ということで、あれこれやってみたんですが、ライブ配信は見られませんでした。
しかし、試合終了の時間を見計らって、YouTubeで検索をかけたところ、
さっそく動画を発見。結果知らずで動画を見ることが出来ました。
井岡一翔の闘いぶりは見事の一語でした。技巧派の真髄を見せた、と言って良いでしょう。
序盤から左ジャブが良く出る。外からの右は捨てパンチか。
左でマックウィリアムス・アローヨのガードを破り、右、左ボディで追撃。
全体的に軽打中心、左ボディは少し力入れるときがある、という感じ。
リズム良く、アローヨの強打にも怯まず、中間距離から手数を出して当てて行く。
その上、防御面でも集中が高く、打った後は素早く後退し、右斜め後方へ回り込む。
サイドへ回る際(最近の試合では散漫になっていた?部分でしたが)、
フェリックス・アルバラード戦などで見せた、ダッキングしながらサイドに出る動きも見える。
アローヨは序盤から、強打を決めるタイミングを与えてもらえず、戸惑い気味?
そこへ3回、井岡が、間を詰めたコンパクトなワンツー。
それまでより速いタイミングで来た右の「ツー」を浴びて、アローヨがダウン。
4回も井岡がジャブ、回って外し左ボディ、ワンツー、返しの左と「圧倒」の趣。
5、6回は少し休み加減?も、7回からまた攻める。
アローヨは思うに任せぬ展開に、手を下げておどけた仕草を見せるが、
井岡は相手にせず、たまに好打されても、常に手数で相殺、或いは上回る。
8回はアローヨも奮起するが、打てる角度、距離が限定的で、
それを丁寧に外し、封じる井岡の巧みな位置取り、足捌きによる防御の質が落ちない。
9回は左右ボディで続けて攻めておいて、上に返した左フックがクリーンヒット。
最終回、アローヨ強打を振るうが、挽回にはほど遠く、終了。
ざっと見て7対3か、8対2くらいの内容で、井岡の完勝だったように思います。
公式採点もだいたいこの辺でした。
全体的に、井岡の技巧、試合運びの巧さが存分に出た試合でした。
日本でやっていた一連の試合、ことに最後の数試合の、格下相手の試合では、
攻防の密度が若干落ち加減で、防御動作の細心さが欠ける部分もちらほら見えて、
それが一時的な(精神的なものも含めた)停滞なのか、
それとも言葉通りの意味における「衰え」なのか、という疑問があり、
その答えが、この海外における、強豪との試合で出ることだろう、と思っていました。
結果、答えは前者に過ぎなかった、余計な心配だったようです。
以前から、例えローマン・ゴンサレスやファン・エストラーダと対戦して、
結果勝てなかったとしても、井岡一翔の技巧は、強敵相手であればあるほど、
その冴えを見せ、見映えもすることだろう、と思っていましたが、
彼らに次ぐ位置に付けるであろう、強打マックウィリアムス・アローヨ相手に、
井岡一翔はその技巧の冴えを存分に発揮し、ロスのリングでその実力を披露しました。
攻撃面でも、一打で相手を伸ばす強打は持たないものの、狙いの鋭さとタイミングの変更で、
ダウンを奪った3回のワンツーや、試合終盤にきて、若干散漫になった相手に、下下と攻めておいて
上に返して当てた左フックなど、巧さで相手を倒し、効かせたあたりは、
見ていて思わず「お見事!」と思わずにいられませんでした。
全体的に、少しだけ重心を前に出して、圧しながら当て、引いて回ると、また圧して、
という風で、防御に細心の注意を払いながらも、積極的に手を出し、試合を「作って」いました。
この辺、上半身はファイター寄り、下半身はボクサー寄りの「設定」という感じで、
そのバランスは、アローヨの強打を殺し、封じるにあたり、絶妙なものがあったと思いますが、
それを支える、高い集中と気合いが伝わってもきました。
傍目に想像するだけの話ですが、これまでの国内限定、TBS中継番組という
枠の中に、ボクサーとしての存在を取り囲まれていたときの試合とは、
気持ちの部分、それは意欲であり、危機感でもあったのでしょうが、そこからして違っていたのでしょう。
今後のことはよくわからない部分もありますが、どういう道を行くにせよ、
これまでの試合とはまったく違う「舞台」で、井岡一翔はその実力を、改めて証明しました。
そして、結果以前にまず、彼が一度なりとも、こういう試合を闘えたことは、
ボクサーとして、得がたい幸福だったのではないか、と思います。
出来れば、その幸福感に基づいて、今後の道行きをどうするか、決めていけたら良いのにな、と、
まあ余計なことかもしれませんが、試合を見終えて、そんなことをぼんやり思っています。