初回終わった時点で、これ、あまり良い立ち上がりではないなぁ、と思っていました。
確かにリナレスの方が速いから、しばらくの間ポイントは取れるだろうけど、
何も、最初から、自分の持つ一番の速さを相手に見せてしまう必要は無いだろうに、
この選手及び陣営には、ファイトプランというものが無いのか、というのが正直な感想でした。
序盤、元気よく速いジャブを出し、頭の位置を変えてデマルコの左を外せているうちは良かったです。
しかし両者の位置関係は、デマルコが半歩、いや、半足踏み込めば左が当たる距離にあったのも事実で、
リナレスが少しでも失速し、防御が甘くなれば、デマルコの左がリナレスを捉えるだろうと見ていました。
実際、デマルコの左が当たり始めてから、試合はデマルコのものになりました。
出血したハンデを背負いながらジャブで懸命にポイントを取ったリナレスに感心はしたものの、
いかにも苦しい展開は変わらず、11回の破局はいわば必然でした。
この回打たれたあとの反応を見ていると、正常な判断力を失っているのは明らかでしたし、
上辺のポイントは置いて、内容的にも完敗だったと思います。
色んな意味で見た目が良いのでこう言うと意外に思われるかも知れませんが、
正直、細かいことを言い出すとキリがないくらい、今回のリナレスは粗だらけに見えました。
プロデビュー時から数えれば4階級上げたクラスでの世界戦、相手はベテランではなく同世代の強豪。
なのに若手時代と同じ発想で「品評会」の延長戦を闘っているつもりでいるのか、と。
確かに出血、その原因の裁定、体格のハンデなどを言えば、この敗戦を責めるべきではないかもしれません。
しかし同時に、闘い方の選択肢がなさ過ぎる、互いの戦力を削ぎ合う闘いを簡単に考えすぎている、
という印象もまた、強く残った試合でした。
メインはまあ、天罰覿面というか何というか。
まともにやりあえばドーソンには敵わないと初回早々に悟ったか、頭突きや揉み合いに専念していたホプキンスに、
気の毒と言えば気の毒な事態と裁定ではありましたが、あまり同情する気もありません。
こういう、いざ困ったら「ボクシング」そのものを蹴たぐってしまう類の選手には、
たまにこういう「お天道様は見てはるで」的な事態があった方がええのかね、くらいに思っております、ハイ。