さうぽんの拳闘見物日記

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拳闘見聞の日々。

打たれず、外せる位置を見つけてからは早かった 田中恒成、橋詰将義に圧勝TKO勝ち

2022-06-30 05:30:58 | 関東ボクシング



ということで昨夜はひかりTVで、フェニックスバトルのライブ配信。
田中恒成が橋詰将義を5回TKO。WBO3位の田中が、有力コンテンダーとしての地位を守った一戦でした。



昨日、ちょこっとプレビューぽいこと書いたんですが、序盤は想像以上に、橋詰将義のリーチが生きていて、田中恒成はなかなか接近出来ない。
初回早々に、しっかり打ったワンツーストレートの「先手」によって、橋詰はリーチの差を最大限に生かす好スタートに成功。
ワンツーのみならず、前に伸ばす右アッパーも決めていました。

2回も基本的には同じ流れ。田中は右リードから入ろうとするが届かず、外される。
右ボディから行くと右フック引っかけが来る。橋詰の右ジャブが邪魔。
途中から、田中が単発でヒットを取るようになるが、橋詰が乱れるほどかというと、そこまででもなし。


上京し、移籍して三戦目の橋詰にすれば、まさに人生賭けた大一番で、かなり気が入っているようにも見え、考え得る中で最高の立ち上がりに見えました。
対する田中にとっては、長身のサウスポーに対し、小柄な方が右リードで入ろうとして届かず...相当悪い回り、流れの典型に見えた、のですが。


3回、スタートから田中が膝を深く曲げ、低い姿勢でダックしてから打ちに行く。
橋詰が長いリーチを生かして打つパンチが、田中の頭上をスカスカと通って「あれ?」と違和感を持った瞬間、田中の右がヒット。
先ほどまで長いリーチに苦しんでいたはずの田中が打ったのは、意外なほど大振りにならず、振りの小さいショート気味の一撃でした。


傍目にはよく分からなかったですが、田中はダッキングを低めに設定しなおして、なおかつ、橋詰のパンチの軌道を外せる位置取りに成功していました。
ここから、展開は文字通り一変。田中が橋詰のジャブ、ワンツーを外しては右。橋詰左ストレートに田中、左ボディ。
橋詰また左外されて右ショート食う。田中のヒットが相次いで、圧倒的な攻勢。


4回、この流れならすぐにでも仕留めにかかるか、と見えたが、田中はまた上体を少し立て気味の姿勢。
橋詰少し息をつけた?ワンツー繰り出す。

しかし途中から、また田中が低い姿勢を取り始める。そこから、ダックして外しては打っていく。
左フック好打、右ショート、左右連打の締めに左ボディ。右ショート決めてゴング。

橋詰、悪い回りになっても、同じように自分から手を出し、外されては打たれる。
一旦手を止め、離れて見る、という選択を、結果として出来なかった。

それはこの回、立ち上がりに誘った田中の巧さでもある。
この辺、やはり経験の差というか、田中は余裕ある試合運び。きつく言えば、力量の差、でもあるか。


5回、橋詰は気合いは感じるが、ワンサイドに打たれ続ける。
田中の左アッパー、ワンツー、左ボディを断続的に打たれ、ヒットによるカットで右瞼から出血。
それでも懸命に抵抗していたが、田中が「止める」と決めて猛攻を仕掛け、レフェリーがストップ。TKOとなりました。



2回が終わった時点では、橋詰の良さばかりが出ていて、ワンサイドに見えた試合でした。
普通ならこのまま行くわけがない、田中が巻き返してきて、橋詰がそれに耐えきれるか、という先を想像するところですが、あまりにも一方的に橋詰の良さだけが出ていて、ひょっとするとこのまま行くのか...まさかなあ、いや、でも...と思っていたほどです。

しかし3回、試合の流れががらりと変わりました。
田中恒成の姿勢、位置取りが、その要因だったと思います。
上体の位置を低く設定し、位置取りとしては、軸をやや左斜め前にずらした感じ、だったでしょうか?映像を見返してみたいところですが。

何しろ、橋詰のパンチの軌道が、そこをあまり通らない、という「発見」をして以降の田中は、十全にその攻撃力を発揮して、橋詰を厳しく打ち込んで行きました。
やはり田中強し、世界三冠は違う、という「絵」でしたが、本当に凄いと唸らされるのは、その前に、その強さを、違いを生み出せる要因となった「位置取り」が出来ること、です。

打たれず、外せる。そこから攻撃をスタートできる。その優位性を得てから、勝負がつくまでは早かった。
橋詰がそれに対して、何らかの修正をしてくる前に、試合を終わらせようという意図もあってのこと、でしょうが。



