さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
その他つれづれなる(そんなたいそうなもんかえ)
拳闘見聞の日々。

国内最高は充分に証明した 井上拓真、MJヤップをほぼ封殺

2018-09-12 09:02:43 | 関東ボクシング



ということで、昨夜はこっそり後楽園ホールにお邪魔しておりました(^^)

先に決定戦が行われたのは重々承知で、やはりこのカードこそが、
日本バンタム級の最高ボクサーを決める試合だろう、ということで注目の一戦。
TV放送は次の日曜、16日に関東ローカル、という話ですので、経過から簡単に。


序盤、マーク・ジョン・ヤップが回り、井上拓真がじりじり追う。
両者フェイントの応酬、手数自体はさほど。若干静かな展開。
ヤップがワンツー出すが、井上は外して右アッパー、左フックをリターン。
3回はヤップがワンツーをボディに伸ばし、際どく取ったか。

外して合わせる際、井上の一瞬の速さが目につく。ヤップは相対的にスローに見える。
打っても外されるせいか、徐々に弱気な表情、消極的な印象に見えてくる。
途中採点は39-37井上、あと二人は38-38。私は井井ヤ井で、最初のと同じ。

双方ともに途中採点で何を思うか、どう動いてくるか、と思った5回、
ヤップが右ヒット、少し攻め。しかしヤップの右を外した井上が左フックを合わせ、
ヤップがバランスを崩されてダウン。ダメージは浅そうだが、痛い失点。
ヤップ反撃も、井上は小さい右ダイレクト、右アッパーで脅かす。

6回、ヤップは右ストレートを外されて、井上の右アッパーを返され、
少しロープへよろめく。7回も井上がインサイドへカウンター。
8回、井上がさらに左を多彩に繰り出す。中盤は井上がほぼ支配した印象。
ここで途中採点は3-0で揃う。

9回、相打ち気味の攻防が増え、ヤップ左フックヒット。右で追撃も、井上右返す。
10回、ヤップがさらに出るが、今一つ迫力に欠ける。もっと「牙を剥く」感じでないと、
この程度では、井上にとり、リターンやカウンターの「当てどころ」が増えるだけ、という印象。

11回、ヤップが奮起して手を出すが、井上は足使いつつ、大半をガード、ブロックで受けきる。
そのうえで左フック、右クロスを当てる。終盤に来て、この防御の冴え加減には驚き。
12回、打ち合いになるが井上がヒットでまさった印象。

判定はひとり、114-113という意味不明スコアが出ましたが、
後のふたりは116-111、117-111、というところで、井上拓真の勝利でした。
さうぽん採点は、井井ヤ井、井井ヤ井、ヤ井井井、5回にダウンがありましたので、
117-110、ですね。あれ、一番開いてるなぁ。若干ヤップに辛いかもです。


井上拓真は、じりじり出て圧し、ジャブはそこそこ、ヤップのワンツーを外しては、
身体を逃しつつ打つ左フック、或いは右アッパーのリターンパンチを当てる、という流れ。
時折ワンツーのボディ打ち、左フックを好打されたりはしたが、全体的に試合運びの巧さ、
攻防の切り替えに冴えたものを見せ、しかも試合終盤になっても、その質が落ちませんでした。

井上拓真は、これでWBCの次期指名挑戦権を獲得したとのことです。
フランスのウーバーリと、あのルーシー・ウォーレンが決定戦をやり、
そこにタイの選手が挑戦して、その次、という回りくどい話ではありますが、
遠からずWBCタイトルに挑戦することになるのでしょう。

この試合で、日本バンタム級の国内で最高の選手であることは十分証明した、
その点では諸手を挙げて称えたい井上拓真の試合ぶりでしたが、
後述するヤップの物足りなさなども含め、リターンやカウンター、防御は冴えたものの、
それ以外の攻め手には、不足も感じました。

時折、鋭いタイミングで打ってはいたが、今一つ浅く、際どく急所を外していた
コンパクトな右ダイレクトや、右アッパーのカウンターが決まらなかった点などは、
世界戦への課題でしょうし、ましてウォーレンあたりに挑むとなれば(その可能性が高いと思います)、
外して合わせる「だけ」の試合しか作れないようでは、なかなか厳しいのではないかと。

もちろん、その部分をさらに磨いて、さらに一段上の強さを身に着けてほしい、と期待はします。
また、その余地が十分ある選手だろう、とも思います。
全体的に、彼の質の高さが見られた試合でもありました。11回なんか、本当に感心したなぁ...。



対するマーク・ジョン・ヤップは、井上の構えに圧され、打っても高い頻度で外されたせいか?
序盤から逡巡したか、表情に弱気が見え、スピード、切れが感じられず。
もっと思い切りよく攻められないかな、と思っているうちにダウンも喫し、
リードされて追いかける展開になり、そこからの反撃も、そこそこ止まりの印象。

