さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
その他つれづれなる(そんなたいそうなもんかえ)
拳闘見聞の日々。

自分の「型」で押し切った、と見えたが 村田諒太「世界」初挑戦は判定負け

2017-05-21 06:18:27 | 関東ボクシング



ということで昨夜は有明コロシアムにて観戦してきました。
村田諒太、アッサン・エンダムに判定負け、初黒星でした。



確か、8回くらいだったと思います。

「万が一ですが、これを、エンダムのアウトボックスと見る採点がありえますかね」と
同道した友人に尋ねました。
いやー、それはないでしょう、という答えに、そらそうだろうな、と思い直しました。

私の採点は8対4か、行っても7対5まで。ドローさえない、というものでした。

そういうことで、判定が割れたと知ったときにまず驚きました。
負けと聞いて二度驚き。嘘でしょう、と。

誰より、当のエンダムが、完全に負けを認めていたように見えました。
つい先刻まで、沈み切った表情を場内の大型モニタに大映しにされていた
アフリカルーツのフランス人は、跪いて歓喜。涙していたようにも。
対する村田諒太は、言葉もない、という様子でした。


感想はご覧になった皆様とほぼ同じだと思います。

手数は出ず、右一辺倒の闘いぶりで、左フックは試合を通じて上には一発だけしか返らず、
ボディへも数発あったかどうか、という感じ。

つまりはいつもの一方通行、一方回転のみという、村田諒太の右強打を軸にした「型」、
「世界」初挑戦の試合で、さらに極端に無駄をそぎ落とした(悪く言えばさらに偏った)闘いぶりは、
全ての局面において、とは言えずとも、12ラウンズ中7つ以上を支配するには十分に、
アッサン・エンダムを攻略していた、と見ました。


エンダム、確かに軽打はよく出ていたものの、大半は村田の腕の上で跳ねていたし、
ダウン以外にも、4度ほどロープに飛ばされては跳ね返ってくるエンダムに
「ジェフ・チャンドラーかお前は」と突っ込んだりもしていたくらいでした。

実際、直に見て、ミドル級の世界上位、と見るには、現状ではかなり不足を感じたというのが
正直な印象でした。
思った以上にパンチに威力がない。それは会場で直に聞くパンチの音でも明らかでした。
村田諒太のそれとは、重みがまったく違いました。


とはいえ、安易に続けてもらえば、無事では済まないレベルではあったかもしれません。
村田諒太は過去の試合で、相手にパンチ力がないと感じたときに、攻防ともに雑になり、
悪い試合をする傾向がありましたが、今回は、防御に関してはかなり慎重で、集中していました。

ただし、今にして思えば、それ故に、攻撃に関しては、あまりに攻め手が乏しく、
右、右、また右、という具合で、ダウン奪取以外は、好打の手応えを得ていたとはいえ、
「その先」の展開を切り拓く「それ以外」の手が、散発的なボディ攻撃以外に見られなかった。
そこは非常に不満ではありました。

実際、勝っている、と見ていたせいでもあるのですが、試合展開がいっこうに変わらない
終盤戦などは、正直に言って、退屈に感じながら試合を見ていたくらいです。

「このエンダムに、この闘いぶりで勝っても、世界上位の力を証明した、と評していいのかな」と
勝利の価値自体についての疑問を抱いていたりさえしました。
まさか、負けになるとは露知らず。


率直に言って、この試合内容で負けにされたことについて、
村田諒太には同情しますし、気の毒にも思います。

しかしそれとはまた別に、村田が世界ミドル級の上位ランカーに肩を並べる実力を証明したか否かは、
正直言って、迷うところです。
仮に結果が勝ちになり、WBA王者となっていたとしても、それは同じだったでしょう。

村田諒太はタイプ的にも、プロアマ通じてのキャリアについても、
一試合で大きく闘いぶりが変わる、という選手ではないし、そういう時期にもありません。

それは承知の上で、パンチングパワー、強度の高いガード防御、という長所以外の部分が、
あまりにも極端に切り捨てられていて、長所を生かす「布石」の部分に不足があります。ありすぎます。

パワーでまさり、ヒットを取ってダメージを与えても、
そこから、さらに優勢な試合を展開し、決定付ける能力、好打の際の追撃パターンが見えない。
それ以上のことをすれば、リスクも増すかもしれないが、そこまで止まりで自重する、
せざるを得ないのだとしたら、残念ながら、そこに村田の限界があるのかもしれません。

そして、そうした村田諒太の現状に、今回のような「間違い」が起こる余地があったのかもしれない、とも。



有明コロシアムには過去、何度も足を運びましたが、客入りはおそらく過去最高だったと見えました。
会場へ向かう道すがら、報知新聞の作成した特報?が配布されていて、
村田は普通のボクサーとは、ある部分では段違いの扱いを受けていることがよくわかりました。

そういう状況、多大な注目の中、十分に勝っていた、と見えた試合に、結果として敗れた。
試合後、今まであまり経験したことのない、重い気持ちで、会場から出ました。

力が、技が通じず、ミドル級世界上位の強豪に跳ね付けられ、叩きのめされて敗れた、
というような試合だったら、ある意味ではまだ、良かったのかもしれない。

ファンの身勝手、その極みとわかった上で、そんなことを思ったりもしました。


少なくとも、金メダルの栄光にすがることなく、プロの世界に飛び込んだ村田諒太の
「世界挑戦」としては、いろんな意味で、「残念」なものに思えてならない。
昨日の試合は、そんな試合でありました。







コメント (16)
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