井岡一翔の試合ですが、内容と結果は見事なものだったと思います。
「堅実」というものを極めれば、これほどまでの「強さ」に到達する。
ベストの108ポンドに戻して三戦目、なかなかの充実ぶりでした。
防衛ゼロとはいえ元WBA王者、実際の試合ぶりも、世界ランクの数字は
ふたつみっつ過大かな、という感じではありましたが、一定の水準にはある
クワンタイ・シスモーゼンを初回立ち上がりから打ち込める距離で抑え込み、
丁寧な攻防でヒットを重ね、最後は左ボディで止まったところを即座に上。
左ダブルでの強烈なフィニッシュで、ライトフライ級三連勝を飾りました。
ただ、試合後のインタビューに関しては、正直、真意を測りかねました。
どこまで本気なのかね、というに尽きます。
ライトフライ級復帰後、WBAランキングに入っている相手に三連勝ですから、
普通なら、さあ満を持して王者ローマン・ゴンサレスに挑戦だ!と言って
盛り上がるというのが本来の話なんですけど、やはりというか、
自分を「王者」だとして、モノ言っちゃってますからね。
結局、宮崎亮のミニマム級転向と同じく、こちらもボクシングの実像よりも
ごまかしの商売が勝っちゃってるんで、どうも白けた感じになってしまいます。
実際、試合自体を見れば、あの最強王者ロマゴンを打倒しうる日本人ボクサーがいるとしたら
それは井岡一翔だけだ!というファンの期待を一身に集める「最強挑戦者」としての
晴れがましい世界挑戦が、この先にあって然るべきだとさえ思います。
しかし、陣営が、TV局が、先に「世界タイトルマッチ」として商売してしまっているから、
そういうきれいな話になりようがない。
また、選手自身もインタビューで変なこと言うて、あれこれ突っ込まれてしまう。
もし、次の試合でロマゴンへの「挑戦」が実現するならまだしも、
けっしてそういう話にはならないのでしょうし。
もったいないな、不毛やな、という感情が、普通に見れば好試合だったものに
拭いがたい影を落とす。こういうことがいつまで続くんでしょう。
と思っていたら、今日の報道だと、年末にもフライ級挑戦とかいう話があるみたいですね。
やっぱり...。
まあ、さすがに今回は、既存の王者を棚上げするまでには至らないことでしょうが、
とりあえず誰かに勝っても、私の頭ん中じゃ「二階級制覇」ですね。
井岡一翔にこんなマイナスの感情を持ってしまうのは、本当に残念なことなのですが。