さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
その他つれづれなる(そんなたいそうなもんかえ)
拳闘見聞の日々。

みたび成長を見た 小國以載、完勝

2012-07-14 23:13:26 | 小國以載
ただいま播州赤穂からの帰途、これを書いております。
注目の小國以載vs芹江匡晋戦は、小國の見事な勝利となりました。

はるばる訪れた播州赤穂のハーモニーホール、長袖着てくりゃ良かったな、というくらい
冷房が良く効いた会場でしたが、メインは序盤から火が付きました。燃えました(^^)


日本王座を返上して、敵地赤穂に乗り込んできた芹江匡晋は、ゴングが鳴ると同時に飛び込んで左。
左を下げて右は高く掲げる独特の構えで、小國以載を威圧しにかかります。
初回は芹江の右クロスがクリーンヒット。小國は手数少なく、様子見でした。

今思うに、この初回を自分のペースで終えたことが、芹江の隙を生んだのでしょうか。
2回、ボディを攻める芹江に対し、小國の右がクリーンヒット、芹江がロープ際に倒れます。
ガスカ、大橋に続き、またもタイトルマッチで王者クラスから奪った見事なノックダウン。
場内の小國、芹江両者の応援団が、突然訪れた衝撃のシーンに騒然となるなか、
立ち上がった芹江ですが、見るからにダメージ甚大。小國の追撃はやや正確さに欠けるも、ストップ寸前。

ところが芹江、ここで驚異的な粘り。攻めてくる小國に対し逃げずに踏み込み、右をヒット。
小國が一瞬止まり、また場内騒然、芹江の右がまた決まり、逆転のダウンか!とさらに騒然。
しかし小國、ここで左のアッパーをボディに突き刺し、ピンチ脱出。ゴングが鳴り、この回終了。

ポイントを小國の10-8にするか、10-9にするかはともかくとして、
両者の状態はイーブン、試合がどちらに傾くかはわからないと見えましたが、
ここで小國が踏ん張りました。


3回は芹江がやや押しましたが、4回から目に見えて、小國の左ジャブ上下が頻繁に決まり、
フットワークも冴えるようになります(途中採点は39-36、39-37、40-36)。
芹江は身体ごと飛び込んでラフなパンチを狙いますが大半をガードされ、外され、
5回は小國をロープに押し込んで攻め込んだものの、打ち終わりに左フックを合わされ、
試合の趨勢をほぼ決める二度目のダウンを喫します。

中盤は小國の左アッパーが芹江のボディを完全に捉え、8回終了時点での途中採点は
79-72×2、78-72の3-0で小國大差のリード。


ここから小國の課題である終盤に突入。9回やや小國疲れたか?と見える。
10回芹江が押し込んで揉み合いに持ち込むも、小國押し負けずに左ボディを連発。
芹江は逆に打ち負け、押し負け、離れたあと小國の構えに威圧されたように後退するような場面も。
私はここで完全に「逆転は無い」と確信しました。

ラスト二つは場内の大歓声に乗って両者打ち合い。しかし芹江は単発のヒットを取っても
小國のジャブ、左ボディ、ショートアッパーを浴びて失点を重ね、試合終了。
終わってみれば、小國の完勝でした。

判定は117-110、118-110、118-109の3-0。
ついでに私の採点は117-109でした。


思えば昨年、ロリ・ガスカに勝つまでの小國以載は、日本ランクにすら入っていない若手でした。
言う人に言わせれば、ガスカ攻略の金星すら「日本ランクに入っていない選手が勝てた試合、でしょう」
という厳しい見解があったほどです。
それがガスカに続いて、中部の激闘王大橋弘政を下し、そのすぐ次に、芹江匡晋を破ったわけです。
確かに昨年のガスカ戦観戦記に、小國以載は思った以上の器かも知れないと書きはしましたが、
いくらなんでもここまでは想像していませんでした。またも嬉しい驚きを小國以載から貰いました。

2回に芹江を倒した右の切れ味。逆襲を受けたあとの反発力。
芹江の強引な攻めに対するリターンの厳しさ。左ジャブ、左アッパーによるボディ攻撃の精度。
5回、ロープを背負って芹江に「やらせて」おいて決めた左フックの鮮やかさ。
課題だった終盤の失速、それによる失点を最小限に抑えた、心身のタフネス。
終始堅牢だったガード、ブロッキング。要所で巧みに芹江を空転させたフットワーク。

全てにおいて、小國以載は確実な成長を見せてくれました。
ほどよく重心が降りていて、打てば強く、足を使えば無駄のないそのバランスひとつ取っても、
試合を見るたびに安定感が出てきています。みたび、その成長に目を見張らされました。

もう彼の王者としての存在価値に疑問を持たれることはなくなるでしょう。
そして、ひとつ階段を上った若き王者には、さらなる期待と、それにまつわる試練が待っています。
小國以載の今後に、大いに注目ですね(^^)



敗れた王者、芹江匡晋にとっては、厳しい敗戦となりました。
相手を変則的な構えと、身体ごと叩き付ける強打で威圧し、制圧する彼のスタイルは、
この日、小國以載に真っ向から打ち崩され、破壊されました。その末の敗北でした。


私は過去に何度かこの選手について、否定的見解を述べてきました。
ガードを上下に開けて構え、相手を誘い、同時に威嚇し、身体ごと飛ぶように打ちかかる。
ラビットパンチも厭わぬ、オープンブローの多い攻撃。
ミスをしたら相手に絡みつき、対処に困ったら頭を下げて横を向き、ブレイクを待つ。
相手の身体を振り回したり、上からのしかかって体力を消耗させる。
こうしたルール逸脱行為を重ねる選手と、それを許容するレフェリングへの嫌悪は、
私が抱く日本のボクシング界に対する、数ある苛立ちの中でも、もっとも大きなもののひとつです。

しかし、2回に喫したダウンのあとに見せた、驚異的な反撃、それを支えた闘志には、
彼が積み重ねた日々の鍛錬、戦士としての矜持が感じられました。
他の選手なら、2回にたやすくフィニッシュされていても、何の不思議もなかったはずです。
結果として、小國は芹江の粘り強さのおかげで、序盤ストップ勝ちで終わっていたら獲得出来なかったかもしれない
価値ある試練をフルラウンドに渡って闘い、乗り越えることができた。

この一戦を経て、小國がさらに飛躍するとしたら、それは芹江匡晋が彼の闘いを
最後までまっとうしたから、ということに尽きます。
彼は小國に完敗を喫したが、けっして楽勝は許さなかった。
その一点において、私は芹江匡晋の闘いを、立派だったと称えたいと思います。

すでに芹江が日本王座を返上しているという話は、事実としてそうなのでしょうが、
それはおいといて、また「王者同士」の素晴らしい闘いを見てきました。


播州赤穂は果てなく遠く、でも帰り道はあっという間だったような気がします。
良い試合に当たると、そういうもんなんですよ、ええ(^^)



コメント (4)
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