終わってみれば、さすがは田中恒成、という試合でした。
単に速い、強いだけではない、それ以外の部分で良さが見えた。それは大きな収穫だったと思います。
また、115ポンド級三試合目にして、徐々に体格面でも、このクラスにフィットしてきたかなあ、とも見えました。

やはり、中谷潤人の転級という話を抜きにすれば、井岡一翔に次ぐ実力者、それが田中恒成でしょう。
とはいえ、井岡一翔への再挑戦は、すぐにとはいかなさそうです。
井岡がニエテスに勝ち、年末に他団体王者(IBF?)との対戦を目指しているとしたら、順番的には、あってもその先、ということになります。

もっとも、井岡がニエテスに敗れたりしたら、一気に情勢が変わることでしょう。
米大陸のリングでもビッグファイトが行われている階級だし、そちらへの絡みもあってほしいですが、田中恒成がその実力を示したことで、こちらはこちらで、色々と盛り上がっていけそうです。




敗れた橋詰将義、試合後は口惜しそうな表情でした。
上京して移籍して、その才能を証明するための一戦は、それこそ人生を賭けた大一番だったことでしょう。
しかし、中部のボクシング史上、最高の逸材である田中恒成の存在は、彼にとって険しい壁となりました。

私の目には、どう見ても彼の勝ちに見えた、日本タイトル初挑戦のドローを経て、攻撃面に比重をかけた、と見える移籍後の闘いぶりでしたが、今回はその辺を抜きにしても、考え得る中で最高の、突き放すアウトボクシングが出来ていたように見えたのですが。
これが、ブランクや移籍などの試練を乗り越え、彼が築き上げようとしていたボクシング、その到達点なのだろうか...とさえ思っていました。
しかし、田中恒成の手によって、それは打ち崩されてしまいました。

勝負の世界の厳しさ、酷薄無情の掟により、若手の頃から色々な試合を見てきた選手の闘いに、ひとつの区切りがついた。
その厳しい現実を見てなお、闘う者への畏敬の念を抱く自分がいます。橋詰将義に対しても、当然のこととして。



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5 コメント

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Unknown (海の猫)
2022-06-30 17:58:24
前記事のコメントでふれた「読み違え」に関しては、おそらく両者さほどなく、お互いやるべきことをやり、その上で田中がサイズ以外のほぼ全ての面で一段二段上に見えました。
おっしゃる様に「有力コンテンダーとしての地位を守った」一戦で、田中が再び世界挑戦に向かうことに誰も異論はないかと思います。ただその先の「世界を穫る」については、今回はよく分かりませんでした。
田中の「位置取り」の勝利ではありましたが、橋詰があまりにあっさりそれを許している。さらに言うと、1Rですら位置関係を作っているのはほぼ田中で、様子見で長めに距離をとったのが、橋詰にとって良い回りになったように見えました。
この階級の上位選手と考えた場合、田中は相性的にもシーサケットには勝てると思ってます。おそらくですが、先日のジェシー・ロドリゲスよりインパクトある勝ち方が出来る。そして一番やりにくいのが階級あげてきた中谷で、今回希望と不安材料両方見られました。

余談ですが、、、ボクシング転向間近の方、「生まれもったもの」は田中といろいろかぶって見えます。フィジカルや身体能力、センスなど。早くにボクシングに専念していたら、このレベルまで来れたのかなあと。「ボクサーとしての適正階級」もおそらく同じくらい(20代前半以降でフライ~バンタム)と思うのですが、もう他競技で身体を作ってしまっているので、落とすのは難しいのでしょうかね。
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Unknown (hiro)
2022-06-30 22:20:27
こちらの試合、仰るように初回は橋詰選手がリーチ差を存分に生かした試合に見えましたが…あれよあれよという間でしたね。本当は、こういう前哨戦を挟んでからSフライでもタイトルマッチに繋げたかったのだろうなと思います。さてさて、ボクモバで少し驚きましたが、この試合ジャッジのうち2名は海外の方でしたがなんででしょう。採点、2Rはまだ橋詰選手が掌握していたかと思ったら、ジャッジ3名共に田中選手だったのも驚きました。

ちなみに、今回の試合はAbemaでの配信が急遽決まりましたが、そちらでは14日間アーカイブが残っております(プレミアムだと無料、一般購入だと1,500円です)。なお、9日の佐々木尽選手の試合もAbema放映らしいですが、これは大橋さんの絡みか、それとも今後を見据えてボクシング界にAbemaが根を張ろうとしてくるのか…楽しみです。

