さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
その他つれづれなる(そんなたいそうなもんかえ)
拳闘見聞の日々。

ピンチの直後に、代打が牙を剥いた ポッチャリの星ルイス、筋骨隆々ジョシュアをTKO

2019-06-02 13:50:13 | 海外ボクシング



ということで、先月はWOWOWが放送でオンデマンドで、生中継を連発してくださいました。
ところが、今月はDAZN逆襲月間?というわけで、今日を含めてライブ配信、3興行を予定とのこと。
まあ、カードとして、勝敗への興味はというと、カンシオ、マチャドの再戦が一番で、あとはスター登場ではあるけど、勝ち負けはまあ...という感じで、のんびり見ていたようなことなんですが。


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挑戦者アンディ・ルイスのことは、数年前にWOWOW生中継のアンダーか何かで初めて見ました。
一目見て忘れられん、可愛らしい童顔とぽっちゃり体型。
ところが打ち出すと、ジャブ、右クロスにスリーパンチがけっこう速い。
見た目のコミカルさと、ボクサーとしての良さのギャップがなんとも言えず、一気にファンになってしまったものです。
人呼んで、というか、私が勝手に呼んでいるだけですが、この選手は「ポッチャリの星」である、と。

しかしその後、WBO戦で敗れ、試合映像もあまり見る機会がなかったのですが、今回の試合に代打で出場が決まり、久々に試合を、というより前に、その姿を見ることとなりました。
以前より入れ墨が増え、髭も伸ばして「闘うキューピー」のイメージはだいぶ失せたものの、それでも「味」のあるとこは、一目見て変わらず(笑)。
あまりに対照的な外見の、筋骨隆々が度を超しているアンソニー・ジョシュア相手だと、大変そうだけども、ええの一発当てるなりして、爪痕は残してほしいなあ、くらいに思っていました。


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初回、ジョシュア、ルイス共に慎重。見て立つ、という表現がぴったり。
ルイスの左ジャブは、外見からは想像つかないくらい、普通に速い。ジョシュア左ジャブで距離取る。
イーブンつけたい回。

2回、ルイスが早々に出て、左から右クロス、くっついて連打。ラビット気味のも混じる。
ジョシュア冷静に防いで、ジャブ。右ストレート長いのが、ルイスのこめかみに届く。ややジョシュア?

3回、ジョシュアが出る。右アッパー入れて、返しの左フックでルイスダウン。
ダメージありそうなルイスに、ジョシュアが追撃するが、ルイスが返して打ち合いになる。

ここでジョシュア、若干雑に狙った感も。そして、距離が詰まったときに、右ガードが低くなる。
打ち合いでルイスの左フックが決まり、逆にジョシュアがダウン。MSG騒然。
ジョシュアが立って、しばらく持ちこたえるが、ラウンド最後になってルイスが右クロスから攻め、ロープ際で、ジョシュア二度目のダウン。
ジョシュアダメージありあり。だがほどなくゴングが鳴り、レフェリーは続行を許可。

後から思えばですが、普通の、というか、もっと「小さい」試合なら、ここで止めていたかも、と思うくらい、ジョシュアにはダメージを感じたし、レフェリーの見極めも慎重なもので、これがこの試合の最後にも繋がっていたのでしょう。

4回、両者音無し。ルイスは傍目に「もっと攻めんと!」と言いたくなる慎重さ。
5回、ジョシュアはルイスの詰めの甘さに助けられたか、きつそうだが少しずつ手は出始める。フック気味の左リードが決まる。

6回、ジョシュアが回り、ルイスがじりじり追う。共に左がヒットしたあと、ルイスの右ボディフックが突き刺さる。
ジョシュア、身体の運びが重く、あまり動けないところにボディを打たれ、上体が伸び、表情にも苦しさが出てしまう。

7回、両者左相打ち気味にヒット。直後、ルイスの右ロングフックがジョシュアに命中。ジョシュア、これは見えていなかったか、ダメージ甚大。
ここからの追撃、連打の速さはルイスの真骨頂。ジョシュアのガードを打ち崩し、最後はジョシュアが前に手をついてダウン。
立ったが、ルイスが左右フックで打ちかかると、この回二度目、通算四度目のダウン。

レフェリーがコーナーに立つジョシュアを、長い時間をかけてチェックしたあと、ストップが宣告されました。
これで続けたら、ただのロングカウントやないか。健康管理の目的を利用して、何を勝手な...と思ったりもした場面でしたが、上記の通りの経緯もあり、レフェリーはこれ以上は危険、と断を下しました。


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敗れたアンソニー・ジョシュアには、過去の試合ぶりを見て、その都度、鍛え上げられた肉体によるスピード、パワーは凄まじいものの、その肉体の鍛え方そのものが、ボクサーとしての持久力を損ない、または技術面での練度にも追いついていないのでは、という危惧を感じてきました。