ここ数試合で、山本隆寛戦や、益田健太郎戦での爆発力を見ているだけに、
全体的に物足りなく映った、というのが正直なところです。
そうさせたのが、井上拓真の巧さであり、レベルの高さ故だったのだろう、と
理解するべきだし、たぶんそれが正解なのだと思いもしますが...。

セコンド陣も一生懸命ハッパをかけ、フィリピンの国旗を見せたりして、
励ましていたんですが、それにヤップがしっかり応えたかというと...
まあ、仕方ないといえばそれまでだし、それ以上の何事かを求めるのは、
あくまで傍目の、ファンの勝手に過ぎないと、わかってもいますが。
しかし、それでもなお、ちょっと残念だったなぁ、と思った次第です。


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平日上京、弾丸観戦ツアー(笑)ということもあり、あまりアンダーカードのことまで
子細には知らず会場に足を運んだのですが、あれこれとまあ、見どころ満載の興行でありました。

セミは平岡アンディと吉開右京の再戦。前回は3ラウンドまでに一度ずつ、
計3回のダウンを奪った平岡が、防御の差とコンパクトなカウンターの威力を見せてKO勝ち。
今回は吉開が何をどう変えてくるのか、と思ったら、サウスポースタンスで立ち上がるという
意外なスタート。

しかし、平岡の小さい振りの左が吉開を捉える。吉開も右フックの返しなど、
前回よりはヒットを取るものの、やはり平岡の巧さが光る。
3回、吉開が強引に出てボディを攻める。しかしロープを背にした平岡が、
ガードの空いたところに右フックのカウンター。完璧に決まって吉開、ダウン。
レフェリーがノーカウントで試合を止める、痛烈なKOでした。

平岡はこのクラスの若手、下位ランカーとしては図抜けた巧さを持っています。
上位陣相手に、迎え撃ちだけでなく、その他の展開になったらどうか、というのは未知数ですし、
線の細さも感じはしますが、いずれ上位進出を期待したい素材ですね。

吉開は若手同士の強敵に二度敗れましたが、その果敢な挑戦、闘いぶりには拍手です。
強打者としての天分を感じますし、出来ればもう一度、再起を期待したいものですが。


セミセミもまた、強烈な試合でした。
ダニエル・ローマン戦からの再起を目指した松本亮でしたが、
5戦で日本8位の座にある、フェザー級ランカー佐川遼に3回KO負けを喫しました。

初回から、松本は上体を立てて、あまり動かず、正面から攻める。
佐川は右を数発クリーンヒット。打たれると松本、ムキになって出て、左ボディから右を上に。

2回、佐川の右がカウンターになって「まとも」に松本の顔面を打ち抜く。
佐川の攻撃が見事、と思うべきなんですが、同時に「あれ食って倒れへんのか」と
打たれた松本の方にも感心してしまうほどの、完璧な一撃。
当然佐川が追撃、右が再三松本を捉える。

松本は強烈に打たれ、そのたびに動いて外そうというのでなく、正面から攻め返し、
左ボディで止めて右を強打しようとする。しかし相手をジャブで崩すでなく、
良いの当てて好スタートを切った選手を、序盤からいきなり「仕留め」の攻め方で
捉えられる道理もない。タイやインドネシアの噛ませさんならともかく...。

3回、佐川の右クロスがまたしても「まとも」に入り、松本ついにダウン。追撃でストップ。
セコンド陣、早よタオル入れろ、と思ったタイミングでした。

松本亮は、やはり以前から心配だったとおり、動きが乏しいスタイルの限界、という印象。
しかもクラスを上げ、実力者のランカー相手に、まるで自分が上の階級から降りてきたような
試合運びをして敗れました。
何もこの一戦で、彼のキャリアを全否定もしませんが、酷いスロースターターである部分も含め、
抜本的な改善が必要だと感じました。

勝った佐川遼は、たぶん初めて見ましたが、当てられるパンチは全て当てた、
その確かさに感心しました。なかなかの好選手で、大きな勝利を手にしました。
リングサイドでは三迫会長、上機嫌で満面の笑顔を振りまき、
ワタナベジムの会長さんにも祝福され、しばし談笑。
こういう勢いのまま、タイトルマッチが決まったりするんやろうか...とか思ったりも(^^)



好カードと目されたわりに、チケット価格の設定が高いせいもあってか
(自由席6千円はなかなか厳しい)、場内は大盛況とはいかず、空席もありましたが、
前座では、あの勇壮な闘いぶりも忘れ難い、畠山昌人のジムの選手が、
4戦目にして初勝利とか、大橋ジムのホープ、保田克也と桑原拓が切れのあるところを
それぞれ見せて快勝とか、改めて全体的に見どころ、見応えのある興行でした。



コメント (6)
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