さて週末には、注目度が余りにも低いですが、ムエタイの国内ビッグマッチ、泰国プロムエタイ協会フライ級王者ペットニポンに吉成名高が挑みます。プロムエタイ協会というのは、ラジャ・ルンピニーがWBC・WBAだとすればIBF的な後発ではあるが価値が定まっている団体で、ペットニポンはジェフ・フェネック的な人気選手としてこれを破れがタイでの評価も大きい。肘無し?膝無し?立ち技最強?笑わせるな!?な試合を期待していますが、こういうのをもっと多くの人に見てもらいたいですねー。
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コメントありがとうございます。 (さうぽん)
2022-07-01 15:23:07
>海の猫さん

世界奪取の可能性はとなると、また一段話が違ってきますね。おそらく会長のコメント通り、WBOないしはIBF狙いで、米大陸のマーケットで闘う選手たちとの絡みは考えていないのでしょう。本人がどう思っているかは不明ですが、試合後のコメントも含め、そういう方向性はもう諦めたのかもしれませんね。井岡かニエテスか、マルティネスかアンカハスか、何しろ手の届く範囲で、ということでしょう。
相性で言えば、なるほどシーサケットは良いかもしれませんね。中谷は長身、リーチのみならず「強度」を兼ね備えています。言えば田中のみならず誰にとっても嫌でしょうが(笑)
しかし相手誰であれ、この階級で田中恒成が自分の良さを正しく認識し、それを生かして闘えれば、勝算は立つはずだとも思います。問題は115ポンドに心身が馴染めるかどうか、というところも含めて、それが出来ていなかったことかなと。階級上げて相手が強く大きくなることで、田中が自身の抜きん出ている部分は何か、ということに気付いて、こだわりなくその良さを軸に闘えるかどうか。今回の試合、確かに相手との差はありましたが、その部分で希望も見えましたね。
那須川に関しては、メイウェザー戦の話が出て以降、試合やEXで動いている姿を一切見ていませんので、それ以前の印象でしかないんですが。顔面、頭部への攻撃頻度が高くなるボクシングにおいて、まずは「避けられる」水準がどの程度のものなのか、それを見ないと何とも言えない、というのが基本です。打つことに関してはかなり出来るように見えますが。体格に関しては、余裕持ってフェザーくらいがよさそうですけど、コンディション自体よりもあれこれ「余計」が介在する、のですかね。


>hiroさん

確かに、この三試合順番逆でしたね。最後が井岡戦だったら、とは思います。ジャッジが海外から来てました?アジアタイトルだからでしょうか?或いは東京三人、ないしは東京大阪名古屋では嫌だった?むー、なんでしょうかね。
Abemaは毎月必ずという話ではないですが、あれこれやってくれますね。プレミアムに加入すれば、ライブ配信の画質も良くなるんでしょうか。それともアーカイブのみですかね。もしライブから良い画質で見られるんなら、加入しても良いんですが。
佐々木尽の試合については、別記事でも少し触れましたが、5月の墨田区の試合と前後して、八王子中屋ジムがAbemaにアプローチしていたみたいですね。
そのムエタイの試合って、見るにはどうしたらいいんでしょうかね。それが全くわかっていないので...そりゃ、会場行けば見られるんでしょうけど(汗)
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Unknown (hiro)
2022-07-01 20:35:08
どもども、日曜日の吉成名高選手らの試合は、mahocastというプラットフォームですね。
https://www.mahocast.com/bom/live/8416
私も使ったことはないのですが、この団体は解説もきちんとしていて面白い作品が多い印象があります。

Abemaのプレミアムは、動画を一度ダウンロードできるようになるので、その点で画質は上がると言った感じでしょうか。見逃し配信が可能な点でありがたいサービスとは思います。

配信はあとは7月10日に、名古屋の試合がボクシング選手名鑑さんがyoutube配信してくださるようです。本当に数が増えてきて嬉しい限りです(疲れますが(笑))。
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コメントありがとうございます。 (さうぽん)
2022-07-02 15:06:31
>hiroさん

情報どうもです。うーん、ボクシングで見たいカードなら、ややこしい配信手続きにも果敢に挑みますが、なんか二の足踏みますねー、これ。ボクシングの配信も、よそから見たらこんな印象なのか...。
会場は横浜の港なんですね。1200人収容とありますが、それでもホールじゃない目新しさが良いですね。
Abemaはボクシングやるのが当たり前になってきたら、否応なしですが、どうなんでしょうかね。名古屋の方、本当に奮戦されてますね。
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