さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
その他つれづれなる(そんなたいそうなもんかえ)
拳闘見聞の日々。

アリ、タイソンもし戦わば(後編) 「ビンテージ」タイソンはやはり凄いが...

2020-04-19 09:08:45 | 海外ボクシング






対するマイク・タイソンですが、こちらもまた、若い頃からのセレクトになります。
86年、バービックを倒して最初の戴冠、HBOトーナメントによる3大王座統一、東京ドームこけら落としの一戦を経て、無敗マイケル・スピンクスとの “ONCE AND FOR ALL” に至るまでの「ビンテージ・タイソン」を選ぶことに、異論は無いと思います。

この頃の試合、まとめて見られる動画はないかなと思ったら、タイソンのハイライト集がありましたんで、バービック戦から数試合、ということでご紹介。







バービック戦以降の試合ぶりを見ると、この頃は本当に、真面目にやってたんやなあ、と改めて思います(リング外では、この頃から色々あったそうですが)。
強打はもちろん、好機における詰めの厳しさは当然ながら、自分より長身、大柄な相手にジャブで打ち勝ち、崩しておいてのワンツーがまたコンパクトで強い。
頭の振りを怠らず、ボディ攻撃を織り込み、スイッチをしながら連打も出来る。精巧緻密に作られた破壊兵器、という趣きです。
時々ゴング後に打ったり、アタマさんと化したり「要らんこと」もしてますけど(笑)

この頃のタイソンこそ、史上最強を謳われる神話的な強さの持ち主、と評して良いと思います。
逆に言えば、89年、プロモートやマネジメントの体制を変えて臨んだ、フランク・ブルーノとの初戦以降のタイソンは、それまでの彼自身の「二番煎じ」でしかありません。


===============



ということで、66年のアリと、86~88年のタイソン、もし戦わば、ですが...。
この両者の全キャリアを比較すれば、問題なくアリの方が上、となりますが、ベストファイトの時の出来、戦力ならば、どういう展開になるか。

アリは当然、足で捌いて目で外す、という出方でしょう。
タイソンは頭を振って入って行こうとする。

序盤早々に、ということもないでしょうが、やはりどこかで、タイソンの強打がアリを捉え、ダメージを与えるでしょう。
「アリの天敵」は左フック、と言われますが、タイソンの攻め口は左右の強振のみならず、突き上げるような左ジャブ、コンパクトなワンツーを端緒に、好機に見せるコンビネーションなど、多彩です。
また、右アッパーのダブルから左フックの返し、という型にはまった攻めだけでなく、ワイルドな強振を見せながら、次にインサイドへ、振りの小さいパンチを狙ってくる「殺しのパターン」を確立してもいます。

アリは機関車フレイジャー、リストンの再来フォアマンの強打に耐え抜いたタフネスも持ち合わせていますが、タイソンが好打ののち「詰め」に入ったら、さすがに生き延びることは出来ないように思えます。
もしそれがかなうなら、序盤からスピードで圧倒し、ジャブや肩越しのクロス、ワンツーを決め、仮に身体を寄せられたらショートアッパーの連打などで、タイソンにダメージを与えておかないと難しそうです。


タイソンが勝つなら、序盤か中盤までに攻め込んで強打を決め、好機に尋常では無い粘りを見せるであろうアリを詰め切って倒すか。
アリが勝つなら、ジャブ、ストレート距離で捌きつつ好打を重ね、クリンチも駆使して時間を稼ぎ、タイソンが掴むであろう好機を終盤に持ち込むことによって、なんか生き延びて、判定を勝ち取るか。

基本的にこのどちらかだろう、と思います。
タイソンが攻勢を取って押し切り、判定で勝つことも、アリが「ファントム・パンチ」と自称する右クロスで倒す可能性も、ゼロではないでしょうが、高くはなさそうです。