今日の試合でも「露呈」のレベルで見えましたが、離れたところでガード下げても、くっつきゃ自然に上がる、そう訓練されているのが(一流の)ボクサーというものでしょうに、ジョシュアは離れたところで手が上がり、距離が詰まると、右手を下げる癖があります。
見ていて何度も「逆やがな」と思った次第ですが、この弱点が、3回最初にダウンを奪った後の、追撃する場面において出てしまいました。
ルイスの左フック「着弾」を許したことが、その後の破局に繋がったわけです。

このような粗を出さないよう、慎重に手控えて自重して闘う...というか、闘わねばならないジョシュアの限界は、過去の試合にも見て取れました。
KOシーンは派手なジョシュアですが、試合内容、過程を見れば、その心技体のバランスは非常に歪で、危うさを抱えたものであると。
そういう自覚は、今日の初回、2回にも充分出ていました。しかし3回の好機に、一瞬それを忘れたか、迷ったか。
米国デビュー戦、殿堂MSGでの試合、という要因も、そこには絡んでいたのかな、と思ったりもします。

いくら筋肉の鎧を身に纏い、明朗快活なイメージで売ろうと、ボクシングという闘いは、結局のところ、人間を裸にするもの、なのかもしれません。
そして、ボクサーが持つ真の強さとは何か、という問いに、今日の試合はひとつの回答を示したのかも、とも。

予想が不利であろうと、代打出場であろうと、己の力を信じ、危機にあっても果敢に、懸命に闘う。
強大な相手であろうと、恐れず挑みかかる剥き出しの牙こそが、闘いの場において、もっとも鋭く、恐るべきものなのだ、と。


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ということで、アンディ・ルイスが世界ヘビー級チャンピオンになりました。なりよりました(笑)。
しかも3団体のベルトを一手にしたわけです。
DAZNに多額の投資をもたらした立役者であり、ヘビー級の次代を担う期待の星。
時代の最先端を行くフィジカルトレーニングで作り上げた筋骨隆々の戦士。
朗らかに自己主張のスピーチを繰り返す、当世風のスターボクサー。
そんなアンソニー・ジョシュアに、ポッチャリ体型のメキシコルーツのアメリカ人が、ニューヨークの殿堂、マジソンスクエアガーデンでKO勝ちし、ヘビー級の新チャンピオンになる。
実際に試合が行われれば、どんなことでも起こる可能性はある。それがボクシングだとわかっていても、やっぱり、これを予想、想像しろと言われても、無理というものだったでしょう。

今後についてですが、3強時代と言われるヘビー級戦線に、とんでもない新たな主役が躍り出てきて「4強」時代となった...と言えるかどうかは、まだ少し時間が必要かな、とも思います。
アンディ・ルイスの戦力には、今日の勝利を見てなお、ある程度の限界を感じもしますが、しかし確かな強みもあり、それが結果による裏付けを得て、確固たる自信が身につくのかもしれません。その答えは、これからの試合で、すぐに見られることでしょう。


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今日のライブ配信は、DAZNの目玉商品たる、欧州チャンピオンズリーグのファイナルと一部時間が重なる、早朝6時半からのライブ配信、と予定が出ていました。
なんで米国東海岸の試合がそんな早い時間になるのや、第一試合から全部やるのか。メインはいつになるものやら...と思っていたら、DAZNのHPに「メインは11時半以降配信」と※付きで注意書きあり。
これは本当に驚きました。なんと親切な。どないしましたんや、DAZNさん(笑)というのが、率直な感想です。

真面目な話、シーサケット、エストラーダ再戦の2時間待ちぼうけ事件を受けて、さすがに抗議が殺到...まではいかなくとも、やはり苦情が数件はあったんでしょうね。
何にせよ、冗談抜きでこれは有り難かったです。安心して、9時半くらいまで寝て、ゆっくりと試合を見ることが出来ました。
まだ、DAZNはWOWOWオンデマンドと違い、見ている最中でも、巻き戻して前座の試合を見ることも出来ます。
この辺の便利さは、やはりオンデマンド本業のDAZNと、サービスの一環でしかないWOWOWオンデマンドの、明白な差ですね。
と、良いところがあれば、ちゃんと褒めておきます。


そんなことでセミはカラム・スミスが、あのアッサン・エンダムを3回までに3度倒してTKO。
初回、2回に左フック。3回は右ショートで倒しました。
エンダムは、ダウン食っても判定まで行く、という特技を今回は出せず。体格、パワーの差は歴然でした。



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ということで、本日の一曲。
The Birthday 「さよなら最終兵器」。






コメント (7)
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