さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
その他つれづれなる(そんなたいそうなもんかえ)
拳闘見聞の日々。

全部良い、全部強い まるで小型ゴロフキン 井上尚弥、完勝でOPBF奪取

2013-12-07 10:03:17 | 井上尚弥

ヘルソン・マンシオは、こんなに一方的に負ける選手ではない、と思っていました。
しかし立ち上がり、マンシオがほんの僅かに右のグローブの位置を間違えた
その隙間に井上尚弥の左拳が小さく突き刺さり、試合はそれ以降、
井上のクッキングタイムと化しました。

あの打たれ方を「防御ミス」と呼ぶのも気の毒な、と思うくらい、
本当に小さな、数少ない隙だったと見えましたが、井上はそれを逃しません。
もしあそこで有効打を決めていなくても、いずれ、すぐに他の突破口を見つけ...
というか、見つけたと同時に、もうそこに鋭い軌道の拳が打ち込まれていたのでしょう。

2回、井上の左ボディが決まった、と見えた時にはもう右クロスが飛んでいて、
マンシオは厳しい追撃にさらされ、たまらず、という風情で倒れる。
宮崎亮の、狂気ともいえる「先手」狙いの右カウンター、一撃で
IMPホールのリングに沈むまで、宮崎を攻め立て苦しめていた姿を見知る目には、
この「やられ方」は、信じられないものでした。

マンシオは脅威の粘り強さで闘い続けるものの、3回以降も文字通りの「滅多打ち」に遭い、
4回さらに粘りを見せたものの、5回にワンサイドの展開の中、レフェリーに救われる、
という形でのTKO負け。
この粘り強い選手を、一発の大技で仕留めた宮崎亮のそれとはまた違った凄みのある、
厳しく正確な攻撃の積み重ねによる完勝。井上尚弥は改めて、その実力を示しました。


とにかく見ていて感心し、驚嘆するばかりの5ラウンズでした。
判断が速く、手が速く、追撃が速い。攻防共に鋭く、無駄が無く、間違いがない。
そして終始攻撃的、間断なく続く強打が、時に先制打、時にカウンターとなり、
リングの上に鋭い軌道を描く拳が、殺意を持ってマンシオを襲い続けました。

凄いボクシングやなぁ、でもこんな選手、最近よく見てるような気がするなー...と、
試合中、ずっと頭の中で思いを巡らせて、思い当たった名前が、ゲンナジー・ゴロフキン、でした。


もちろんクラスも違えば、試合のカテゴリーも違います。
しかし今回、見ているこちらの想像の、常に一歩先を行く鋭い攻撃には、
こういう名前を想起させるだけの凄みがあったと思います。

次戦で世界というような話も、ひょっとしたら具体化するのかも知れません。
もちろん頑固に、こういう話を手放しで受け入れたくはないんですが、
デビュー戦から振り返ってみて、この5試合目までの内容と結果は、
少なくとも過去、早期の世界挑戦をしたどの選手のものよりも、
世界への近さを感じさせるものであり、全体的なバランスの良さで言えば
数多の先達を上回っていると感じます。


以前書いたとおり、この逸材を単に怪物扱いするのではなく、
この選手を日本ボクシングの新時代のスタンダードとしての選手育成をしてほしい、と
ずっと思ってきましたが、今回の試合には、そういう私の賢しらな見解を
大きく揺るがす衝撃がありました。やっぱ、この人、怪物ちゃうの、と(^^;)

しかし、ひとつだけ変わらぬ思いもあります。やはりこの選手は、目先の小さな
「アルファベット・タイトル」の保持者を目指すレベルにはない、ということです。
彼が将来、攻略を目指す対象は、あくまでローマン・ゴンサレスやファン・エストラーダであり、
二番手以降の王者たちは、仮に挑むことがあっても「通過点」として見るべきだと。
それが井上尚弥の今後を見るときの物差しであるべき、なのだと。


初めて直に見る「ナマ井上」は、本当に衝撃的なくらい強かったです。凄かったです。
どこがどう良いの?と問われれば、まず一言で「全部」と答えるしかない。そういう選手でした。


