さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
その他つれづれなる(そんなたいそうなもんかえ)
拳闘見聞の日々。

勝つための「希釈」に変わりなし 大凡戦の末、空しい「快挙」達成

2013-09-04 13:33:23 | その他

試合前からあれこれ揉め事があったそうですが、まあJBCなんてそんなもの、という話でしょう。
本当はそれで済ましていいわけもないのですが、もうこうなると、アホらしいというのが先に立ち、
あれこれ書くのも面倒くさいんで、とりあえず今回は端折ります。
あまり期待もできませんが、各メディアの続報を待ちましょう。


そういうことで昨日の試合、名城の試合をネットで見たあと、ぼんやりと見ていました。
簡単に感想ですが、まず、あの対戦相手はいったい何なんでしょうね。

一応、元IBF王者らしいですが、どの団体、階級にも、レベルの低い王者が続く時期というのは
否応なくあるもので、この選手、多分IBFの115ポンド級のレベルがどん底に落ちていた時期の王者なのでしょう。
WOWOWエキサイトマッチでは、スタッフや本田会長などの関係者が放送カードの選別をするらしいですが、
この選手やその前後の王者の試合が一切流れなかった理由がよくわかりました。

この選手、とにかく、どこから見ても理に適っていない。
打つ前から上体が前に折れていて、身体の回転で打てないし、それを補う腕っぷしがない。
膝から下を、上下に跳ねさせてリズムを取るが、前後左右どちらの動きにも繋がらない。
左構えにスイッチしたまま、のそのそ前に出るが、力がそこそこ入っているのは右のみ。左は全部恰好だけ。
そしてその力感のないパンチを同じ距離でスカスカ空振りし、軽いリターンをもらう、の繰り返し。

いったいこいつ、何しに来たんや、と普通なら不思議に思うところですけど、
つまりは亀田兄弟の対戦相手によくいる、緊張感に欠け、意図の見えない選手というか「手合い」でしたね。
馬力もなければ巧さもない。試合前の表情からして異様な気の抜け具合で、いかにも、という感じでした。


で、そういう相手に亀田大毅が何をしたかというと、パンチの交換を回避するため、ひたすら距離をとる。
そして数少ないパンチの交換で先手を取ると、クリンチか、また離れ、の繰り返し。

マービン・ハグラーと闘っているレナードに「打ち合え」なんて、口が裂けても言えませんが、
いっちゃなんですがこんな、心技体ともに腑抜けた状態ありありの相手に、何もそこまで、という。
もはやこうなると、相手がどう、勝ちたいからどう、という次元の話ではなくて、
そこまで「ボクシング」が怖いなら、無理して人前に出て来なさんな、と言いたくなるほどでした。

結局、彼は内藤大助との試合あたりでは、「ボクシング」から離れるために、
揉み合い、組打ち、反則打を繰り返したわけですが、現在はそれが逃げ足とクリンチに変わっている。
メディアが安易に語る「成長」の正体は、つまりそういうことなんでしょう。
「ボクシング」の密度を薄めるために使う、希釈剤の種類が変わっただけで、本質は何も変わっていない。

それでも10回には右のヒットから攻めて、唯一のボクシングらしい攻防がありましたが、
相手が少し打ち返して来たら、また元通り。
判定云々はよくわかりませんが(あほらしくて採点する気になれませんでした)、
その昔、ホールのリングサイドクラブのおじさんたちが時に口にしたという
「どっちも負けー」なる言葉がぴったりな、中身の薄い試合でした。


それにしてもこの三兄弟、揃ってタイトルを手にする過程において、
それぞれに多少雰囲気の違いはあれど、共通するのは、ボクシングの技量力量で勝とう、
というのではなく、出来るだけボクシングの攻防の密度が低い展開を作って勝とう、という姿勢ですね。
次男の試合ぶりは、上下二人よりもまし、という評価も一部にあるようですが、
昨日の試合を見る限り、それはいったいどういう理屈から出てくる話なのか、と不思議でした。
本質的にはびた一文変わらないように見えましたね。


それにしても、スポーツ新聞などのメディアが、上っ面だけをなぞって
三兄弟同時王者、と報じても、ネットに配信された記事についたコメントの厳しいこと(笑)
目論見通りに三人とも勝ったけど、ぼんやり見ている人や、見ていないけど「話題」として知る人以外、
試合をきちんと見た人たちのほとんど全てが、その価値を認めていない「快挙」とは、何とも空しいものです。
いろいろやりにくいご時世で、ご愁傷様ですな、というしかないですね。



コメント (7)
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