さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
その他つれづれなる(そんなたいそうなもんかえ)
拳闘見聞の日々。

「分母」が違えば、これで充分だが 村田諒太、4連続KOで古都に凱旋

2014-05-23 18:41:58 | 関西ボクシング



この試合、決まったと聞いたときはどうしようかちょっと迷ったんですが、結局、会場で見てきました。

五輪の金メダリストが、プロ入りしてキャリアを積む段階の試合を、学生時代を過ごした街で闘う
(厳密に言うと、南京都高校は奈良からの方が近く、彼が高校時代に京都市内で多くの時間を過ごしたわけではないでしょうが)、
何だか欧米のボクサーが時々やるような話が、身近に実現したものだ、という感慨がありましたので。

試合については、メキシコの中堅、と呼ぶにはもう少し手強い、というか粘りがあってやりにくい相手でしたが、
勝ち方としてはあのくらいで充分、と見ました。

最初は村田諒太が見て立った感じで、ヘスス・アンヘル・ネリオはそれに乗じて、手を出してきましたが、
初回途中から村田が右ストレートを上下に飛ばすと、その威力にネリオが押される展開。
とたんにクリンチが増え、アタマを押しつけてくるようになり、村田にしたらやりにくいはずですが、
要所でボディを打ち、右ストレートで脅かし、としっかり対応。
ラビットパンチやローブローも出ましたが、相手の体勢との兼ね合いもあり、仕方ないかな、と思う方が多かった印象。
何せパワーの差は歴然で、5回終了時で棄権でも問題なさそうでしたが、結局は次で終わりました。


右の強打を上下に散らし、たまにアッパーも狙い、というのは前の試合でも出ていましたが、
今回は左のボディフックがそこに加わりました。右で相手を打ったあと、返しのパンチが少なく、
攻撃のベクトルが一方向に偏り過ぎ、という印象は、少しではありますが、薄まりました。
あと、まだスムースでなく、リズムもスローですが、左ジャブは何発か、鋭さ、威力を感じるものがありました。
あれはどんどん磨いていってほしい武器ですね。タイミングひとつで、相当な効果が望めそうでした。

不足といえば、初回、そして2回と、わずかですがガードを固めて受けに回る時間が長かったかなと。
あれのせいで、相手の余計な粘りを誘発したかな、という印象でした。
あと、左フックの返しがボディには当たるが、上にはヒットがなかったことでしょうか。
相手をロープ際に追っても、これが少ないから相手を右に逃がしてしまう場面が多いです。
これも含め、まだ全体的に見て、こなれていない部分も散見されました。

しかし、いかに金メダリストとはいえ、練習と実戦の繰り返しの中で、色々と整理していかなければならないのは当然で、
確かにデビュー戦からここまで4試合、少しずつですが、色々揃って来ている、と見えます。
けっして器用なタイプではないが、身体が強く安定していて、防御の意識も高い。
村田諒太は、やはり日本の重量級として、貴重なタレントであるということを見せています。

ただ、この試合の評価も、結局は将来の世界挑戦をどのくらいの試合数で設定するか、という基準によって
いろいろ見方が変わってくる面があると思います。

フジテレビの放送を見ると、VTRに「4/10」という数字が出ていました。
世界戦を10戦目くらいに設定して「世界戦略」の4戦目、と位置づけたわけですね。
私はというと、村田が貴重な人材であることは認めた上で、ちょっとこの「分母」の数字は少ないな、と感じます。

例えば、今を去ること約30年ばかり前、韓国重量級の天才ボクサーと言われた白仁鉄あたりと比べると、
明らかにセンスで劣り、柔軟性に欠ける面があります。
柔軟かつリズミカルな動きと、目で外す防御、そして強打を併せ持ち、デビュー以来26連続KO勝ちで
世界ランキングを駆け上がった白は、27戦目で世界ランカーに初黒星を喫しますが、
その白を破ったショーン・マニオンは、かの「カリブの鬼才」マイク・マッカラムに敗れ、世界王座には就けませんでした。

もし村田に、白のような天賦の才と強打が備わっていたとしても、それでも世界の中量級の壁は高く険しいことでしょう。
五輪金メダルの栄冠とその価値、力量を土台にして考えても、10戦で世界というのは、やはり厳しいかな、と思います。


もっとも、陣営やTV局が、とりあえず現時点でやっているに過ぎない「喧伝」を元に、
あれこれ言っても仕方ないかもしれません。
結局のところ、次々に試合は組まれることでしょうし、その内容と結果によってしか、
単に「次」というに過ぎない試合でなく、さらなる「上」に上がる試合を勝ち取ることは出来ない。
それが村田諒太に限らず、全てのボクサーに平等に与えられた宿命です。


今回は、普通に見れば充分、しかし短期に世界を云々するならば不足あり、という試合と見えました。
その内容と結果の中に、村田諒太の洋々たる未来「だけ」を見られたとは思いません。
貴重な逸材ならではの光と、矛盾するようですがそれ故にある、この先にある試練の険しさが、
同時に見えてきたかな、という印象でした。

それはつまり、いよいよ五輪金メダリストという偉大なる「過去」を抜きにした、
世界の頂点を目指すプロとしての村田諒太の闘いが、本格化していくことへの恐怖であり、
同時に、震えるような思いで期待を抱く時が、またひとつ確実に近づいてきた、ということです。

次は国内かマカオかシンガポールか、或いは...決定を待ちたいと思います。


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昨日は前座もあれこれ賑やかだったので、前座のみ速報してみました。

大森将平は見事なノックアウトを飾りましたが「かつて山中慎介とダウン応酬をした、現世界9位を沈めた殊勲」という
華々しい話とは、少々違う内容だった、と言わざるを得ないのも、残念ながら事実です。
クリスチャン・エスキベルは時折右のショートをリターンするくらいで、スローで力感を感じない動きとパンチは
かつての彼とは別人に見えました。あれなら少々拙くても、本気で元気な比国上位クラスの方が強いでしょう。

とはいえ、大森将平が大きな可能性を秘めた大器、逸材であることに変わりはありません。
長身で大柄なサウスポー、右リード、距離の測定はまだ甘いが、ロングとショートの使い分けがあり、
左ストレートから返しの右フックには「引っかけ」以上の切れと力があり、アッパーカットにも強打を秘める。
これらの武器を見せて、世界戦経験のある相手を怖れず闘い、綺麗に倒したこと自体は、
高卒プロ入り後12戦目の若手選手としては、大きな前進と言えるでしょう。

これで世界ランクに入り、日本ランクも上昇することでしょう。
来年のカーニバルで、王者の益田健太郎攻略なるか、がひとつの注目でしょうね。
そこまであと二試合くらい出来れば、その中で若さ故のさらなる成長があることに期待ですね。

ちょっと辛口なことも書きましたが、大森将平には、関西が生んだバンタム級王者の系譜に名を連ねる
大きな可能性を感じます。楽しみに見ていきたい選手です。
出来れば大場浩平がリングを去るであろう今後、フジ系列の関西テレビで追いかけてもらえたらなぁ...とか、
ファンの勝手に過ぎないですが、そういう願望もあったりします。どないなものでしょうか。無理でしょうかね。

あ、うちはKBS京都も映るんで、そちらでもいいかもですね(^^)
以前の生中継試合は厳しい結果に終わりましたが、あのあと連勝中の徳永幸大ともども、もう一度何とか...。

コメント (2)
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