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ただ、まあ私の細かい突っ込みとしては、あの入場曲は正直、いかがなもんかな、と
それだけはちょっと気にかかりました。いざ会場でアレを聴きながら
井上の入場を待っている間だけは、正直、いたたまれない気分になりました(^^;)
誰の趣味というか選択なんですかねぇ、まさか本人なのか。そんな歳でもないと思うんですが...。

ボクサーの入場曲談義については、また日を改めてじっくりとやってみようかなと
思ったりもしているんですが...でもこれをあまりマジにやると、
それこそ泥沼の闘い?が待っているような気がして、ちょっと怖かったりもしますけど...。

コメント (7)
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王座の価値を高める難敵撃退 八重樫東、強豪ソーサを退けた!

2013-12-07 00:58:23 | 関東ボクシング

ということで、今日は(もう昨日ですか)両国国技館で観戦してきました。

見どころ満載の興行で、どのカードも充実した試合ばかり、
満足度の極めて高い観戦となりました。
ゴールデンタイムで、延長放送枠もたっぷり取ったディレイ中継は、
かつてフジテレビがK1で行っていた形ですが、
大人気だった頃のK1には及ばずとも、少しでも多くの視聴者に、
いろんな選手の試合を見てもらえる良い機会になってほしいと願います。

さらにいうなら、何も浪速のゴチャ親子だけがボクシングではない、
あれはもはや、スイカ食う前に塩を舐める程度の意味すらないのです、
という真っ当な理解が、少しでも広まってほしい、とも。



それはさておき、今日はメインイベントの感想。
八重樫東、1位のシルバー王者、エドガル・ソーサを大差で破っての防衛でした。

最終回3分間の打ち合いを見てもはっきりしていましたが、
まともに打ち合えば、八重樫はソーサには勝てなかったでしょう。
しかし、だからといって単に逃げ腰では、いずれ捉まって打たれる。

全てを重々承知していたのでしょう、八重樫は終始足を止めずに動き、
しかし危険な距離になったと見たら、先手のヒットを取り、
それがかなわず打たれた時は、即座に厳しくリターンパンチを返して相殺し、
さらに追い打ちをし、着実に序盤からポイントのリードを積み重ねていきました。

このパターンを、レベルの高い集中力でもって最後まで実現した八重樫に対し、
ソーサも焦ってフォームを大きく崩しはしませんでしたが、
自分のパンチが一番効く距離を丁寧に外し続ける八重樫を捉えられず。
最終回の打ち合いでやっと実力の片鱗を見せたものの、
大半のラウンドでリードを許し、明白な敗戦となりました。
公式採点は3-0、私も117-111で八重樫と見ました。


長らくポンサクレック・ウォンジョンカムの王朝が続き、
それを攻略した内藤大助が、やや内向きの挑戦者選定を続けてしまい、
最後に亀田興毅に不覚を取った後、ポンサクレック奪還、
そして伏兵ソニーボーイ・ハロ、五十嵐、八重樫という変遷をたどった
WBCフライ級王座でしたが、八重樫が今回、強豪ソーサを下したことで、
この王座は若干下降気味だったと言わざるを得ない価値を、
ポンサクレック在位時のレベルまで再び持ち直した、と思います。
八重樫はこの王座にふさわしい王者であることを、自身の手で証明しました。

今回の試合は一見、地味な攻防に映ったかもしれませんが、
少しでも水漏れがあればそこを即座に突いてくる強敵ソーサ相手に、
心技体全てにおいて充実した八重樫が、ほぼ間違いのない対応を重ねていく様を
終始見ることが出来ました。非常に見応えのある12ラウンズだったと思います。


そういうことで、見どころ十分の興行を締め括るにふさわしい、見事な王座防衛でした。
八重樫東の今後には、色々賑やかな名前が並ぶかも知れませんが、
誰が来てもこの王者を攻略するのは容易ではないでしょう。
少なくとも、彼が手にする王座の価値は、揺らぐことのない、千金のものです。
そう思える、信じるに足る王者が、新たに生まれました。
八重樫東の勝利に、心から、盛大な拍手を送りたいです。


コメント (9)
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