山中すごいですね。

もし、の話ですがV10後の長谷川に挑戦していたら…。ダルチが勝っていたと思います。あくまでもV10後の長谷川。
長谷川はパンチ当たったらムキになって打ち合ってたと思うからです(自信が過信に近い、それと警戒心から)。パンチで止めようとする。それとダルチは攻撃力に目が行きすぎますのでわかりにくいですが、実は目がとても良くディフェンス上手いと思うからです。間違ってるかも(笑)。
返信する
コメントありがとうございます。 (さうぽん)
2012-04-12 22:15:03
>NBさん

ダルチニアンが横アリの方の試合に出ていたら、それはまあ、むごいことになっていたでしょうね。でもあのご長男の試合は、ある意味、分相応という意味では、正しいマッチメイクなのかもしれません。試合のお題目がそれに釣り合っていないという根本的な問題はありますが。

山中は「粟生に勝った男」としてデビューして数試合目ですかね、6回戦のときに後楽園ホールで直に見たことがあります。線は細いが無駄な動きのない、筋の良いボクシングをしていました。しかし全体的に頼りなげな印象があり、上位に進出したら壁にぶつかる類の選手だろうな、と思いました。まさかビック・ダルチニアンと試合して、勝つような選手だとは夢にも思いませんでしたね。よくぞこれほど強く、たくましくなったなぁと感心しております。今回の試合においては最終回のみならず、全体的に無理な攻めはしませんでしたね。

長谷川とダルチニアンの対決は、確か7回目か8回目の防衛の頃に具体化し、ダルチニアンがジョゼフ・アグベコに負けたため話が潰れたと記憶していますが、あの頃なら打ち合いになるより先にヒットを重ねて倒してしまったのではないか、と思っています。ダルチニアンの防御は、強打の威力によって相手を脅かすことが前提になっている面があり、あの頃の長谷川ならば、問答無用の試合になっていたかも、という気がします。まあ、実現することのなかった試合ですから、結論は出せない話ですけども。


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