で、どちらなんだと言われれば、私はタイソンのKO勝ち、だと思います。
前提として、どちらが偉大か、ではなく、ベストの時期を決めて比較する、ということならば、タイソンの攻撃力、単に強打の威力のみならず、その質の高さ、多彩さが、アリの(技術的に偏りがある)防御を打ち崩すだろうと。



ただ...アリのキャリアは後年の「キンシャサの奇跡」を待つまでもなく、60年代からすでに、リストン戦の「奇跡」でスタートしています。
大方の予想、その元となる理屈を超越した何ごとか...強敵相手の時にこそ高まる精神的な力、傍目の想像を超えた戦略と、それに己の身命を賭ける大胆さのようなものが、モハメド・アリを単なる強いボクサー、優れたボクサーという表現では語りきれない存在に押し上げた。それもまた、動かしがたい事実です。

一見しただけではわからない「魔力」のようなものを身に纏う、と俗な表現をするしかない。
単なる分析や比較では語りきれない高みにいる、唯一無二の存在。

こういう部分を加味してしまうと、アリの勝利もあり得るか、と思います。
もっとも、それがどういう展開の末に、どのような形をとるのか、というと、きっと簡単には説明できないような、想像の枠を超えたものになるのだろうなあ、と。

ということで、アリ、タイソン戦えば、の答えは、いきなり「逃げ」になってしまうのですが「理屈で言えばタイソン、しかしアリには、そう断じることが出来ない何かがある」ということになります。

言い訳ですが、ある意味、オールタイム・ベスト的な企画に、一番不向きなボクサー、それがアリなのかもしれません。
他の選手、或いは他の階級において、これほど話を難しくしてしまう選手は、まずいないと思います。
その部分も含めて、やはりアリこそが「ザ・グレーテスト」なのでしょうね。ベストのタイソンが「ストロンゲスト」なのだとしても。



と、一応結論ぽく書いてますが、長々と書いた挙げ句「実は、どうしていいのかわかりません」という締めになっております。
やっぱり、普段やっていない、真面目なボクシングブログぽいことを急に始めたはいいが、早々に行き詰まってしまいました(笑)。
まあ、しかし言ってみればこの両者の比較というのは、最初にして最大の難関、という気もします。

これ以降についても、順次取り上げていくつもりですが、あまり深入りせず、動画紹介プラス、簡単に思うところを、というに留めようと思っています。
あくまで参考程度に、というところで。これもまた逃げですが...。



コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« アリ、タイソンもし戦わば(... | トップ | ヘビー級トーナメントは結果... »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
お疲れさまです。 (元おっさんボクサー)
2020-04-21 22:15:32

アリ タイソン

触れる事こそが不毛
なんでしょうが…

あえて想像の世界で対戦させていただきますと

アリの時代にタイソンがワープして試合をするならば
アリの映像をビデオで研究できたタイソンのko勝ち。

ワープ ビデオ研究もできない試合でも
タイソンのko勝ち。

しかしアリがビデオ研究できて準備できる環境であるのであれば
アリのko勝ちと予測いたします。

頭の良さはケタ違いにアリだと思われますので。

一切の情報なしのガチンコファイトなら
タイソンの秒殺だと思われます。

あくまでも不毛な妄想ワールドシュミレーションですが…。

返信する
コメントありがとうございます。 (さうぽん)
2020-04-22 15:19:33
>元おっさんボクサーさん

今月号のマガジンの基準でいくと、お互いに最低、一ヶ月くらいは期間を持って、相手のことも知っていて、ということのようですので、その辺は前提で書いてみました。
アリは目に見えない部分も含めて、大きな試合で強い相手と当たるときほど、予想を超える力を発揮する選手でした。それは後年の円熟期のみならず、若き日のリストン戦からそうでした。その上、身体的にも伸び盛りで絶好調だった60年代のアリと、攻防共に乱れず隙が無く、なおかつ突出して速く強い若きタイソンの激突は、凄まじい闘いになったのでは、と思います。

返信する

コメントを投稿

海外ボクシング」カテゴリの最新記事