統括団体が複数あっても、王者は基本的にひとりに収斂され、又は統一戦が常識で、
ジュニアやスーパー階級が存在しなかった頃からボクシングを見る人たちにさえ、
「このふたつの階級だけは、認めざるを得ない。それほど世界的に選手層が厚い」と
例外的に認められるクラスがあります。
それがスーパーフェザー級と、スーパーライト級です。
大晦日の太田区では、内山高志と三浦隆司、ふたりの王者が防衛戦を行います。
軽量級ならともかく、スーパーフェザー級で、四大王座のうち半数を日本のボクサーが占め、
それぞれに好カードと言いうる防衛戦が同じ興行で開催される。
なんと贅沢な話か、と思います。出来れば会場で見たいくらいです。
大晦日の興行観戦は大変なこともありましょうが、それでも観戦される方々が羨ましいです。
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さて内山の試合からですが、挑戦者の金子大樹との、新旧本格派対決です。
我ながら古い形容ですが(笑)とにかく楽しみなカードですね。
質実剛健、盤石の王者、内山に対し、これまた正統派、勢いと切れ味の挑戦者、金子の激突です。
かつて日本王者時代の三浦が内山に挑んだ試合のとき、
130ポンドクラスにおいて、世界と日本の王者の対戦が、
これだけグレードの高いものになるとは、なんと有り難い試合を見たのか、と思ったものです。
そして今回、それと同じような試合を見られそうだ、という期待があります。
挑戦者の金子大樹は、玉越強平戦でのバッティングによる試合の「打開」が玉に瑕ですが、
それ以外の試合では、恵まれた体躯に相当な鍛錬を重ねたと見える強靱な肉体を利した
スピード、切れ味抜群の攻撃で、全階級通じて最強の日本王者と呼ぶに相応しい試合を重ねてきました。
一度、8回戦で引き分けた試合をホールで直に見たことがあって、
良い体格で、筋の良いボクシングを身につけているのに、詰めが甘くて隙があって、
もったいない選手だなぁと思った記憶があるんですが、この頃を最後に、
そういう不足を見せなくなって、急浮上してきたという印象です。
この本格派のホープに、あの内山高志が相対したとき、どういう展開になるのか、
あれこれ想像するだけで楽しいですね。
内山の盤石が金子を撥ね付けるのか。金子の鋭利な拳が、内山の牙城を打ち崩すのか。
ファンの勝手な妄想ですが、これまで誰に対してもほとんど揺るがなかった内山が、
金子の鋭い攻撃に対して、序盤から激戦の中に身を投じるような展開があったら、
それはさぞや壮絶なスペクタクルとなるのではないか、と思ったりもします。
かなり大げさな言い方をすれば、日本版ハグラー対ハーンズのような試合が見られるかも、と。
結果がどちらに幸いしようと、もしそんなイメージの試合が見られたら、
勝者敗者の区切りなく、両者を称えられるような、そんな試合になるでしょう。
内山が勝てば、王たる者の真髄を見られるでしょうし、
金子が勝てば、新たなる王に相応しい者が勝ち得た、新たなる栄光の輝きに、
我々は目を奪われることでしょう。
あまり過剰に、勝手な期待をするのはどうか、といつもならば思うところですが、
この二人の激突には、勝敗とはまた別の期待をかけても大丈夫だろう、と思わせるものがあります。
とにかく楽しみな一戦ですね(^^)
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三浦隆司は、おそらく米大陸における知名度、評価という面で、
内山高志と同等か、ことによるとそれ以上のものがあるかもしれません。
それほど、セルヒオ・トンプソン戦は印象的な試合でした。
先日WOWOW総集編で、確かこの試合、6位にランクされていましたが、
個人的には1位でも良いとさえ思いました。
普段のレギュラー放送では好試合連続なのに、生中継では意外にそうでもないという
傾向があった今年一年でしたが、あの試合だけは例外、飛び抜けたスペクタクルでした。
とにかく、最近の日本のチャンピオンの中でも、これほど確かな破壊力がある
「決め手」のパンチを持つ選手は、ちょっと他に思いつかないくらいです。
あの左の威力は、本当にいったい何なんだ、と、こちらの理解を超える凄みがあります。
挑戦者のダンテ・ハルドンは、元々WBC1位の無敗選手だったのが、
玉越強平にKOされるアップセットの後、再浮上してきた選手です。
タフで、ラフで、パワーがある反面、ちょっと防御に難ありかな、と見えますね。
体格が大きいので、長身、リーチを生かして、左リードを強めに打って、
三浦を突き放す構えで来られたらどうかなぁ、と思ったりはしますが、
過去の試合ぶり(玉越戦含む)を見る限り、そういう丁寧な闘い方を
フルラウンド維持出来るようには見えなかったりもしますね。
もちろん初の世界挑戦、意気込みは相当なものもあるでしょうが...。
あとは逆の展開で、突っ込んできて頭突き絡みでややこしいことになったら、とか
まあそういうことでもなければ、順当に三浦が勝つと思います。
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この二人の王者、及び金子が闘い終えたあと、リングの上にはどのような光景が見えるのでしょうか。
内山と三浦が勝ち残り、その先の統一戦への待望がさらに高まるのか。
或いは新王者が誕生して、違う展望が語られるのか。
また、WBO王者マイキー・ガルシアへの「挑戦」も、個人的には語られてもらいたいと思います。
しかし、この、選手層が常に一定以上の「充実」を維持し続けるクラスにおいて、
日本のボクサーたちがタイトルの半数を持ち、そこに新たに挑む新鋭が絡む試合を含め、
ふたつの防衛戦を同時に見られる。重ねて言いますが、実に贅沢な興行ですね。
会場観戦こそかないませんが、結果を知らずに見ることは、充分出来ると思います。
ボクシングファンとして、とても幸福な大晦日だと言って良いでしょう。
今はただ、選手諸氏の健闘を祈っています。